キャラクターデザインコース

ゲームゼミ十期生と「ゲームゼミについて語るの巻」 Part1

ゼミ通

ゼミ通ヒーローズ Vol .20

 

昨年度の卒業制作から始まったゼミ通ヒーローズも今回で二十回目。

同時に一周年でもある今回は2019年度の卒業制作展を終えて、

ゲームゼミ十期生の皆さんと四年間を振り返り、

「結局遊びの研究とは何だったのか」を追求。

そんな彼らとの最後のゼミの様子をお届けします。

 

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卒業制作展授賞式の打ち上げに参加するゲームゼミの学生たち。

右から

杉山大地(以下杉山)(済美高等学校出身) 

矢部紘花(以下矢部)(京都府立亀岡高等学校出身)

山中楓(以下山中)(大谷高等学校出身) 

門瀬菫(以下門瀬)(奈良県立奈良北高等学校出身) 

五十嵐智哉(以下五十嵐)

村上(筆者)

中西由弥(以下中西)(相愛高等学校出身) 

K.ナッチャー(以下ナッチャー)

王吟賀(以下王)

尹昭媛(以下尹)

朴東鎮(以下朴)

 

村上 まずはみなさん卒業制作大変お疲れ様でした!

 

一同 お疲れ様でした!

 

村上 せっかく凄く面白いものがたくさんできたのに、

このまま「はいおしまい」というわけにもいかないので、

今日は過去を振り返りながら

実際に自分達は何を成し遂げたのかを話していきたいと思います。

制作の苦労話とかも。

 

中西 苦労話しかないですけど(笑)。

 

村上 じゃあ、まずは作品の紹介からいこうかな。

最初は、五十嵐から。

 

五十嵐 はい、今回私が作ったのは『ロプテトラント』という

3DアクションRPGです。

もう、エゴというエゴ、仕様という仕様を全て詰め込んで、

やってみたかった事を一通り盛り込んでみました。

 

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五十嵐智哉さんの作品「ロプテトラント」。

優秀賞、同窓会特別賞を受賞しました。

 

中西 私とミミちゃん(K.ナッチャー)とで作ったのは『ぺなまじ』といって、

カードを使ってコミュニケーションをぐちゃぐちゃにしようという

アナログゲームです。

私は企画やテストプレイ、印刷会社との仲介役を担当してました。

 

ナッチャー 中西さんとの合作で、

中西さんがゲームの中身を作り込んでくれたので、

私はデザインの作業をやっていました。

 

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中西由弥さん、ナッチャーさんの合作である「ぺなまじ」。

奨励賞を受賞しました。

 

 私は『桃夭』という、ゲームの媒介を通した文化の伝達を研究して、

唐の史実に基づいた乙女向け恋愛アドベンチャーゲームを制作しました。

 

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王吟賀さんの作品「桃夭」。

奨励賞、キャラクターデザイン学科特別賞を受賞しました。

 

杉山 GIGまもののむれ』は音楽遊びです。

私の14~15年に及ぶ追及の結果でありました。

そういうゲーム、いや、遊びを作りました。

 

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杉山大地さんの作品「GIGまもののむれ」。

 

山中 私たちが作った『contents!』というゲームは、

今までにない遊びを作ろうというところから始まって、

ゲームのデータだけではなくて色んなものを含めて

新しい遊びとして制作しました。

私はプログラムを担当したんですけど、

一部分は五十嵐君にも手伝ってもらいました。

 

門瀬 そして私がデザインをやらせていただきました。

企画は初期段階から山中と二人でやらせていただきました。

 

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山中楓さん、門瀬菫さんの合作「contents!」。

優秀賞、Happy Elements賞、三回生賞、村上先生賞を受賞しました。

 

矢部 私は『白昼夢』という2D探索アドベンチャーゲームを作りました。

基本自分で全部作ったんですが、プログラミングを五十嵐君に手伝ってもらい、

タイトルロゴは尹ちゃんに手伝ってもらい、

アニメーションは門瀬さんと山中さんに手伝ってもらいました。

 

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矢部紘花さんの作品「白昼夢」。

奨励賞を受賞しました。

 

