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芸術教養学科

2020年06月15日

【芸術教養学科】コロナ禍の中での学び

入構制限によって人がいなくなった本学のカフェ



※今回は、通信教育学部 芸術教養学科 下村泰史先生からのコラムをお届けいたします。

今この時期にコラムを書くとしたら、どうしてもこの日本と世界を覆っている、新型コロナウイルス感染症について触れないわけにはいかないでしょう。さまざまな職場はもちろんですが、大学もその影響にさらされています。

私自身は、この京都芸術大学の通信教育部、芸術教養学科に軸足を置きつつも、通学部の環境デザイン学科などでも授業を担当しています。今回のコロナ禍でまず大きな影響を被ったのは通学部でした。

通学部はいうまでもなく、朝から夕方まで一時間半くらいずつの授業を、みんなで一斉に受けるスタイルで学びます。それぞれ公共交通機関を使って大学の教室にたどり着き、少人数のゼミの場合も、多人数の講義の場合もあると思いますが、複数の人と時間と空間を共にすることになります。感染の危険はつねに随所にあるわけです。そういうわけで、多くの大学が、緊急事態宣言に伴う休業要請以前から新学期の授業開始を見合わせ、かつ遠隔での教育を模索しはじめました。

本学通学部も、ZOOMという遠隔会議システムと、Google Classroomという教室管理システムを使って、5月下旬から授業を行うことになりました。ZOOMについては、この間のテレワーク等で使われた方も多いでしょう。私も環境デザイン学科の環境保全論という講義科目でこれをやっているのですが、なかなか大変です。便利で面白いツールではあるのですが、多人数の一方向型の講義、少人数での応答型のゼミ、実作指導など、さまざまな種類の授業があり、このシステムにも向き不向きというのがあることがわかってきました。また、独特の疲労感には驚きました。講義する方もなのですが、研修等でZOOMを通して受講する側になった時の疲労感は、これまで感じたことのないものでした。慣れもあるのかもしれませんが、これを毎日長時間やっている学生は、大変だと思います。

通信教育部でもスクーリングについては対面型を実施するのは難しく、多くはZOOMで開講されました(夏期から一部科目で対面授業の再開が予定されています)。これも2日間の対面スクーリングの代替であれば、まる2日間、ZOOM画面に付きっ切りになるわけで、これもなかなか大変だと思いました。7月には私も一つ担当するので今から緊張しています。

いろいろ試行錯誤しながらのZOOMの授業ですが、やっていて少し不思議に思うことがあります。当たり前ではあるのですが、ネットを通じての一斉授業でも、最初に出席を取るのです。同時にその授業に参加している、ということがとても大切だということになっているのです。場所はみんなバラバラなのに、その一定の時間帯だけみんな、画面に向かって授業を受けている。これはこれで素敵なことなのかもしれません。でも同時に一定の拘束であるともいえます。長時間になるとこの拘束性は気持ちに効いてくる感じもあります。

airUへの入り口



ところが、そういう通学形式をネットに置き換えた遠隔授業に四苦八苦する先生や学生が多くいる一方で、その影響をほとんど受けなかった学科もあります。それが、私の本拠である、通信教育学部 芸術教養学科なのです。芸術教養学科は、ネット上ですべての学びを完結できる、遠隔ネイティブとでもいうべき教育システムを持っています。そしてその学びは、自分が好きな時間に取り組むことができるというものです。airUの画面に向かってディスカッションしたり、レポートを書いたりするのは、早朝でも昼下がりでも深夜でもいいのです。この辺りが、実空間からネット上に移行しつつあるものの、時間的な拘束にまだ縛られている他の遠隔授業システムとまったく違うところです。この時間的拘束から自由であることは、学びたい社会人にとっては、大きな利点だと思います。また自由に時間を使いたい若い人たちにも、選択肢として強く意識されだしています。

緊急事態宣言が発出され、多くの人たちが自宅にこもっていた時期、多くの大学人は遠隔システムを学んだり、それに即した教材を作ったりしててんやわんやでした。また多くの学生たちは、授業ななかなか始まらなくて、やきもきしていたことでしょう。ところが「芸術教養学科」の学生たちは、おうち時間が増えたせいもあるのかもしれませんが、この春期にはものすごい数のレポートが提出されました。コロナ禍の逆境を学びに活かすたくましさには感服しました(添削は大変でした!)。
顔を合わせての親密な学びあいにも得難いものがあります。しかし同時に、時間からも空間からも解き放たれた遠隔ネイティブの学びには、今のような状況下において人々を惹起するパワーがあるのだ、ということを実感しました。そしてそれは、これからやってくるコロナ後の社会において一層クローズアップされてくるような気がします。

芸術教養学科WEB卒業研究展のトップ、芸術教養の視線はさまざまな地域の現実に向けられています。



芸術教養学科の学びは、今回のコロナ禍の影響をあまり受けなかったと書きましたが、もちろん全然ということはありません。フィールド調査や聞き取り調査を伴うような課題についてはシラバス等に、調査時の注意事項やネット上の事象を取り扱えるようするなどの追記を行いました。

芸術教養学科は、ネットワーク上に学びの場所を持ちますが、その学び自体は私たちが生きる現実の世界、社会と深く関わる実践的な内容をもつものです。いわゆる「作家」「作品」にとどまらない、人間の創造的な営為全体を取り扱うからです。芸術教養の学びから、ウィズ・コロナと呼ばれる時代をよりよく生きるヒントを、共に見つけ出していけたらと思っています。

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