文芸表現学科

醤油の匂いとは

小豆島旅行記2
 
 
みなさんは「醤油の匂い」と言われると、どんな匂いを想像するでしょうか?
おせんべいの匂い?
焼き餅にかかった甘い匂い?
すし飯と混ざった食欲をそそる、あの匂いでしょうか?
 
研修旅行二日目の最初のお楽しみ、「ヤマロク醤油」。日本でも数えるほどしかない「木桶」を使った、昔からの作り方で醤油を作っている醸造所です。
 
「醤油」と聞くと、工場の中でたくさんの機械に囲まれてベルトコンベヤーの上を流れていく、そういう醤油のイメージしか湧かなかった私は、まず醸造所の小ささに驚きました。家にしては大きいけれど工場にしては小さい、でもちょっと大きめの田舎の家だと言われたら頷けてしまうような、それくらいこぢんまりとした醸造所でした。しかしその建物からは、つちかってきた歴史と気合いを感じさせられました。まるで建物自体が『これが本物の醤油だ!』と言っているようでした。
 

木の樽が並ぶ醸造所。まんなかにあるのがおそらく新樽だろう。

木の樽が並ぶ醸造所。まんなかにあるのがおそらく新樽だろう。


五代目の山本康夫さんにお話を聴く。

五代目の山本康夫さんにお話を聴く。


樽の表面には、たくさんの酵母が付いていた。

樽の表面には、たくさんの酵母が付いていた。


梯子をあがって、樽の様子を見学。

梯子をあがって、樽の様子を見学。


ぷつぷつと、発酵する音が聴こえる。

ぷつぷつと、発酵する音が聴こえる。


さて、ここで冒頭の「醤油の匂い」の話に戻ります。まず建物の中に入って私が感じたことは、『あのお醤油の匂いがしない!』ということです。建物の中に入れば、醤油の匂いが立ち込めているんだろうなと思っていた私には拍子抜けでした。むしろなんだか、焼きたてのパンの匂いがしたのです。どうしてそんな匂いがしたのかは分かりませんが、確かにパンの匂いがしたのです。
 
醸造所の中に入るとようやっとあの醤油の匂いのお出ましです。木桶から、醸造所の中の空気から、全てからあの醤油の匂いがします。ここでまた面白かったのは、醤油の匂いは同じなのに醤油の味は全然違うということです。私が普段口にしていた醤油と、匂いは同じなのに味は酸っぱくない、今までに味わったことのない柔らかい味がしました。
 
不思議な面白さがたくさん詰まったヤマロク醤油。お土産に買ってきた醤油からはパンの匂いはしないけれど、その醤油を見るたびに、私はあのパンの匂いのする不思議な空間を思い出しそうです。
 
<左>醤油プリン <右>入口にある樽。新元先生と比較するとその大きさが分かります。

<左>醤油プリン <右>入口にある樽。新元先生と比較するとその大きさが分かります。


記念撮影

記念撮影


 
文・牧野佐耶(文芸表現学科1年)
 
 

この文章は、1年生の「表現基礎I」の授業課題として書かれたものです。
5月中旬、新入生研修として訪れた小豆島の訪問先のなかから、1つの場所を選び、旅行記として伝えるというテーマで課題に取り組みました。

 
 

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