2019.01.15

パリ<五月>から50年 政治的映像の歴史ではなく、歴史的映像の政治について

タイトル:パリ<五月>から50年
政治的映像の歴史ではなく、歴史的映像の政治について

講師:四方田犬彦氏(比較文学者・本学大学院学術研究センター特別研究員)
日時:2019年1月16日(水) 18:00-19:30
会場:京都造形芸術大学 人間館 NA302教室
料金:無料(申込不要)
定員:なし
主催:京都造形芸術大学大学院学術研究センター
http://realkyoto.jp/event/kuad_190116/

■公開講座概要
今からちょうど50年前、1968年5月のパリでは何が起こっていたのか。
それは単に大学の学生寮問題に機を発した、学園闘争ではなかった。
学生と労働者が連帯して、首都を機能停止に至らしめたゼネストでもなかった。
<5月>とはまさに一瞬ではあったが、思いもよらず実現された絶対的自由の
空間であり、そこでは人々は思うがままに語り、思うがままに行進し、思うが
ままに路上にエクリチュールの痕跡を残すことができた。老獪な権力の介入に
よって、ユートピア的な無政府状態はただちに鎮圧された。だがその種子は
世界中いたるところに散種され、現在も形を変えて存続している。バークレーへ、
ベルリンへ、ローマへ、・・・もちろん京都や東京も例外ではない。
<5月>においてまず問われていたのは、映像と言語の秩序を転覆させ、それを
無際限の混沌に委ねることであった。夥しい数のビラ、チラシ、落書き、ポスターの
制作と流通。そこではこの特異な現象を今日の時点から眺めることは、何を
意味しているのか。ノスタルジアは廃棄されるべきだ。巨大な歴史物語のなかに
包み込み、平板化することも回避されるべきだ。われわれが問われなければ
ならないのは政治的映像の歴史ではなく、歴史的映像を見舞うことになった政治である。

■四方田犬彦氏略歴
京都造形芸術大学大学院学術研究センター特別研究員。映画史・比較文学を専攻。
近著に『神聖なる怪物』『親鸞への接近』『詩の約束』がある。
詩集に『人生の乞食』『わが煉獄』、訳詩集に『パゾリーニ詩集』などがある。