 ウチは朴さんと二人で2Dアクションゲーム「Project Luminous Sword」を作りました。

剣を収集するごとに使えるスキルがどんどん増えていくゲームです。

役割としては、今日この場にはいないんですけど

朴さんが企画とプログラミングをやって、

ウチはデザイン全般を担当しました。

 

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朴ドンジンさんと尹ソウォンさんの合作「Project Luminous Sword」。

 

村上 皆、ほぼ一年をかけてゲームを作ったわけだけど、

ちょうど一年前の今頃、皆で立命館大学ゲームゼミの卒業制作展を

京都イオンまで見に行って、その後フードコートでクレープを食べながら

キックオフミーティングをしたんだったよね。

その段階ではほとんどの人が企画が固まってて、

割とスタートは好調だったと記憶してるんだけど。

 

中西 私の企画はそこから二転三転したので、

完全に決まったのは五月くらいでしたね。

それまではアナログ盤の

ドラクエみたいなゲームを作ろうと思ってたんですけど、

ルールがややこし過ぎて…。

ドット絵のキャラクターにしたのはその時の名残ですけど、

罰ゲームを全面に押し出した方が面白くなるんじゃないかという話にもなって、

それで企画が変わっていきましたね。

罰ゲームとして太木先生にニャンニャン言わせたいって思って、

そう思いついたあたりから一気に企画が固まりました。

卒業制作というからには何かデカいものを作らなきゃいけない気がして、

盛大に盛り上がるゲームを作ろうと考えてました。

 

ナッチャー 私は二年生まではイラストゼミだったんですけど、

自分でも企画をやってみたくて三年生からゲームゼミに入りました。

でも結局企画は没になったので中西とペアを組んでます。

 

杉山 私も、二年はプロデュースゼミにいて、

三年からゲームゼミに入りました。

 

村上 それ以外の面々は、ほとんどが一年生の時の担当学生が

そのままスライドしたから、皆の癖というかキャラが分かってたし、

こちらとしてはとてもやりやすかったな。

 

門瀬 当時はゲームゼミの倍率が低かったというか、

希望者が少なかったですもんね。

 

村上 倍率なんて概念がなかったし、

希望者は全員受け入れる時代だったから。

 

中西 イラストゼミに入れなくてゲームゼミに落ちてきた第二希望の面々もいましたよね。

 

 ウチ、イラストゼミが第一希望だった。

 

 私もイラストゼミが第一希望でした。

 

矢部 あ、私も…。

 

杉山 私は二年生の時ゲームゼミ第一希望だったんですけど、落ちました。

これ、どう思いますか?(苦笑)

 

一同 (爆笑)

 

村上 君は当時キャラが尖り過ぎてて、

グループワークに向いてないと感じたから落としたんだった。

で、別ゼミでLive2Dを習得したり単独での制作を経て「やれる」って

確信したから三年でゲームゼミに来てもらった。

プランナーを希望する人は何らかの技術がないと

学科展に向けて制作をするのは正直キツいからね。

特にデジタルゲームを希望する人の場合は。

 

杉山 ゼミの希望を提出するとき、確かに自分自身決め兼ねてたんですよね。

プロデュースゼミにするかゲームゼミにするか。

私自身も自分の尖り具合を自覚してましたし(笑)、

丹羽先生の授業を受けていて、モノを創る前に

もっとしっかりプロデュースの勉強をする必要があるなと思ったので、

一応ゲームゼミは第一希望だったんですけど

その理由が適当で、志望理由書もちょっと利己的な書き方をしていたというか。

でも最初にプロデュースを学んで、凄く良かったです。

 

村上 で、そのキックオフの日に各自持ち寄った企画を元にチーム編成を行なったね。

 

門瀬 私は三年生の途中段階から既に山中と矢部と三人でチームを組んで

アナログゲームを作ろうと思ってたんですよ。

でも役割分担が曖昧だったから、これは絶対にチームを解体されるなと思って、

企画を各自で出してそれぞれ協力し合いながら卒制をやろうって話になりました。

 

