クロステックデザインコース

2022年8月「クロスの熊本県天草市プロジェクト通信」No.5(8月9日分)

慌てすぎて、ホテルの部屋着とその日の服を間違えて着て時間をロスし、「部屋着みたいな服を選んだ」自分を呪っているクロステックデザインコースの教員・吉田です。

天草に来ています。

前回の記事の続き。)

連日ハードスケジュールと、かつ京都とは違う、日差しの強さにすっかり夏バテ状態です。

すると学生に、「先生、かき氷美味しすぎるからって、食べ過ぎで夏バテなんじゃ」と、働きすぎではなく「かき氷」を原因にされています。

ちなみに、↑このかき氷はとても美味しく、ガリガリくんに並ぶ美味しさで、天草に来て毎日食べています。

さて、今回の天草では、大きく3つのプロジェクトに来ており、それは、「この日はこれ、この日はこれ」という予定にはならず、同時並行で進んでいきます。

実は、久しぶりに書いているこのブログ、

ムサビのある人に、

人のこと言えないけど、吉田さん、長い、長いよ(笑) 昔ならともかく今どきそんな長い記事は読んでもらえませんよ。

と言われたのだけど、私もそれはわかっておりまして(笑)

高校生や大学生が、100文字ぐらいの文字量の瞬間的なキーワードに反応するようになってきているのもひしひしと感じています。

 

じゃあなぜなのか?というと、

こちらに一緒に来ている5人の学生の「振り返り」と「情報の整理」のためです。

私たち教員は、基本的に仕事(今回で言うプロジェクト)は、常時「マルチタスク状態」なので、一度に複数のプロジェクトが同時並行で動くことには慣れているのですが、学生にとっては「天草に来たと思ったら、毎日同時に色々なことが動いていて、処理できない」という「少ししんどい状態に」なるときもあるだろうなぁと感じています。

それは、能力の問題などでは決してなく、人は、自分の処理しきれないキャパシティの情報に触れると、疲弊しちゃうのは無理もないので。

 

じゃあ、消費できる量に仕事を減らすというのもあるんだけど、それを取り組める機会を減らすことにもなるので。

だから、その日に消化できなくても、後で「あのときこういうことをしたのは、こうした目的や狙いがあったからだったな」と振り返りの資料になれば良いなと思って書いています。

そのため、丁寧に書いたほうが良いので、長めにしても良いかなと。

(それと、ごく少数でも、しっかり読んでくれる高校生もきっといるだろうという期待もこめて)

 

さて、9日は、2つのプロジェクトと3つ目のプロジェクトの仕込みデーでした。

 

まず一つ目は、天草の高校生から依頼を受けて、彼らが「探究」で取り組んでいる「海洋プラスチックごみ」の課題の支援を行なっています。

それは、「探究的な視点」での支援と、「自分達がやったことをどう伝えるか」という点での支援です。

 

「探究的な視点」では、「二次情報と基礎情報ばかりで、君たちの体験に基づく『一次情報』が不足しているよ。」というアドバイス。

このアドバイスは、全国の各地でしています。

一方で、「一次情報」(自分の体験や行動に基づいて得られた情報)以前の問題で、冒頭のように、「長い文章」が読めなくなってきているため、「二次情報」(書籍や論文など。専門的な他者が自身の研究や体験に基づく情報をまとめてくれたもの)すら不足していることも多くなっています。

「二次情報も薄い、一次情報もない」となると、それって「探究」でもなんでもないので、変な型がつくとそれを修正するのに2年ぐらいかかるので、本気で伝えています。

 

「探究」は、今年から全国の高校で導入が義務付けられているのですが、「これぐらいでいいんだ」と高校生が思ってしまうと、それが「型」として染み付いてしまうため、かなり考えないといけない問題だなと思っています。

(ちなみに、今回の高校生はそうじゃないです。念のため。ただ「一次情報が不足しているね」というアドバイスはしました)

 

そこで、最初に相談をzoomで受けてから、すぐに書店に走り、まずは、私自身の「二次情報と基礎情報」をアップデート。

(私は、海洋プラスチックごみの専門家ではないので。専門家の先生の知恵をこうしてお借りします)

それを、プロジェクトに参加する学生にレクチャーして、彼らにも興味を持ってもらう。

そこから、実際に、「本で読んだことを、自分たちのすぐそばでどうなっているかをきちんと行動して、検証したほうが良いよね」と高校生に伝えて、7月の3連休をつぶして、そのときも天草の現地調査に2名の学生と訪れました。

 

現在、日本のあちこちで「SDGs」が叫ばれています。

(「世界の課題」なのに、あえて「日本の」と書いたのは、Google trendを調べて、他国と比較すると、いかに日本の「ブーム」になっているかがわかります。これを「意識が高い」と捉えるかは議論が分かれると思いますが)

