文化財保存修復・歴史遺産コース

授業紹介①-素材研究実習-

こんにちは。歴史遺産学科の副手です。

 

先生の専門分野のご紹介に引き続き、

今回は大林先生ご担当の授業についてご紹介いたします!

(インタビュー記事はこちらからご覧ください→前編 / 後編

 

 

 

大林先生の授業では、紙や東洋書画等の保存修復に関して、掛軸や古文書・屏風等の構造について

実習を通して学んでいきます。

また、修復を行うにあたって必要な素材研究についても学びを深めます。

 

 

3回生の素材研究の実習では、

「江戸時代の奉書紙の復元」と「色見本帳の修復」の2つのテーマに分かれ、

それぞれの素材や構造についてチームで調査を進めていきます。

今回はその様子についてご紹介いたします。

 

 

 

まず、「江戸時代の奉書紙の復元」では、現在の奉書紙と江戸時代の奉書紙はどう違うのか?という疑問について、

文献調査や紙の試作実験から復元を試みました。

 

 

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身分の高い人の代わりに部下が書く公文書のことを「奉書」といい、

その文書に使用される紙を「奉書紙」と呼びます。奉書紙は楮紙のひとつで米粉などを混ぜて漉き上げており、

白くて厚みがあり丈夫な紙であることが特徴として挙げられます。

 

 

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紙漉きの様子

 

 

「奉書紙」は現在でも作られていますが、江戸時代のものとは違っています。

そこで、原料を変えたり、漉く条件を変えたりしながら紙を漉き、試作を重ねます。

 

 

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江戸時代の「奉書紙」と自分たちが漉いた紙を肉眼や顕微鏡で観察し、表面の感触や繊維の見え方などから

当時使われた材料や漉き方などを推測していきます。

 

 

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最終的に調査対象とした古文書のレプリカを作成し、秋に行われた学生作品展では、成果を展示発表しました。

調査を進めていけばいくほど疑問点が増え、今後の課題も発見できたようでした。

 

 

 

2つめの「絵具見本帳の修復」では、市内の老舗絵具屋さんがお持ちの昭和10年代の絵具の見本帳の修復を行いました。

当時、製品として売られていた絵具が実際に塗られた見本帳で今では作られていない色もありとても貴重な資料です。

まずは構造を理解し、装丁の破損や台紙の変色、焼けなど状態の調査から劣化している箇所に

どのような処置を行うのかについて考えます。

 

 

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汚れたところをドライクリーニングし、劣化により一部くっついてしまった台紙の切除、

補強として染色した裏打ち紙を施し、見本帳の組み立て作業まで行います。

 

 

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裏打ち紙の染色では、オリジナルの台紙と裏打ちした紙の色合いに違和感が出ないように、

染料の配合比を変えたサンプルをいくつも作成し、色を合わせていきます。

 

 

 

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組み立てた色見本帳

 

 

 

 

 

このように、修復に向けての技術や素材研究について実習を通して学んでいきます。

修復を行うにあたって、そのものの構造や素材について知識を深めることはとても重要となります。

また、自分たちが疑問に感じたことを調べ、実際に手を動かして疑問を解消していくプロセスも

研究においてとても大切なことです。

 

 

 

学生たちはこのようなことを学び、個々の研究へと進めていきます。

疑問に思ったことについて実際に手を動かして確かめ、一歩ずつ学びを深めていきましょう!

 

 

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