クロステックデザインコース

2022年8月「クロスの熊本県天草市プロジェクト通信」No.2(8月6日_2)

みなさんこんにちは。

大学時代の夏休みの思い出は、ガリガリ君を食べすぎて、夏バテしたこと。

それに懲りず今でも、「誰だ!お父さんが食べようと思っていたガリガリ君を食べたのは!?」と、

仕事帰りに楽しみに冷凍庫に入れていたガリガリ君を食べたのが、

小一の息子で「僕です……」と言うと本気で怒り、4歳の次女が「わたしです……」と言うと、「ガリガリ君ってそこにあるとつい食べちゃうよね」と娘に異常に甘いクロステックデザインコース教員の吉田です。

(以前ブログを書いていた頃は、↑こうやって書くと、在学生の保護者の方から本当にガリガリ君が送られてきたのですが、すっかりお父さんキャラになり、ピタッと途絶えました)

 

さて、前回の記事の続き。

 

いつもは、天草エアラインで、伊丹空港→熊本空港→天草空港と移動することがほとんど。

(今回8月9日から合流する4人の先生は、その経路で天草入りします)

しかし、学生たちが、飛行機で移動すると、日本地図の「距離感」みたいなものが体感で分かりづらく

普段もネットで、「半径50cmの身体感覚で、スマホの画面で点と点を追っている感覚」の彼らに、

フィジカルな体感の中で、「地方への移動」を感じたもらいたいと、

今回は「京都→熊本」を新幹線で3時間。

そこから、「熊本→天草」をバスで、3時間。

あえて合計6時間以上かけて、移動しています。

 

今から、100年前。

当時の大学生や社会人になりたてだった、北原白秋や与謝野鉄幹一行5名は、東京から電車に乗って九州へ。

そこから船に乗って天草を訪れ、3日間歩いて天草を旅をしました。

その3日間に出会った様々なこと(実に天草にとっての日常風景)に刺激を受け、生まれた「南蛮文学」と言うムーブメント。

 

その「五足の靴」を尊重して、現代の学生たちにはできる限り、ネットでなんでも検索できるこの時代に、

「旅」を自分の身体感覚(例えば、バスで3時間移動すると疲労がたまるななど)を通して、天草の人やモノの出会いからさまざまなアイディア(クリエイティブ)につなげてほしいと願い、今回の企画も組み立てをしています。

(冒頭のガリガリ君の話を聞いた後だと、ギャップがありすぎて、説得力に欠けている気がします。)

 

さて、今から100年前とは違い、「遠い」と言っても、

京都から3時間で熊本に到着。

熊本から天草に移動するバスの時間も少しあったので、

「せっかくなので、熊本市で2時間ちょっとあげるからしたいことをしておいで」と、学生の自主性に任せて行動させることに。

 

先生が全部お膳立てするプロジェクトに、学生がただついて来るだけだと、自分の頭で考えなくなってしまうので、

「限られた時間で、せっかく熊本まで来たからできる観察や体験を、自分で考えてやっておいで」と野に放つ。

 

すると、クロステックの1年生2人は、

「行きたい展覧会があったんです!」と嬉しそうに、

熊本市現代美術館へ。

 

『熊本市現代美術館開館20周年記念
不思議の森に棲む服 ひびのこづえ×KUMAMOTO 展』

を知って、「観に行きたいなぁ」と思っていたそうです。

 

1年生は、NHK Eテレの『日本語であそぼ』の印象が強いようですね。

 

今回は、クロステックデザインコースの1年生2名と、

情報デザイン学科ビジュアルコミュニケーションデザインコースの3年生と映画学科俳優コースの2年生、環境デザイン学科の2年生の合計5名の学生を連れてきているので、「自由に観てきて良いよ」というと、学科特性が出て興味深いものです。

 

環境デザイン学科の2年生は、

「どこに行ってきたの?」と尋ねると、

「庭園と建築を観てまわりました」と。

写真の「水前寺成趣園」や「熊本城」の史跡の庭園や建築に加えて、

・建築家 前川國男氏設計の「熊本県立美術館」

・建築家 ラペーニャ&トーレス設計の「熊本県立美術館の分館」

・建築家 黒川紀章氏設計の「熊本市立熊本博物館」

などを観てまわったようです。

 

