MFA(芸術修士)とは?

MFAは“Master of Fine Arts”の略称で、日本では「芸術修士」や「美術学修士」と呼ばれています。
“New MBA”とも言われ、MBA(経営学修士)のようなグローバルスタンダードな学位として、
世界的に注目が集まっています。

このページでは、「世界におけるMFA」「日本におけるMFA」「京都芸術大学のMFA」という
3つのエリアに分け、MFAの必要性と可能性についてご紹介していきます。

MFA(芸術修士)とは?

世界におけるMFA

海外では、アーティストやキュレーターだけでなく
第一線のビジネスパーソンも取得を目指す
MFA(芸術修士)

第一線で活躍するビジネスパーソン

海外に目を向けると、MFAは、アートやデザインに関わる人たちのグローバルスタンダードな最終学歴(あるいは“最新”学歴)になろうとしています。

さらに、大手家電メーカーや自動車、金融、製薬など、数々のグローバル企業が、幹部の育成・トレーニングに向けたプログラムとして芸術修士課程(MFA)を採り入れたり、ニューヨークの美術館やアトリエでは朝からギャラリートークに参加する知的専門職の姿が見られるようになったりと、第一線で活躍するビジネスパーソンが、アートやデザインを学び始めています。

MFA is New MBA

アート・デザイン領域の学びがさらに必要とされる時代へ

2008年、ニューヨークタイムズ誌に掲載されたアメリカの著名作家ダニエル・ピンク氏の記事に「MFA is New MBA」という言葉が登場。古くからの伝統を重んじる企業も、想像力や創造的な思考をますます評価するようになっていると論じ、世界的な注目を集めました。

この考え方は、ハーバード・ビジネス・レビューでも取り上げられ、「The MFA Is the New MBA」というタイトルの記事が発表されました。記事を執筆したキャサリン・ベル氏自身も、MFAを取得した一人であり、大学院での体験をこう書き綴っています。

数年前、私はウェブ会社の経営を辞め、大学院でフィクションライティングを学びました。現実の仕事から完全に離れるつもりだったのです。
しかし、本業に戻ったとき、芸術修士課程はかなり良い管理職養成コースであったことに気づきました。財務のことは何も学べませんでしたが、イノベーションに必要な想像力を、2年間にわたって実践的に鍛錬することができたのです。

ダニエル・ピンク氏によって書かれた『ハイ・コンセプト〜「新しいこと」を考え出す人の時代〜』というアメリカのベストセラー書籍の中でも、MFAが担うアート・デザイン領域の学びがますます重要になっていくことが示唆されています。

この書籍では、機能だけでなく「デザイン」、議論より「物語」、論理だけでなく「共感」、個別よりも「全体の調和」、まじめだけでなく「遊び心」、モノよりも「生きがい」というように、これからのビジネスや生き方を切り拓くための“6つのセンス”が紹介されています。日本でも今まさに、必要とされている能力ではないでしょうか。ではなぜ今、このような力が必要とされているのか。その理由をかんたんに紐解きます。

サイエンスだけでは問題に対処できないVUCAの世界

「Volatility=不安定」「Uncertainty=不確実」「Complexity=複雑」「Ambiguity=曖昧」という4つの単語の頭文字を合わせた「VUCA」が、今日の世の中を表す言葉だと言われています。不安定で不確実、複雑で曖昧。そんな社会にあって、サイエンスや理性、論理だけを拠り所にした判断では、かえって状況を停滞させてしまったり、判断を麻痺させてしまうリスクがあると警告されています。

もちろんVUCAな世の中だからサイエンスが必要ないというわけではなく、サイエンスとアートのバランスが、これからより多くの場面で求められていくと考えられます。

美意識の水準が、個人や企業の成果を左右する

私たちの身の周りにあらゆるモノがあふれ、さまざまな技術やプロダクト・サービスが飽和状態にあり、どの企業も同じような正解に辿り着いてしまう今、優位性を出すにはアートやデザインの視点が欠かせないものになっています。

だからこそ、世界のリーダーやエリートたちは、単なる“教養”としてではなく、自らのビジネスやキャリアに役立てようという、とても“功利的”で“実践的”な目的から、アートやデザインを学んでいます。自分たちの企業やプロジェクトの判断基準に「アート・デザインを学ぶことによって磨かれる感性」を加えることで、より良い方向へ推進させるための糧としているのです。

みんなで“作品”をつくるように社会をつくる

自分の所属するプロジェクトチームや会社、家庭、地域、あるいは社会全体をひとつの作品として捉えてみると、私たち一人ひとりがその制作に関わるアーティストだと言えます。その作品をより良いものにするためには、「自分はその作品をどのようにしたいのか?」というビジョンやコンセプトを描くことが大切です。

そして、ビジョンやコンセプトを描く力は、MFAを取得する課程を通して実践的に養うことができます。MFAを取得した人が、一人でも多く、より良い社会のつくり手として活躍していくことで、社会全体もより良いものになっていく。この考え方は、京都芸術大学が“開学の理念”として大切にしている「藝術立国」や「京都文藝復興」とも通じるものです。

