写真・映像コース

作品として外に出し、自分を客観的にみる 美術工芸学科の授業を紹介!【文芸表現 学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

文芸表現学科・2年生の出射優希です。学内では毎日のように展覧会が開かれ、大学がひとつの生き物に思えるような、つくる人々の呼吸を感じることができます。今回は、以前開催されていた陶芸展「KUA ceramic labo」を中心に、美術工芸学科の様子をレポートしていきます。

 

コース横断授業「表現研究」

 

10月にギャルリ・オーブで開催された陶芸展「KUA ceramic labo」。

この展覧会では、総合造形コースの福本双紅先生が指導するゼミ生の作品をはじめ、前期に開講された「表現研究」の受講生の作品など、美術工芸学科内で行われた実験的な陶芸作品が、数多く並びました。

 

そのなかの一つが、シルクスクリーンという技法で写真を壺に転写するというもの。

 

 

その授業を担当されていたのが、写真・映像コースの多和田有希先生です。多和田先生に、「表現研究」という授業の中でいったいどのようなことに取り組み、何を考えられたのかについて、お聞きしました。

 

どうせなら面白い方に

 

——何に写真を転写しようか悩んでいるときに、総合造形コースの福本先生が壺を作ろうかって言って、壺を作ってくれたんです。
写真って、何かを記録したり伝達したり、役に立つ前提で使われるものですよね。
私は自分の作品を作るときに、役に立つことにどこか反抗する気持ちがあって、精神的には糧になっても、目に見える形では役に立たないものを作っていました。
その点、日常生活で壺を使ったことがなかったので、「壺か〜……」と最初は思っていたんですけど、今思えばいいチョイスだったなと。

 

壺にすることを提案した福本先生は、「平面に転写するよりもカーブに転写する方が面白い」という理由で壺にしたのだとか。

学生が新しい知識や表現に触れるだけでなく、指導されている先生にとっても実験だったということがお話から伺えます。

 

 

わからないことを、わかろうとする姿

 

表現研究という授業は、各専門分野で深く考え活躍されてきたプロが、さらに変化を続けようとする姿勢を間近で見ることができます。

 

——指導していくなかで、自分がわかっていないことをわかろうとしている、一番新鮮で、エンジンになっている部分を、授業に取り入れていくことが重要だな、と思っています。
未知のものについて、学生の作品を媒介にしてディスカッションする。そこで自分も、ものを作っていくということをしてくんです。

 

すでに芸術の世界で活躍されている先生が、指導するなかでの出会いをさらに自分自身の糧にして、変化していこうとする姿を見ることは、学生にとって何よりも刺激的です。

 

不自由さを、自由に変えられるかもしれない

 

国内外の芸術教育を現場で見て考えてこられた多和田先生は、芸術を学ぶ場について、こう語ります。

 

——芸術大学は、自分の内面や、自分を取り巻く問題とも向き合う必要があります。
そういう意味では厳しいところですけど、でもその方法も、工程も、自分で決めることができる。
もしかすると人生を生きるのが楽になるかもしれない、自分だけの方法を、4年間使って見つけられる場所って、他の領域にはないかなと思うんですよね。

 

つらいことからは逃げてもいいと言われる時代に、それでも生きている限り、自分自身から逃げることはできません。

そのことを無理に美談にせず、逃げられなかったなかで少しずつ希望を見つけてきた、という自信を積み上げていくことが、重要なのかもしれません。

 

分析と実験の渦に飛び込む

 

——私は芸術を通して、自分が直面している問題や、苦手なもの嫌いなものを乗り越えるための方法に関心がありました。
研究を組み立てるように、ざっくりとした青写真を描いて、その方法を実際に試してみるということを繰り返してきたんです。
自分の中に閉じこもっていたら解決はしないので、悩んでいる状態のままでも作品化して外に出していきます。
それが聞いたことのない方法でも、馬鹿馬鹿しいものであったとしても、編み出して実行してみることって割と勇敢な行為なんですね。
壁にぶち当たって、その跳ね返りでここまでが自分だったんだ、と知りたかったのかもしれません。

 

まずは取り組んでみる、試してみるという精神は、表現研究という授業で、そして日々接する先生方の姿から感じることができます。

取り組むことに加えて、「絶えずアンテナを張って試作をしながらも、分析していく態度」を省かないことも重要なのだとお話してくださいました。

 

変化したかどうかという結果以上に、変化しようとしているエネルギーそのものが、作品や自分を動かしていくのかもしれません。

 

 

 

▶多和田 有希先生(美術家|写真・映像コース  専任講師)

https://www.kyoto-art.ac.jp/info/teacher/detail.php?memberId=19012

 

▶ギャルリ・オーブにて開催された陶芸展「KUA ceramic labo」のレポートはこちら

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取材記事の執筆者

文芸表現学科2年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

1年生のとき、友人たちと共に、詩を立体的に触れることができる制作物にして展示した展覧会「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」を開いた(バックス画材にて)。

自分のいる場所の外にいる人とつながるものづくりに、興味がある。また、「生きること」と直結したものとして「食べること」を捉え、それを言葉で表現している。

 

 

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