同じ、「美術館に行ってきました!」でも、

限られた時間で、美術館の「中(展覧会)」を観る学生と、「内と外(建築と空間)」を観る学生がいます。

学んでいることの専門性の違いから生まれる「視点」の違い。

それを学生同士が面白がって、互いの視点をリスペクトして、そこからチームで何かを生み出してほしいと言うのが、今回の人選のポイントです。

(ガリガリ君と娘のことばかり考えているわけではないのです)

 

さて、そうやって学生たちに2時間与えている間に、教員の私はどこに行っていたかというと……

「人」を大切にする私は、

天草で出会って、仲良くなったフレンチのシェフ松田さんのFacebookを見て、

「8月3日から熊本市の鶴屋百貨店のイベントに出店しています」

とあったので、「お土産を持っていこう」とお土産を持って挨拶に行ってきました。

 

松田さんは私より10歳年下のシェフなのですが、

本当に人の話を面白がって聴き、そこからたくさん質問して刺激を受けて、何かに活かそうとする姿勢が素敵で、私もいつも刺激をもらっている大切な友人です。

そんな彼から何かを得てくれたらいいなぁと、

できる限り、天草のプロジェクトに連れて行った学生を松田さんのお店「Picasso」に連れて行き(店の名前にピカソを選ぶのも素敵ですよね)、

天草の地元食材を使った美味しい料理はもちろんのこと、松田さんと話をすることで、学生が何かを得てくれたらいいなと思っています。

(毎回、地方に学生を連れていくと、お財布から悲鳴が聞こえます……今回は、新型コロナが広がっているので、食事が別々なので嬉しいような、淋しいような)

 

一般的な学生は、大学の教室で、同じコースの同学年数十人と4年間を過ごすことがほとんどになります。

あとは、バイト先の人間関係かサークルぐらい。

 

そうすると、どうしても「視点」が偏ってくるんですね。

 

例えば芸術大学にいると、そのコースの領域のことに興味がある学生が集まっているので、価値観がある程度似通ってくることもあります。同じ価値観に近い人が集まっていると、その環境は非常に居心地が良いです。

でも、社会はそんなことはありません。基本的に、本来人は一人一人価値観が異なるもの(価値観が大きく違う人を避けているので、だんだんそれに気が付かなくなりますが)

 

実際に、大学の外に自分の表現を届けることはそんなに簡単なことではありません。ところが、大学の中だと、「コンテクスト(文脈、前後関係、事情、背景、状況など)」が共有されていることが多いので、周囲の人が簡単に理解してくれる気に4年間なってしまうんです。

これは、私の授業やゼミでも、何十回と同じことを伝えています。

 

「表現っていうのは、自分の中にある心理的、感情的、精神的などの内面的なもの(それは実に複雑なもの)を、外面的、感性的形象として客観化すること。だから、「簡単に伝わらない、わかってもらえない」というのが当然で、そこからスタートするもの」

と繰り返し伝えています。

 

ちなみに、

■8月8日(月)から公開される「ウラの手対策講座」。

でも、その辺りのことを結構強調して受験生に伝えています!

 

受験生の皆さんはぜひ!

ウラの手対策講座の申し込みはこちらから

 

話は戻って。

そういうことを大学の教室で言っても、なかなか伝わらないので、強制的に「視点」を変える機会が必要だなと感じています。

 

立命館アジア太平洋大学の学長・出口治明先生は、

「人間の学びには『人・本・旅』が大切」とおっしゃられています。

 

私も本当にそう思います。

本を読み、旅をして、人に出会う。

 

この天草のプロジェクトでも、一貫して、学生たちにそれに出会ってもらおうと組み立てをしています。

旅の最中に、「この本面白いよ」と私が読んでいる本を見せ、人を紹介して繋ぎ、そこから学生が「旅」を通して、自分で何かと出会って、見つけてほしいなと。

 

そんなことを真面目に考えながら、「Picasso」の松田さんにパンナコッタをもらって、別れを告げて、教員の私が向かった先は……

こちら↑

 

湯らっくす」

 

「サウナと天然温泉……これって、ただの観光なんじゃ(遊びなんじゃ?」とこれを読んだ学内関係者が漏らしそうですが。

 

そんなわけがないじゃないですか。

ここは、テレビドラマ「サ道」の最終回にも取り上げられた、「サウナ好きの聖地」。

学生が、美術館や建築を巡るのと同じ感覚です!