『ハイ・コンセプト〜「新しいこと」を考え出す人の時代〜』ダニエル・ピンク(著)大前研一(翻訳)

学士から修士、博士へ
グローバル社会では高度な専門家たちが急増している

ここに掲載したグラフはあくまで理工系分野のデータではありますが、研究人材の育成・確保についてまとめた文部科学省の資料によると、2000年代に入ってアメリカ・中国の博士号取得者数が急増していることが分かります。一方、日本ではほぼ横ばいのラインを辿りつつ、減少傾向に。これと連動して発表される論文の数も、アメリカ・中国が活発さを増しています。

芸術分野においても、芸術×学士から芸術×修士、芸術×博士へと、より専門性の高い人材がグローバル社会の中核を担っていくと考えられます。

中国やアメリカの博士号取得者数が急激に増加している一方、日本は2000年ほぼ同水準で推移。

理工系分野(※)における博士号取得者の推移(2000年〜2014年)

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理工系分野(※)における博士号取得者の推移(2000年〜2014年)

引用元:文部科学省 第79回科学技術・学術審議会 人材委員会資料『研究人材の育成・確保を巡る現状と課題』より

上:主要国の理工系分野の博士号取得者数の推移
左:主要国の論文数の変化(論分数・全分野)

論文数(全分野(※)・整数カウント)
論文数(全分野(※)・整数カウント)

全分野... 化学、材料科学、物理学、計算機・数学、工学、環境・地球科学、臨床医学、基礎生命科学

日本におけるMFA

日本は、世界最速で人生100年時代へ突入。
働き方も、生き方も大きくシフトする

「人生100年時代」の到来

2050年頃には、100歳以上の高齢者は50万人を超える見通し。

100歳以上高齢者の年次推移

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100歳以上高齢者の年次推移

(出所)厚生労働省「男女別百歳以上高齢者数の年次推移」国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」

日本国内の「100歳以上人口」は、2020年時点で8万人を超え、今も毎年増加を続けています。2050年には100歳以上の人口が50万人を超えると推計されていて、2007年以降に生まれた子どもたちは平均寿命が100歳を超える見込みです。

「人生100年時代」は未来の話ではなく、すでに現実のものとなり、これまでのモデルが通用しない社会を、私たちは生きています。

人生はマルチステージ化する

人生100年時代に求められる学び

これまでは、社会に出る前に教育を受け、ひとつの仕事を定年までやり遂げ、引退する、というかたちで、多くの人の人生はシンプルな「3ステージ」で構成されていました。しかし、人生100年時代では健康に働き続けられる期間が今よりも10年、20年とのびていきます。

一方で、さまざまな産業において機械化やAIの活用が進み、仕事で求められるスキルもこれまでにないほど大きく、かつ、早く変化していくと考えられます。

このため、一人の人が、一生のうちに何度も新しいことを学び、それを仕事に活かしていくことになります。単純に大学生=若者というように「ステージ」と「エイジ(年齢)」がイコールで結びつかなくなり、人生は多様な選択肢をもった「マルチステージ」へとシフトしようとしています。

『LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略〜』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット(著)池村千秋(翻訳)

“学び直し”“大人の勉強”が広がり、日本でも注目されはじめたMFA(芸術修士)

大人の勉強

大人の勉強

日本でも“学び直し”や“大人の勉強”というテーマが雑誌の特集として取り上げられるほど、一度社会に出た人たちの学習意欲が高まっています。個人の探究心に動かされ、あるいは、企業のキャリア育成のひとつとして、「大学院で学ぶ」「修士として新しい専門性を獲得する」という選択をする人も現れています。

その中でも、MFA(芸術修士)という資格への注目度は高く、この数年間、京都芸術大学の通信教育課程にも多くの志願者、修士生が集まってきています。

MFA取得をめざす修士生たちの“学びの動機”

自社と地域を活性化するための、新しい視点の思考方法を学ぶため。
50代、商店街協同組合理事長
様々なバックグラウンドを持つ方々との繋がりを持てることに期待して。
40代、民間企業管理職
大学卒業後、さらに専門的な技術・知識を得て、より深く自身の作品を表現したいと思ったから。
60代、歯科衛生士
仕事と両立でき、カリキュラムが実践的で充実しており、自身のスキルアップにつながりそうだと感じたため。
20代、自営業
充分に整えられたプログラムと、美しいWebデザイン。教授や学友との近さ。すべてがWebで完結するからこそ、様々な業界で今活躍する方々が集まるのかなと思います。
40代、農業

日本でのMFA取得者はまだごくわずか。国内での稀少人財、そして、世界で通用する人財へ

社会人の“学び”への関心が高まっているとは言え、まだまだ世界の水準から見ると、日本で25歳を超えてから学び直しをする人の割合はごくわずかです。OECD(経済協力開発機構)に加盟する38ヵ国の先進国では、平均して高等教育機関に入学する人の5人に1人(18.1%)が25歳以上。これに対して日本では、25歳以上の入学者の割合は、2%にも及びません。

