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2023年07月25日
【芸術教養学科】社会人が学ぶということ〜自負と謙虚
芸術教養学科 早川克美

人生、30年、40年、50年、60年、70年、生きた時間だけ様々な経験を積み、それが生きた証であり、その人の自負となります。自負の「自」は自分自身を意味し、「負」は、この言葉の場合、頼みとするという意味で使われます。つまり、自負とは、自分自身を頼みとする、という意味なのです。
また、自負を英語に訳すると、「Pride」あるいは「conceit」と表現でき、前者は誇りを意味し、後者はうぬぼれというニュアンスとなります。自分自身に誇りを持って生きることは素晴らしいことですが、うぬぼれに転じてしまうと、その方の成長のための余白、つまり伸び代が失われてしまうのではないでしょうか。様々な年代の社会人学生の方に接していて、「conceit=うぬぼれ」な自負がご本人の成長を引き止めてしまっていると残念に感じることがあります。今日は、社会人学生の方々に向けて、私の思いをお話しようと思います。
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私自身、46歳で大学院の門を叩き、進学した経験があります。それまでの私は、デザインの世界で一定の成果を出し、第一線で活躍する方々との交流から築いた人脈を持ち、幾度とない修羅場のような現場を乗り越え、それなりに自分のやってきたことに自負がありました。
しかし、そんな私が大学院に入学すると、これまでの実績が、学びの世界ではほとんど役に立たない事態に遭遇することとなるのです。

そんな時、恩師がこう言われたのです。
「早川さんは実践を積まれてきたことが大変素晴らしいけれど、研究という世界では生まれたての赤ん坊の状態でもあります」
これを聞いて、私は頭から水をかけられたようにはっとしました。なんということでしょう。うぬぼれていたのです。自分に恥ずかしくなりました。私はここに実績を見せに来たんじゃない、学びに来たんじゃなかったのか!勘違いをしていた、心を入れ替えよう、赤子が言葉を覚えていくように心をまっさらにして学びに向かおう、そう思えるようになったのでした。
学ぶということは目の前のことに謙虚に立ち向かうことなのです。そう、謙虚さを取り戻せたことで、私は苦しさから開放され、自由な心持ちになれました。そして、学びの世界の果てしない広さを知り、感激しました。乾いたスポンジのように様々なことを吸収し、壁にぶち当たっては、乗り越えるべき壁が現れたことを喜べるようになりました。自負は自分を支えるけれど、うぬぼれてはならないのです。謙虚さの重要性に気づけたことは、私の人生を、豊かに奥行きのあるものにしてくれたと、恩師に心から感謝しています。

ある日、社会人大学生のお一人からメッセージをいただきました。今、その方は学ぶことが楽しいとおっしゃる。しかし、それは最初からではなかったとも言われていました。ご本人から許可をいただいたので、そのメッセージの一部をご紹介させていただきます。
入学前の私は、講演依頼も多く、もう「わたしの知らない事なんかない」くらいのものだった。そんな私も60歳を迎えた時に、この大学の門を叩いた。
鼻持ちならないやつだったから、「なんだこんなものか?」くらいの気持ちで取り組んでいた。自分でも嫌な奴だったろう。
しかしやがて、いくつかのことに気が付き始めた。
まず自分の知識なんて、どれほどのものでもないということだ。知を振りかざすのは知のレベルの低い者の態度だ。
ある日、ロバート・デニーロの「マイ・インターン」という映画を見た。この大学で学ぶ姿勢に悩んでいるときに見たこの映画は、彼が定年まで勤務した古いパラダイムの電話帳印刷会社の建物が、若い女性アン・ハサウェイの経営するネット通販会社になっていた。彼はそこに70歳にして一人のインターンとして勤務する。変化を受け入れながらダンディズムは守る。つまり、そういうことだ。
その態度を見て教えられた私は、人生観を変え、学ぶ姿勢を変えることができた。学ぶとはいかに人生において輝かしく貴重なものだったかを知った。
先生いつもありがとうございます。
この方は、「Pride」としての自負を持ちつつ、謙虚さに気づけたことで、学びの世界の自由で広大なひろがりに身を置くことができたのです。素晴らしいメッセージに大変感激いたしました。

自負と謙虚を、バランス良く、自らの中に持っていただきたい。そういう方が一人でも多くなっていただけたらこの上ない喜びです。
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