山中 アナログゲームを作るのに三人で組むのはさすがに許されないだろうと思って。

 

中西 私はミミちゃんと二人でアナログゲームを作りましたけど、

それでも最初は厳しかったですしね。

 

村上 まあ、余程の大作を創るとか

何らかの前例を作ってしまえば良いんだろうけど、

これはゲームゼミだけで完結する話じゃないし、

成績を付ける際の判断基準がゼミ担当以外の先生からすると難しくて、

突破口を開くのはなかなか大変かも知れないね。

 

門瀬 企画を提出する段階では、私と山中は水平思考の企画をやりたくて、

その考えが一致したのでチームを組みました。

デジタルゲームなんですけどアナログの媒体を使って

パズルがどんどん繋がっていくような、

当時はそんなイメージのものを考えてました。

 

村上 王吟賀は、最初から何もブレがなかったね。

 

 そうですね。

ゲームのジャンルもストーリー設定もほぼ固まってましたね。

 

村上 三年の時に既に実績があったから、

これは放っておいても大丈夫だろうと思って、すぐにGOを出した。

「どうせ凄いもの作るんでしょ」って。

 

矢部 私はちゃんと固まったのは五月くらいでした。

夢日記みたいなネタはあって、

ゲームっぽくない絵のゲームを作りたいっていうイメージだけがあって。

ソシャゲ風の艶々した感じの絵じゃなくて、

今回のゲームの絵は全部ボールペンで描いてるんですよ。

なんかあまり見た事がない雰囲気のものを作りたかったんです。

 

村上 シンプルではあるんだけど、

設定やキャラクタ―デザインやストーリー諸々独創的で

面白いものが出来上がって良かったよね。

で、五十嵐の作品は三年の時の成果物のクォリティが高かったから、

そのままの延長でいけるだろうと思って安心してたよ。

 

五十嵐 ところが実は延長というわけではなかったんですよ。

見た目が似てるから仕様の拡張をしただけだと思われがちなんですけど、

実はプログラムもデザインも一新してるので前作の流用部分はないんですよ。

なかなかそこは気付いてもらいにくい部分なんですけど。

 

村上 PS4クォリティの3DアクションRPGを学生が単独で制作した

っていうのが、今回ゲストで来られた方も含めて業界の人が驚いてたね。

 

五十嵐 逆に、あれを複数人で制作するのは無理だったと思います。

チームを組んで制作したところで、

僕がイメージしてるものや要求するスキルが高いところにあったので、

それを共有できる人がいなかったんですね。

技術を教えるよりも一人で一から勉強して作った方が

早いんじゃないかと思って。

だからこそ完成したんだと思いますね。

 

村上 単独の方が仕様の追加や変更があっても小回りが利くしね。

 

五十嵐 仕様の数だけコミュニケーションコストが莫大になっていくんですよ。

プログラムの中身も自分が全部把握してますから、

仕様の変更があった場合でもめちゃくちゃ強いですし。

 

山中 何年も一緒に組んでる人とかいるんだったらいいけどね。

 

村上 朴と尹のチームも早い段階から企画が固まってたよね。

一年前のキックオフミーティングの時点では

企画書どころか実際に動作するサンプルゲームが出来上がってたし。

剣を投げて瞬間移動する『FINAL FANTASY XV』みたいな仕様も

既に実装されてたんだよね。

朴はプログラミングの授業は受けてたけど

今回の作品の技術についてはほとんど独学だよね。

でも動きは良いけどビジュアルが全然できてなかったから、

半ば強引に尹とチームを組ませたんだった。

 

杉山 C#は初めてって言ってましたね。

でもそれまでに韓国でゲーム制作のチームを組んで色々作ってたらしいです。

 

五十嵐 彼は勘が良いんだと思いますね。

 

村上 朴の作るゲームは

過去にもいくつかサンプルを見せてもらった事があるけど、

操作感も含めて「間」が凄く良いね。

動きの間のウェイトの設定がうまくて、遊んでて気持ちが良い。

 

杉山 朴さん、凄い勉強家なんですよね。好奇心も強いし。

 