 

というのは、冗談で。

クロステックデザインコースの2年生の授業で、私が担当している「社会実装演習」という授業で、昨年から「京都鴨川音楽祭」と題して、実際に音楽を通して、誰かを幸せにする企画を考えて、実現するという授業をやっているんですね。

(詳しくは、入江さんが書いてくれている以前の記事を→ https://www.kyoto-art.ac.jp/production/?p=145755

 

そこで、「鴨川湯めぐり」という企画を昨年実施したのですが、

そこから私は銭湯の文化や業界の現状を調べたことがきっかけで、現在、「銭湯案件」の相談を受けています。

 

「アイディア=既存の情報の組み合わせ」

なので、企画のもとになるアイディアって、自分の引き出し以上のことは生まれないんですね。

だから、自分の体験を伴う「一次情報の情報収集」ってすごく大切で。

 

そうそう、ちなみに、

小山薫堂副学長が脚本を務める映画『湯道』が、先日情報解禁になりましたね。

(主演:生田斗真、出演:濱田岳、橋本環奈、監督:鈴木雅之 2023年2月23日公開)

https://www.crank-in.net/news/112010/1

 

その中で、小山薫堂副学長がこう言っています。

 

「日本人特有の入浴行為は、一つの文化としてきっと世界に発信できる…そう信じて2015年に湯道を立ち上げました。その拠点は、京都の名刹、大徳寺の真珠庵。「湯道は作法にあらず、湯に向かう姿勢なり」を信条として、大真面目に湯道の発展を考えてきました。風呂には不思議な力があります。人と人をつなぐ力。他者を慮る心を育む力。ひいてはそれが人の優しさになります。そんな湯道の価値を映画にして伝えたいと思いました。ミニシアター向けの泣ける小作にするつもり…が、気付けばこんな豪華キャストで大きな作品になってしまい、実はとても戸惑っています。
鈴木監督とタッグを組むのは、約20年前の深夜ドラマ以来です。一緒に全国の温泉や銭湯を巡り、湯会(=シナリオハンティング)を重ねました。そのあまりにも楽し過ぎた時間が、そのまま作品のゆかいな輪郭になっています。大切なことを難しく伝えるのではなく、優しさに包んで楽しく伝える…文化をエンターティメントで翻訳した作品に仕上がったのではないでしょうか。風呂で人を幸せにする、という想いが一人でも多くの人に伝わりますように。」

 

これを読んで、「あいつは、出張中に不謹慎だ!」って、軽率に言えなくなったでしょう。

 

というわけで、堂々と(笑)

本当に真面目に言うと、「聖地」と呼ばれるのは、そこに「他にない体験を含めた価値」があるからという「仮説」で、それを確かめたかったのです。

これは、ネットで誰かの記事を読んでも、核になる部分は理解できないので。

 

だから、変な話ですけど、

銭湯に行って見ているのは、空間の配置と、そこでの人の行動(ふるまい)と表情(感情の動き)です。

 

もちろん、それを「初めて行く一人の人間」としての行動、戸惑い、感情などの変化を自分の体験の中でも考えます。

 

先日、授業をした高校生に、「先生たちはいつもそんなことを考えて生きているんですか?」と言われたのですが、

癖になっているので、いつも何かを考えています。

だから、こうやってブログとして文章に書くこともできます。

(昨日、一緒に行っている学生に、「先生、移動中によくこんなに長い文章すらすら書けますね」と聞かれて、「普段考えていることを、言語化しているだけで、書けない人は、普段考えてないって自分で言っているものだけどね」とさらっと言って、学生を落ち込ませる「笑顔で人の心を折る鬼のような教員」がここにいます)

 

「癖」と言いましたが、その前提は、「好奇心」なんです。

「これって、なんで人気があるのかな?」「どうして、売れているんだろう?」と興味や関心しかありません。

(一番興味があるのは、3人の子どものことですが)