 

SDGsはとても大切な目標ですが、私たちが「企画」や「課題解決」に取り組むとき、

「顔の見えない(どこかにいると思われる)みんな」の課題って、企画や課題解決する側のこちらの「解像度」が低すぎて、良い企画にならないことがほとんどです。

 

高校生や大学生の提案する「SDGs」(大人も同じか)って、「顔の見えないみんな」に向かっている気がしています。

 

大学でも何度も何度も学生に伝えていることなのですが、

「これって、どこの、誰の、どんな課題で、その人をどうしてあげたいんだろう?」

という問いが重要で、「特定の誰か」の顔がしっかり浮かんでいるかどうかというのはとても大切です。

(これは、9月と10月の体験授業型選抜のアドバイスです)

 

すると、その人と同じような課題を抱えている人の解決にもつながるかもしれない。

そのぐらいの感覚でいます。

繰り返しになりますが。SDGs自体は大切で、その大きな目標を、「自分の周りの●●さん」のことに置き換えられるといいねというメッセージです。

 

話は戻って。

7月に天草で「とある実験」を1ヶ月行うことにして、

それを天草の高校生と一緒にしたんですね。

 

すると、それ以前は、「プラスチック製品を使うのを減らそう!」と思っていた彼らに、

集めたごみを分類して、

「このトイレットペーパーの包装、使わないで」って言ったら、

・君たちやご家族が買い物の時どうするかな?→一つ一つバラバラで購入する?

・ドラッグストアの人は、店頭にトイレットペーパーを並べるとき、一つ一つバラバラだったら並べる業務にどのぐらい時間がかかるだろう?

・売れずにしばらく置いて、ほこりを被ったトイレットペーパーって売り物にできるかな?

等々、その捨てられていたごみを拾った「一次情報」から、考えることがたくさんあります。

 

すると彼らから、「使わないでっていうのは簡単だけど、自分が実際に生活をしようと思ったら、それが簡単じゃないかも」

という気づきが生まれてきます。

 

ネットや本で見ていると、「この解決策の提案でいける!」と思いがち。

でも、実際に自分達の「一次情報」で行動して得た気づきからは、「違う視点」が見つかることが多いんですね。

 

そうしたサポートができたら良いなと感じています。

 

その「海洋プラスチックごみ」の依頼を受けて、制作した映像とアニメーション(7割ぐらい完成)を依頼主の高校生見せにいくというのが、今回のプロジェクトの一つ。

 

途中を見てもらって、依頼主の高校生の希望も聞き、今回は合わせてナレーション収録を実施。

 

高校を出た後、学生が「zoomでしか見たことがなかったけど、今日は実際に依頼をしてくれた高校生の顔が見えて、ますますやる気になりました」と。

デザインの仕事も、「誰かの顔」が見えるかどうかで、違うことに気がついてくれているのが嬉しいですね。

 

ひとまず、一つ目の山場を乗り切って、ほっとしたのか、別のプロジェクトのリサーチに、分刻みで天草中を回る中で、

開放的になってしまったのか、市民の方におすすめされた海水浴場の視察で、「駐車場で待っているから、見ておいで」と伝えたら、30分以上経っても帰ってこず。

あまりに楽しくなりすぎて、海に入ってはしゃいでいたみたい。

そうすると服が濡れて、それでスイッチが入り、お互いにキャッキャと水を掛け合っていたら、

リサーチの計画で分刻みで動く先生を待たせていることを忘れて、「ハッ!」と気づいたら、えらい時間が経っていることに気づく。

「まずい……これは、先生怒っているかも……かき氷を買って行って許してもらおう」

と思ったのだろうけど、

「はしゃぐのはいい。けど、今日の行動計画を、自分達でちゃんと考えてメリハリをつけないと!」と叱り飛ばされ、落ち込む学生たち。

まぁ、前日の夜中ホテルで朝の5時まで、アニメーションの仕上げをしていたから、

そりゃはしゃぎたくもなるよね。

 

頑張っているから労をねぎらう部分と、それでも「メリハリの付け方」や「自分の行動の先にいる人やこと」を考えなさいと叱る部分の兼ね合いは簡単じゃないです。

 

次の「天草コレジョ館」(ちなみに、「コレジョ」とは、「カレッジ」の意味で、当時のキリスト教神学校の最高学府が天草にあったんですね)に行くまで、「どうしてあげたらいいのかなぁ」と静かに一人考えていました。

 

それでも、こうした体験の中から、できるようになった喜びも、まだまだ不足していることに落ち込みながら、一つ一つ気がついてくれたらいいな。

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