村上 昔『ロックマン』をそのまま真似てゲーム作ってたよね。

「プロはどうやってゲームを作ってるんだろう」

っていうのを自分の手でシミュレーションしてみて、

こういうスピード感と間があったら気持ち良いんだと理解するために。

そういう土台があった上でオリジナルのゲームを作るところが

彼の強みなんだろうね。ちなみに五十嵐もそのパターンだよね。

 

五十嵐 そうですね。

僕もアクションゲームをやり込みまくって、

フレームデータを見ただけで大体分かる状態にはなってきました。

 

村上 『ロプテトラント』でのゲーム特有のモーションの省略は、

よほどゲームをやり込んでないと出来ない芸当だもんね。

普通に作ったらどうしてもリアルになっちゃって、

剣を振る動きもいちいちモタついて、

映像がリアルな分テンポが悪くてゲームとして面白くなくなる。

 

五十嵐 学生作品で何が一番イライラするかって、

やっぱりモーションなんですよ。

等速直線運動はヤメてくれって毎回思います。

だから今回僕はモーションに力を入れましたね。

 

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『ロプテトラント』での複雑な主人公のモーションデータ。

 

村上 その辺りのきめ細やかさでいうと

門瀬・山中の「contents!」でも言えるね。

拘りポイントがウィンドウの開閉モーションっていう。

 

山中 先生、そこばっかり評価しますよね。

 

村上 だって、そういう所が大事でしょ。

単なるフェード処理よりもちゃんと演出が入って

画面が切り替わったらそれがゲームの世界観にもなるわけだし。

ビジュアルの美しさも重要だけど、

画面遷移時の処理が丁寧なゲームって

お客さんの気持ちをちゃんと考えてる証だから、

クォリティも高く見えるよね。

 

山中 まあ、確かにそこは意識しましたね。

 

門瀬 UIが一番時間かかりましたね。

 

山中 私、社会に出たらゲームのプログラミングはやらないので、

今しかやれない事をやろうと思いましたね。

卒業前に専門外の事をやって締めたいなと。

3DCGも未知の領域なんですけど、

一年やそこらで習得できるとは思わなかったので早々に切り捨てました。

 

門瀬 さっき五十嵐君は誰かに頼むのが面倒臭いから

一人でやったって言ってましたけど、

私が山中と組んで心地良かったのはその点でしたね。

「仕様が良くない」ってどっちかが思ったら、

苦労とか努力とかを一旦置いて、良くないものは切り捨てました。

没案は物凄く多いんです。

アートブックにも没案を載せてるんですけど、

そこにも入り切らないくらい本当に多くて。

一週間かけて描いたロード画面とかも没にしたり。

山中が作った仕様が丸ごと没になったり。

今の仕様に落ち着くまでは二か月くらい

延々作って捨ててを繰り返してましたね。

本来は頑張った分だけ捨てたくないって思うんですけど、

作品の良し悪しに関わるならそこは思い切って捨てますね。

そういう共通の価値観があって、

良いものを作るために厳しい決断が下せた点では、

山中とチームを組めて良かったなって思います。

 

村上 ゲームゼミでは「プロ技術よりもプロ意識」って言い続けてるけど、

そこがちゃんと伝わって安心した。

何が大事かを考えて、要らないなら平気で没にするっていう所が。

自分が苦労したかどうかじゃなくて、

お客様にとって面白さを提供できるかどうか

っていう考え方が浸透してるから、

あれだけたくさんデータを作って大量に捨てて、

良いものだけを濃縮する事ができたんだと思う。

 

山中 心は痛んでました(笑)。

 

村上 この作品はHappy Elementsさんからも賞をいただけたよね。

「箱を飛び出した新しいあそびの提案によってゲームの可能性を広げた」

と評価されて。

村上賞もこの作品に贈ったけど、やっぱり理由はHappy Elementsさんと同じ。

 

このチームに限らず今年のゼミ生全体の特徴として、

チームワークとプロ意識って本当に大きいと思う。

とにかくお客様に驚いていただくっていう気持ちがね。

で、ここから本題ね。

 

中西 …まだ本題に入ってなかったんすか?

 

Part2に続く

 

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