 

よく「体験授業型選抜ってどんな対策をしたら良いですか?」って聞かれるのですが、

「授業当日に課題を出すから、当日は自分の引き出しの中で課題と向き合うしかないんだよね。

だから、その引き出しを増やすには、普段の生活から意識を変えて行動するしかない。

具体的には、自分のコース(興味がある領域)の日常の中にある物事を、興味を持って観察し、そこで得た情報で考察し、自分なりに判断する癖をつけるしかないんだよね」

とアドバイスをすると、ちょっと「期待した答え」ではないので、がっかりされちゃう時があります。

 

受験生が期待している答えって、

「こういう課題が出るから、こう言う作品を作ると受かりやすいよ」っていうアドバイス。

 

そういう「基本スキル」も当然大事なので、それはそれが見られる選抜をやっています(他の選抜方式で)

でも、基本スキルって、気をつけないと「正解を教えてもらって、それをトレースする」という意識になりがちで、

上に書いてきたような、「自分で行動し、観察し、考察して、判断して、テストして、検証する」っていう大事な姿勢から遠ざかる可能性もあるんです。

 

「それを高校生に問うのか?」っていう意見も当然あるんでしょうけど、

「総合型選抜」って本来、「能力」と「適性や学習に対する意欲,目的意識等」を総合的に評価する選抜方式で、

「能力」っていうのは、

1.知識・技能
2.思考力・判断力・表現力等
3.主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度

なので、決してズレてはいないんだろうなぁと思うのですが、

「対策」というのが、すごく「わかりやすい具体的なもの」でないといけないので、簡単じゃないなぁとも思っています。

 

というわけで、

 

■8月8日(月)から公開される「ウラの手対策講座」。

でも、その辺りのことを結構強調して受験生に伝えています!

ウラの手対策講座の申し込みはこちらから

 

加えて、「大切なメッセージは、体験してもらったほうが早い!」ということで、

今年最後のオープンキャンパス2022年8月27日(土)、28日(日)の体験授業型オープンキャンパスをやっています。

体験授業型オープンキャンパスの詳細はこちらから

 

実に、「宣伝上手」な感じが出ていますが。

 

湯らっくすのサウナと天然温泉に浸かって、すっかりリラックスした私は、

その罪悪感を誤魔化すように、

学生が、「小山薫堂先生のやっている『まるきん』のたい焼きと、なんか『ちくわにポテトサラダが入った食べ物』を食べたいんですけど」と言っていたのをちゃんと聞いていて、

グループLINEで、「昼は、みんなで太平燕(タイピーエン)※熊本市民のソウルフード?を食べました!」という写真を見て、

「よし、これは食べていないな」と思い、売っている場所まで足を運んで、

ちゃんと、「まるきんのたい焼き」と「ちくわにポテトサラダが入ったやつ=ちくわサラダ ※熊本県民のソウルフード?」を学生のために購入し、

「吉田先生は、なんて優しいの!?ちゃんと私たちのちっちゃな希望を聞いてくれて」

という刷り込みをしようとするのでした。

 

そして、「バスの中で、これを食べながら、さあ天草まで移動しよう!車の中では、車窓から見える景色や街並みを観察して、考察し、地域の人がどのような生活をしているか、どんなことを考えているかを想像しながら向かおう!」とちゃんと教員らしいアドバイスを送り、いざ出発。

 

すると、「太平燕(タイピーエン)たい焼きとちくわサラダ」でお腹いっぱいになった学生は、

ご覧の通り、それを観ることなく、ぐっすりと眠り、天草に到着して、「あれ?もう着いたんですか?」と。

教育は簡単じゃない、と改めて思うプロジェクト初日でした。

 

ちなみに、朝の4時からブログを書くのにかかった時間は、3時間(現在7時すぎで、8時にはホテルを出て、これからワークショップ。朝食食べ損いました)

これをよく以前は8年も365日休まずやっていたなぁと。

 

これをずっと続けている「ムサビのあの人」は、すごいなぁと改めてリスペクトしています。

 

旅から帰ったら子どもが大事なので、すぐに「再引退」します!

(でも、どうにか8月14日までは頑張ります!)

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