油画コース

手で考える、ものの力を借りる 美工教員展に寄せた、清水博文さんの「声」【文芸表現 学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

文芸表現学科・3年生の出射優希です。前回に引き続き、美工教員展『逸脱する声』についての特集、今回は清水博文さんです。版画工房でお話をお聞きしました。私は時折訪ねるあの部屋が大好きです。工房であり、部屋でもある。なんでか好きになってしまう、居心地の良さの秘密が今回わかったような気がします。

 

(なお、美工教員展にまつわる一連のレポートでは、一人ずつの教員のみなさんの「つくる人」としての姿をおもに捉えたいので、あえて「〇〇さん」と伝えさせてもらっています)

 


 

美術工芸学科専任教員展、ギャルリ・オーブにて開催

 

京都芸術大学・美術工芸学科の専任教員23名による、大規模な展覧会『逸脱する声』が、人間館1Fギャルリ・オーブにて開催されます。

 

会期は

【第1期】2022年6月9日(木)〜16日(金)

【第2期】2022年6月22日(水)〜28日(火)

となっています。

 

今回の展覧会には作家の語った言葉によって構成された、「言葉の森」が設けられています。

そこには入りきらなかったお話も含めた「作家」の「声」を、ブログにてご紹介していきます。

今回は、版画工房にて語られた、清水博文さんの「声」です。

 

(展覧会について、詳しくはこちらからご覧ください。)

※竹内万里子さん展覧会記事

https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=147939

 

 

 

版画には、材料も、道具も、技術も、おもしろいことがいっぱいあった

 

清水さんは、兵庫県の丹波篠山市で幼少期から高校生までを過ごし、大学時代を東京で過ごします。

自然あふれる故郷から、情報が忙しなく飛び交う土地での生活は、葛藤もあったそうです。

ですが大学で、清水さんは版表現に出会います。

 

  “今思い出すと、結構昔から、小学生の頃から版画に興味があったんだなというのはあるけど、でもその頃(大学在学時)は意識していなかった。東京藝大だったんだけど、あの頃ってね、ほったらかしで。先生は自分の絵を描いているだけで何も教えてくれない笑 静物デッサンの授業にしても、高校でも予備校でも、モチーフは先生が組んだりしていたから、最初はどうしたらいいかわからなくてね。いい意味で放任。
で、2年生の終わり頃に木口木版の集中講義があったの。それまでやってきた油画とかは、細かい技術的なことは知らなくても絵ができちゃうんだよね。ところが版画はそうじゃなくて、道具渡されても、これどう使うのってことが多くてさ。知らないことがいっぱいあった。だけど、まだ先生が教えてくれたから。”

 

 

  “3年生からは版画の工房で、学校にいる間に基本的な技法を覚えようと思ったんです。最初は1年基礎を学んだら油画に戻ろうと思ってたんだけど、知らないことが多すぎて。材料のこととか、道具のこととか、おもしろいこともいっぱいあったからね。”

 

はじめは技術を学ぶ気持ちで入った版画工房で、版画とは切っても切り離せない、「道具」の魅力に目覚めたことをお話ししてくださいました。

版画工房に置かれた棚や引き出しには、さまざまな道具や材料が、たくさん詰まっています。

全て、役割があり、それぞれに物語のある「もの」たち。

置かれている机や棚、道具のなかには、清水さんが作られたものも数多くあります。

 

↑清水さん作の道具

↑清水印の焼き印が……!

 

 

凹凸があれば版画はできる

 

清水さんのお話を聞いていると、「自分も版画をやってみたいな!」という気持ちになるような、ものをつくることの、一番はじめにある喜びに触れるのです。

 

  “版画は転写の技法だから、版画安定していれば複数枚刷れるし、多くは直接筆で描くのとは違う表情が得られる。それが魅力の一つだよね。そうすると、百均もホームセンターも、版の材料っていっぱいあるんです。凹凸があれば版画がつくれるから。
版画でもやってみようかなってやったら深みにはまった。キリがないことがいっぱいあって、そして面白みがだんだんわかってきた。”

 

  “ぼくは工作大好きなの。絵描くのも大好き。だから学生の机もぼくつくっちゃってるけど、版画はね、工作と、絵描くことと、全部混じってる。
高校のときは美術部と写真部入っててね。印画紙、暗室ワークが好きだった。版画の技法には写真的なこともあるから、それも繋がってるかな。”

 

  “版画のいいことは、自分のオリジナルの絵が、複数の人に持ってもらえるってこと。そして、自分の手元に必ず残るってこと。”

 

↑設営途中の様子

 

「手で考える、ものの力を借りる」を日々大切にされながら、今回の展覧会の作品も独自の技法(表面刷り圧ぼかし※過去OC記事)https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=129838 で制作されたそうです。

あらゆるものがデータ化され、デジタルな空間に置かれていくいま。

手元に作品が保存できる喜びや意味は、振り返る瞬間にこそわかるのかもしれません。

人の手に残る。それはものだけでなく、記憶や経験が一緒に積み重なっていくことでもあるように思います。

 

展覧会は、一般の方もご予約なしでご覧いただけることになりました。

学外の方や高校生の皆さんも、この機会にぜひ、足を運んでみてくださいね。

 

 

▼ 清水博文先生(洋画家)

https://www.kyoto-art.ac.jp/info/teacher/detail.php?memberId=96009

 

 

逸脱する声―京都芸術大学 美術工芸学科 専任教員展

会期 第1期 2022年6月9日(木)〜16日(木)、第2期 2022年6月22日(水)〜28日(火)
時間 10:00-18:00 会期中無休
場所 京都芸術大学 ギャルリ・オーブ
出展者 〈第1期〉池田光弘、神谷徹、川上幸子、河野愛、柴田純生、清水博文、髙橋耕平、仁尾敬二、東島毅、山田伸、〈第2期〉出口雄樹、岩泉慧、金澤一水、菅原健彦、多和田有希、椿昇、福本双紅、ミヤケマイ、森本玄、矢津吉隆(副産物産店)、ヤノベケンジ、山元桂子
入場料 入場無料(予約不要になりました)
主催 京都芸術大学 美術工芸学科
企画 竹内万里子(美術工芸学科 学科長)
協力 京都芸術大学 文芸表現学科木村俊介ゼミ、情報デザイン学科見増勇介特別ゼミ

 

展覧会詳細

https://www.kyoto-art.ac.jp/events/2297

関連イベント

美術工芸学科インスタグラム(https://www.instagram.com/kua_biko/)にて随時お知らせいたします。

 

※6月1日付の新型コロナウイルス感染防止対策の一部緩和により、本展覧会はご予約なしで展覧会をご覧いただけることになりました(これまで一般の方は要予約とご案内しておりましたが、政府方針の改定を受けて変更になりました)。引き続き学内でのマスク着用や入口での検温などの対策にご協力をお願いいたします。

 

 

取材記事の執筆者

文芸表現学科3年生

出射優希(いでい・ゆうき)

兵庫県立西宮北高校出身

 

1年生のとき、友人たちと共に、詩を立体的に触れることができる制作物にして展示した展覧会「ぼくのからだの中にはまだあのころの川が流れている」を開いた(バックス画材にて)。

自分のいる場所の外にいる人とつながるものづくりに、興味がある。また、「生きること」と直結したものとして「食べること」を捉え、それを言葉で表現している。

 

 

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