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(大学院)工芸デザイン分野 岩瀬 正二

「Ocean trench」
H26 X W19 X D21  
白土・タタラ



陶造形「亀裂と皺と撓み」 —  土の表情が語る、自然と人間の対話 —


1.制作研究の概要
 陶造形「亀裂と皺と撓み」をテーマに、3人の名匠(秋山陽、伊藤公象、八代清水六兵衛)の独自のアプローチとその作品の象徴性に注目しつつ、土と対話して制作することで、自然の力と人間の創造力を、土の表情に表現する陶造形の表現手法を探求しました。
論文の主な構成としては、第1章で陶造形のモチーフとして、亀裂、皺、撓みの象徴性について概説し、第2章では、3人の名匠にみる亀裂、皺、撓みについて探求している。秋山陽は、土の持つ自然な質感を活かし、亀裂や皺を意図的に取り入れた作品を制作している。その作品は、土の持つ力強さと繊細さなどを同時に表現しており、自然と人間の関係を深く考察するきっかけとなりました。伊藤公象は、土の柔らかさや変形を活かし作品を制作しており、土の持つ有機的な質感を最大限に引き出している。八代清水六兵衛は、伝統的な技法を用いながらも七代目の父の影響も感じる現代的な感覚を取り入れた空間に調和したモダンな作品も制作しており、一つの作品においても焼成温度を変えたパーツを組みあわせることもある。その他、焼成前には撓みのない作品の一部分を窯で焼成することで重力の方向に撓ませるなど、土の持つ多様な表情を探求している。3人の名匠の作品と表現方法に触発され、これらの作家の技法や表現方法を考察するとともに、第3章では、「土の焼かないオブジェ」の提案をし、第4章では、焼成作品の他にも、「土の焼かないオブジェ」を、Less-is-moreで不必要な要素を極力排除し、最も必要な情報のみを生み出し制作することで、土の持つ自然な表情など、表現することを目指しました。また、焼かないことで現れる、時間とともに変化する土の表情も観察しました。
2.制作研究の背景・意図
背景:陶造形における「亀裂と皺と撓み」は、単なる技術的な欠陥ではなく、深い意味を持つ表現手法である。3人の名匠は、それぞれ独自の創意工夫に富んだ方法で土の特性を活かした作品を制作している。その作品は、自然と人間の対話を象徴するものであり、その表現方法に共感しました。特に、秋山陽からは、かたちからの造形表現から、現象からの造形表現の重要性を秋山陽と直接会話し探求することで得ることができたのである。
意図:土の亀裂、皺、撓みといった現象などをそのまま作品に取り込むことで、自然の力などを感じさせる作品を制作することを意図しました。また、焼かないことで、土の脆さや変化をそのまま残し、時間とともに変化する様子を観察できるようにしました。これにより、自然と人間の関係を再考する機会を提供し、土の持つ可能性を最大限に引き出すことを目指しました。
3.制作研究の位置づけ
 この研究は、現代陶芸における新しい表現方法の一つとして位置づけられる。伝統的な焼成技法にとらわれず、土の持つ自然な表現をそのまま活かすことで、これまでにない表現の世界を知ることになる。また、秋山陽、伊藤公象、八代清水六兵衛の作品を通じて、現代陶芸の多様な表現技法を学び、それを自身の作品に反映させることを目指しました。
主な自身の制作における「亀裂、皺、撓み」の表現としては、亀裂は、地殻変動や自然の力を象徴し、宇宙規模とも言える地球の自然の力強さと過去から未来へ続く未知なる世界へ移る瞬間や時間の経過を表現。皺については、自然の有機的な形態を象徴し、過去から未来へも続く時間の経過や、言葉では表現できない経験の積み重ねなども、偶発的に発生した一つ一つ異なる唯一無二の形状で視覚的に表現。撓みについては、柔軟性や適応力を象徴し、自然の重力の力が形態に与える影響を動的且つ視覚的に表現。形態が自然の流れや動きを反映し、自然の一部であると感じることでもある。現代陶芸においては、伝統技法にとらわれず、新しい表現方法を模索する動きも活発である。今回の行った焼成オブジェの他にも、「土の焼かないオブジェ」の制作は、その一環として位置づけられる。土の持つ自然な表情をそのまま活かすことで、自然と人間の関係性を再考する機会を提供し、現代陶芸の多様な、表現方法を探求することができる。

「時の痕跡」
H26 X W19 X D21 他 
白土・鉄赤釉/タタラ/酸化焼成

「Ocean trench」
 H11 X W37 X D20 他 
黒泥土・辰砂釉/タタラ/還元焼成

岩瀬 正二

(大学院)工芸デザイン分野

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