高等教育機関への進学における25歳以上の入学者の割合

高等教育機関への進学における25歳以上の入学者の割合

参照:大学型高等教育機関「OECD stat extracts(2012)」(日本の数値は「学校基本調査」と文部科学省調べによる社会人入学生数(4年制大学))

日本国内では社会人を経験した人が修士課程を修めること自体がまだ珍しく、その中でもMFA(芸術修士)は、MBAと比較しても取得者の数が少なく、その稀少性の高さからも、これからのキャリア形成に大きく寄与してくれることが期待されます。

そして何より、芸術の技や思考、創造性を磨くことで、人生100年時代を自分らしく生き抜く人が1人でも多く現れてくれたら、これほど素晴らしいことはありません。

京都芸術大学のMFA

通学0日、完全オンライン学習で
MFA取得を目指せる、国内で唯一の環境

通学0日、完全オンライン学習でMFA取得を目指せる、国内で唯一の環境

京都芸術大学では、完全オンラインで学べる通信制大学院 芸術研究科(通信教育)芸術専攻を開設し、忙しい社会人の方でも、時間的・地理的な制約を受けずにMFAの取得を目指せる環境を整えています。

レポート・作品の提出から動画講義、個人ワーク、グループワーク、研究記録、個別指導までをすべてWeb上で行うことで、一人ひとりが自分に合わせたペースで研究・制作を深めることができます。

学べる領域も、芸術からデザインまで多岐にわたり、自身の専門と向き合うだけでなく、多種多様な専門性をそなえた人々の考え方や研究・制作の過程にふれることができます。

専攻 領域 分野 募集定員
芸術専攻
(通信教育)
芸術学・文化遺産 芸術学〈芸術理論・⻄洋美術史、⽇本・東洋美術史〉、⽂化遺産〈歴史遺産、芸能史・伝統⽂化〉 450名
美術・工芸 ⽇本画、洋画、⼯芸デザイン
写真・映像 〈写真、動画、アニメーション、写真映像に関する展示・出版〉
メディアコンテンツ グラフィックアート
文芸 〈文芸創作(純文学)、文芸創作(エンターテインメント)、評論・編集・活動支援〉
コミュニケーションデザイン グラフィックデザイン、映像デザイン、空間デザイン
学際デザイン研究 〈デザイン思考・伝統文化の活用〉

芸術系で国内最大級の通信制大学院。
選ばれてきた信頼と、蓄積されたノウハウ

京都芸術大学 通信制大学院 芸術研究科(通信教育)芸術専攻は、定員450名にのぼる国内最大級の通信制大学院。コロナ禍以前からWeb会議システムや本学独自の学習用webサイト「airU」などを駆使してオンライン学習のノウハウを蓄積してきたため、会社員から自営業、主婦、すでに作家・アーティストとして活動している方まで、幅広い方が安心して学べる環境を構築しています。

在学生の職業構成

2023年7月現在の通信制大学院在学生データ。

芸術研究科長からのメッセージ

一握りの専門家ではなく、世界のさまざまな場所で活躍できる
“芸術修士”たちと、新しい波を起こしていく。

MFA(芸術修士)を修めていなくても、自分で好きなように学習をすることはできます。大学院でなくても、自分で作品はつくれます。それでは一体何のために、大学院で修士を取るのでしょうか?

その違いはやはり、専門家および専門家を目指す人たちの間で揉まれるという経験です。1人で自分の世界に浸って学びを続けていくというのは、いわば、井戸の中で自分の王国を築くようなものです。居心地もいいです。大学院では、“私の中だけ”で好きなように勉強するのとは違って、他者との間で辛いこと、厳しいこともいろいろと経験します。その中で初めて「自分の研究がどういう意味を持っているのか」「世間の中でどのように役に立ち、どのように評価されるのか」ということが分かってきます。ですから修士号というのは、自分ではなく“人から評価された証”なのです。

本学の大学院は、ただ一握りの専門的職業家を育てるということを目指していません。もっと地域にいろんな人を送り込みたい。美術業界のエリートを育てるということに限らず、いろんな仕事で活躍する修士号取得者を、全世界に送り込みたい。芸術的な感性を生かすチャンスは、さまざまなところに広がっています。その多様な活躍の場で、芸術的な力を存分に発揮していく。そんな“芸術修士”取得者たちとともに、社会に新しい波を起こしていきたいと考えています。

京都芸術大学大学院 芸術研究科長
上村 博

上村 博

上村 博

京都大学大学院文学研究科博士課程中退。京都大学文学部哲学科助手、パリ第四大学研究員を経て、1995年より本学に勤務。2019年4月より現職。芸術の理論的研究、特に芸術による場所と記憶の形成作用について研究。長らく社会人教育に携わる。

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