基礎美術コース

古いものを演じ、新しい自分に出会う 何にでもなれてしまう「能楽の授業」 【文芸表現 学科学生によるレポート】

違うジャンルを学んでいても、芸術大学でものづくりを楽しむ気持ちは同じ。このシリーズでは、美術工芸学科の授業に文芸表現学科の学生たちが潜入し、その魅力や「つくることのおもしろさ」に触れていきます。

 

こんにちは、文芸表現学科2回生の中村朗子です。
今回は基礎美術コースの能楽の授業にお邪魔しました。
「一芸ではなく、何芸も」を実現している基礎美の魅力を存分に感じられる授業でした。
ころころと新しい面を見せてくれる「能楽」と「基礎美」の面白さを感じとっていただけたらと思います!

 

 

●学生の日常は、アメコミのスーパーヒーローのようで

 

基礎美の学生って、アメコミのスーパーヒーローみたいだ。

能楽の授業にお邪魔したとき、私はそう思った。

能楽の教室は2階まである広い茶室で、先生方は着物を着ているし、茶室は山の木々に囲まれているしで、まるで異空間のように感じられる。

けれども、そこにいる学生たちは動きやすいTシャツやデニムを着ていて、そこで初めて私は「あぁ本当に大学生なんだ」と実感した。

 

能楽を学ぶ学生たちは能の台本である謡本(うたいぼん)を読み上げていたり舞を習ったりしているけれど、本当に同じ大学に通っている大学生なんだ。

なんだか、私生活を隠して活動しているスーパーヒーローの日常を覗いているような気持ちになって授業を見学してしまった。

 

 

●能楽は「本当に何にでもなってしまえる」

 

能楽は歌も踊りもあるミュージカルのような総合芸術で、授業では歌の部分である「お謡(うたい)」と踊りの部分である「仕舞」をメインに学ぶ。

 

「お謡」の授業では、学生が能の台本である謡本を読み上げ、そこに先生が指導を入れていた。

「『あ』が一つ多い」や「そこは音階を下げましょう」と声が飛んでくるのを聞くと、古語は日本語でありながら母国語ではないのだと実感する。

そのときは源頼光が化け物の蜘蛛を退治する演目『土蜘蛛(つちぐも)』をやっていて、決められた役ではなく登場する全ての役を学生たちは学ぶ。

蜘蛛の化け物も人が演じるそうで、私たちは普段CGで超常現象を演出することに慣れてしまっているけれど、能楽の舞台は人が本当に何にでもなってしまえる場所なのだ。

 

 

●洋服の向こうに、着物の袖が見えるみたいに

 

「仕舞」の授業では、学生たちが扇を持って舞うところを実際に見せてもらえた。

すり足で歩き、姿勢が伸びているのに少し前屈みになり、脇を広げたままゆったりと腕が動いている動作は、着物を着ていないのにもかかわらず、そこに着物の大きな袖が見えるような錯覚すら引き起こす。

 

着物を着ているときに最も美しく見えるようにと洗練された動きは、しかしながら、たとえ着物を着ていなくとも関係なく成立してしまうものなのかもしれない。

 

 

●能面をかけかえていくような、「基礎美」の魅力

 

実際に能楽で使う能面も見せていただいた。

 

能面は額から顎まで顔の全てを覆い隠すものであるし、木でできているから感情を表現できないと思われるかもしれないが、上を向くと微笑みをたたえているように、下を向くと悲しんでいるように見えるようになっている。

 

また、左右にも少しずつ差があって、細やかな感情の表現ができるようになっている。

角度によってころころと表情が変わると知ると、能面はより魅力的に愛らしく見えてくるから不思議だ。

 

能楽では鬼や天狗などの人ではないものが必ず登場する。

そうして人ではないものですらも能面をかけることで演じることができること、人が何にでもなってしまえることが能楽の大きな魅力ではないかと思ったし、これって、基礎美の学生に感じる魅力と、とても近しい魅力だと思う。

 

基礎美の学生って、どの授業のときに会ってもその道に専念している人みたいに見えるのに、あるときは木工をして、あるときは能楽をして、と思ったら次の瞬間には1500度の窯で陶器を焼いていたりするし、会う度にまったく違う人に会っている気分になる。

 

きっとまだまだ知らない面を隠し持っていて、これからもきっと何にでもなってしまえるのだろう。

能面をかけかえていくように。

 

 

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取材記事の執筆者

文芸表現学科2年生

中村朗子(なかむら・うららこ)

福岡女学院高校出身

 

高校1年生の頃、「長雨に 濡れた葵の花のような ふるえる君の声に触れたい」という作品で、全国高校短歌大会(短歌甲子園)の個人戦で全国優勝している。短歌や随筆などの言葉での表現のみならず、油絵も本格的に描いてきた。洋服や宝石が好き。現在、受講中のノンフィクションの授業においては、「高校時代から現在まで見聞きして通過してきた経験や風景を、特定のジャンルに囚われずにすべて連関させて描写していく」という試みで長い作品を書き続けている。

 

 

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