文芸表現学科

おもしろい冊子を作成した学生にインタビューしました!

こんにちは、文芸表現学科です!

 

小説や脚本、ノンフィクション、エッセイ、詩など、創作表現を学ぶというイメージが強い本学科ですが、書いた先の発信方法にも目を向ける、「編集」について学ぶ授業も多くあります。

 

そのうちの一つに、2年生以上が受講できる「メディア演習III」では、inDesignというデザインソフトを用いて、ブックデザインや、基礎的な書籍・冊子のページ編集を学びます。

 

昨年度後期にこの授業を履修した、4年生・中村快さん(当時3年生)と、3年生・大西倫矢さん(当時2年生)は、たった2人で企画・取材・執筆・編集のすべてを行い、共作として一冊の冊子を作成しました。

 

 

それがこの『あぜ道散歩図鑑』です。

あぜ道というニッチなテーマと、目を引くフォント、そして絶妙に心くすぐる言葉選び……。どうしてもつっこまずにはいられない!ということで、おふたりに冊子制作についてのお話を伺いました。

 


 

▲写真右から中村快さん、大西倫矢さん。

 

──冊子テーマについてさまざまな意見があったかと思いますが、「あぜ道」にした決め手はなんですか?

大西倫矢(以下、大西):母方の実家近くに田んぼがあり、小さい頃はあぜ道が遊び場でした。ここ数年はなかなか行けていなくて、久しぶりに歩いてみたいなと思いました。

中村快(以下、中村):もともとあぜ道が好きでした。私にとってあぜ道は、小さい頃から馴染み深く日常のものなのですが、大抵の方にとっては非日常のもので、特別なものでないはずのあぜ道にギャップが生まれることがおもしろいと思っていました。

互いに自分の興味のある物をとりあえず挙げまくるという方法でアイデア出しを行いましたが、共通で一番興味をもったものがあぜ道だったので、今回はあぜ道がテーマとなりました。

 

 

──実際にあぜ道を歩いてみてどうでしたか?

大西:もともと僕が知っていたのは田舎のあぜ道だけだったんですけど、今回は街の中にあるあぜ道を歩いてみました。車の音や電車の音、人の声とかが聞こえてきて、それが(実際に歩くまでは)邪魔になるかなと思ったんですけど、歩いてみると意外と賑やかなところも楽しくて、ひとりではないけど静かな時間が過ごせる、寂しくないけれど落ち着けるといった印象があって楽しかったです。

中村:小さい頃に友達と走り回っていたところを久しぶりに歩いてみて、「懐かしいな。ここ、こういうふうに変わったんや」とか、背丈が変わったので見える景色のあり方が違うなとか。あと、花が咲いていたときに嬉しかったりとか、そういった楽しさがありました。

 

 

──人に発信するとなった際に、注意するポイントは変わりましたか?

大西:普段書いているものが取材記事やノンフィクションで、とにかく客観的に書こうと意識しているんですけど、あぜ道を歩く体験ってとても主観的で、それを伝えるときの書き方もとにかく主観的にって、慣れなかったんですけど意識していました。

中村:遊び場として走っていた小学生の時は、そういう場所(遊び場)としか見てなかったんですけど、取材対象として見る時には、結構じっくり見るようになって、解像度が上がった感覚がありました。

 

 

──冊子完成までの行程を教えてください。

大西:まず最初の数週間はInDesignの基本操作を教わりました。実際に販売されている雑誌や書籍を参考に、実践形式で誌面デザインを学びます。

その後、アイデア出しの期間に入ると、中村先輩とお互いにアイデアを持ち寄り整理していきました。「〇〇したい」というテーマから始まり、それを「〇〇すべき」「〇〇しなければならない」という形に持っていくことで、その冊子を作る「意味」(読者からの需要)がより強いものを探っていきます。広いテーマから徐々に絞っていくことで、中身をより鋭利なものに、読者に刺さるものにしていきました。

その後は台割りの作成です。大まかなページ数と流れをイメージし、中村先輩と担当ページを分けて同時に進行していきました。
授業終了後も時間をとっていただき、細かいアドバイスをもらいながら、誌面デザイン、文章構成を調整していきました。表紙や一部のデザインにはIllustratorも使いましたが、適宜教えていただいたのでつまずくことはなかったです。使用する紙の種類や手続き、印刷の段階まで丁寧に教えていただきました。

 

 

──レイアウトなども初めてだったかと思いますが、どういったところが難しかったですか? 平野先生(授業担当教員)からもらったポイントなどはありますか?

大西:InDesignを使うのがそもそも初めてだったので、むちゃくちゃ大変だったんですけど、そこは丁寧に教えてもらいました。先生から言われたのは、画面で見るのと紙面で見るのが結構違うということです。色のバランスも画面上だと綺麗に見えるんですけど、紙面だとくすんで見えるとか、文字のサイズが小さくても意外と読めたりするとか、今までは内容だけを考えていたんですけど、今回はビジュアルも読む人がどうやって読むのか意識しないといけなかったので大変でした。

中村:この冊子は楽しんで読むためのものなので、入りやすいように、できる限り、許される範囲で文字は大きめだとか、空白はたくさん取れるようにとか、そんなことを考えてつくっていました。

 

 

──『図鑑』にするにあたって、工夫したポイントはありますか?

中村:エッセイや資料集ではなく『図鑑』なので、私は「手に取ってくださった方が視覚的に楽しめること」を意識しました。例えば、対談のページだからといって文字ばかりでは目がおもしろくないので、大原の風景写真を1枚置くなどの工夫をしています。

大西一番意識したのは画像の見やすさです。画像と解説を一緒に載せることは決めていましたが、読者が読みやすい文字の大きさと見やすい画像のサイズを両立できるよう細かい調整を繰り返しました。画像に番号を割り振ったり、細かい補足の短文を入れたり、『図鑑』としての雰囲気作りも意識しました。

 

 

──実際に冊子を作ってみたということは、とてもいい経験になったかと思いますが、今後はどんな活動をしてみたいですか?

大西:これまで文章を打ち込むだけで、本を作るということは全然してこなかったんですけど、一回経験してみると結構できそうだなと自信がつきました。

──学生作品展※1も控えていますし、インデザインなどの経験が活かせるといいですね。

大西:そうですね。ゼミでも冊子を作ってるんですけど※2、そっちでも活かせるといいなと思います。

──中村くんはどうですか?

中村:もう4回生なので卒業制作を作るにあたって、実際に雑誌を作ってみたという経験が、冊子作り※3に向き合うときに役に立つんじゃないかなと思っています。

※1:本学の文化祭『大瓜生山祭』内で開催される、これまでの活動や制作物を紹介する展覧会のこと。今年度は9/16(土)17(日)に実施予定。

※2:出版・編集を学ぶ中村純ゼミでは、毎年「文芸×社会」をテーマに『アンデパンダン』という雑誌を刊行している。

※3:文芸表現学科では、卒業制作で執筆した小説・脚本・エッセイ・ノンフィクションなどの作品を文庫本にして、卒業展で展示・販売を行う。

 

 

──学科ブログを読んでくれている方に、伝えたいことなどはありますか?

中村:難しいことをやっているように見えると思うんですけど、先生や周りの人がしっかり助けてくれて丁寧に教えてくださるので、「気軽に挑戦できる」ということを知ってほしいです。

大西:書くことと作ることって似ているようで意外と違うんですけど、ただ、ハードルはそこまで高くなくて、自分が書いた文章をそのまま本にできるってすごく楽しいし、それをできる環境があるっていうことを伝えたいです。

 

▲記念撮影にも“いい距離感”で応じてくれました。

 

学年の異なるふたりですが、短時間お話を伺っただけでも、いい空気感・いい距離感で制作が行われたんだという様子が伝わってきました。

ふたりだったからこそ完成した『あぜ道散歩図鑑』。一番近くでふたりを支えてくださった授業担当教員・平野拓也先生にもコメントをいただきました。

 


 

昨年度は受講者数も例年より少なめだったので、じっくりと各生徒に向き合う時間が取れました。なので、課題設定もただ造る、インデザイン(主に本を作るためのデザインソフト)を活用した技術的な修練に留まらず、そもそも、本を創るとは、ということから始めています。なので、編集や造本、印刷、届け方、コンセプト等々、過程を一から学べるような授業構成にしました。そのため、本を創り始める際には、メンバーの中で何に関心があり、それをどのようなコンセプトや内容にすると届けることができるか、を考えて、制作もできるだけ手を出さずに造ってもらっています。

 

わたし自身、色々なデザインをしていますが、本を創ると言うのは、他のデザインに比べても大変なことが多いと思います。それにかけるだけの喜びや理由がありますし、やり切った学生諸氏にもそれを実感してもらったのではと思います。10年後にぜひこの初めて創ったと言う本を見返してもらいたいです。きっと、こそばゆいような、恥ずかしくなるような気持ちになるでしょう。その心緒の度合いがあなたの成長の幅を示してくれていると思います。

 

平野拓也/

アートディレクター・グラフィックデザイナー・企画ディレクター

 


 

あぜ道のほかにも、古本屋や推理小説の特集、ゴミを材料におもちゃを工作してみる、野生動物や虫を観察してみる、夏目漱石『夢十夜』の形式で『夢n夜』を執筆する、おもしろい漫画を編集者視点で考えてみる、京都のラーメン屋を特集して図鑑とマップを制作する、募金について考えてみる……などなど、気になる物事がたくさん挙がったそうです。

 

ふたりのアイデアの引き出しが閉まることなく、これからの制作活動につながっていくことを期待しています!

たのしいお話、ありがとうございました!

 

 

 

 

 

(スタッフ・牧野)

 


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