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2025年12月10日
【映像コース】世界を目指すということ
こんにちは、映像コース教授の下川猛です。
先日、高市早苗首相がSNSで「日本の才能あふれるアーティストの皆様が、より多くの国でライブや交流を実現できるよう、政府は海外展開支援を強化します。アジア、欧州、北米など多様な市場で、日本の音楽が響く未来を創ります」と発言しました。音楽産業に留まらず、マンガ、アニメ、ゲーム、映像といった日本発の強力なコンテンツを生み出すクリエーターの海外展開を支援することも伝えています。これらのコンテンツ産業について、高市首相は「半導体産業に迫る海外市場規模を持つ、日本の戦略産業」であると説明し、先日閣議決定した550億円を超える補正予算を活用し、海外売上20兆円を目標に複数年にわたる支援を行い、官民連携でこれを後押しすると話しています。
先週、出張でインドネシア、ジャカルタに行ってきました。
3泊の短い滞在でしたが、場所を移動して変えることは、自分の意識が変わるのでとてもありがたい経験です。日本を離れると、日本の状況がどうしても客観的に見えます。物価の件、為替の件など、日本が現在、経済的に相当ハンデキャップを背負っていることを痛感します。
今回の出張は、アメリカ・スカイバウンド社とフジテレビジョンで共同制作した実写ドラマ「HERAT ATTACK」という作品が、「ASIAN TELEVISION AWARD」というアワードの長編ドラマ部門でノミネートされたからでした。
(日本国内ではFODで観ることができますので、ご興味ある方は、是非ご覧ください。)

最終結果は、グランプリをもらうことはできませんでした。
ジャカルタまで出かけて、とても悔しかったですが、ノミネートされたという事実は、この作品が海外の審査員に評価されたということで、大変ありがたいことです。この作品に携わって、いくつかの点で、日本と世界について感じたことがあったので、せっかくなのでこのブログに書きたいと思いました。



日本の映像作品が世界から好かれるためにはどうすればいいのでしょうか?
ちょうど、劇場版映画「国宝」が日本では大ヒットを記録し、これから世界に進出していくタイミングです。そして、アニメーションは既にそのローカライズと権利クリアランスのハードルが低いこともあって、既に海外でも高く評価され、多くのコンテンツ輸出が実現できています。
世界で好かれるためのポイントをあげれば、たくさんあってキリがないのですが、今回は3つのポイントに絞りたいと思います。
①作品のクオリティを純粋にさらに上げる
一つ目は、現在の日本で制作されている映像作品のクオリティに関してです。
実は、既に東南アジアの国々にも予算規模、クオリティともに大幅な差をつけられている状況です。今回のアワードでもタイ、シンガポール、インドネシア、マレーシアなどの高いクオリティの映像作品がたくさんノミネートされていました。制作費も日本の放送コンテンツよりもかけている作品になっていました。
これまで、映像コンテンツの中心だった放送コンテンツ(テレビ番組)の質の低下(相対的に)が著しくなっています。
今後、日本の映像クリエーターやプロデューサー達は、世界を目指すレベルのクオリティコントロールを、意図的に、積極的に行う必要があります。
自分も過去にNetflixとの作品制作を行った際に、世界の皆様に観ていただくことを前提とした映像制作を初めて行い、大きな発想の転換ができました。目から鱗でした。そこには、世界の宗教や民族に配慮した制作などのコンプライアンス的な部分も関わってきます。
映像に関わる皆さんは、国際競争力を持った映像コンテンツを作っていくことをもっと真剣に考えていく必要があります。そのためには、最新の技術を学ぶ必要があります。
もちろん、ローカルに閉じた作品も別の存在価値があるので、全部の作品を世界に展開する必要はありません。
②世界規模の流通網を意識する
Netflixがワーナー・ブラザースを買収しました。
NetflixやAmazonプライムビデオ、Disneyプラス、AppleTVなど、全世界で視聴できるOTT(OVER THE TOP)サービスが席巻しています。さらに、YouTube、TikTok、インスタグラムなどのSNSを通じて、世界に映像を発信することもできます。
どれもアメリカ発のサービスであることを踏まえると、流通網を構築しているのは、日本ではなくアメリカだと痛感します。
この事象をポジティブに捉えるならば、「その流通網を利用して、日本で制作された映像コンテンツがそのプラットフォームを通じて世界で配信することができる。」と言えます。
ネガティブに捉えると、「日本発のサービスが世界に通用していない。そして、クオリティの低い作品を流通させてしまうと、クオリティの差が明確になってしまう。価格決定権は流通網側が握ることになってしまう。」と言えます。
今後、自分の作品をどのように世界に流通させていくのが正しいのかを真剣に考える必要があります。OTTなどのおかげで、世界は狭くなっていますが、その分、クオリティなどの差が一目瞭然の時代になりました。
③人材を発掘、育成する
では、そのクオリティの高い映像の制作を誰がやる、誰ができるようになるのか?
この部分が上記の①、②にも関わってくる大切なポイントだと思います。
そして、それがこの大学が果たす役割の一つでもあります。
単なる記憶力などの偏差値ではなく、芸術大学だからこその創造性、人間力を高め、世界に通用する文化創造コンテンツを生み出す人材を育成すること。
大学という場所は、教える側も、学ぶ側もともに育っていくことが理想です。京都芸術大学の存在意義は、このポイントにおいても、大変重要な存在です。
皆さんも日々の生活の中で、日本と世界について思いを馳せながら、コンテンツを制作する楽しさや意義について考えてみて欲しいと思います。
国としての重点産業として、今後無限の可能性が広がっている分野に皆さんは少なからず関与しているのです。
作品を通じて、世界と交流する。
クリエーターにとって、今後の大切なテーマであると思います。
頑張りましょう。
映像コース| 学科・コース紹介

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先日、高市早苗首相がSNSで「日本の才能あふれるアーティストの皆様が、より多くの国でライブや交流を実現できるよう、政府は海外展開支援を強化します。アジア、欧州、北米など多様な市場で、日本の音楽が響く未来を創ります」と発言しました。音楽産業に留まらず、マンガ、アニメ、ゲーム、映像といった日本発の強力なコンテンツを生み出すクリエーターの海外展開を支援することも伝えています。これらのコンテンツ産業について、高市首相は「半導体産業に迫る海外市場規模を持つ、日本の戦略産業」であると説明し、先日閣議決定した550億円を超える補正予算を活用し、海外売上20兆円を目標に複数年にわたる支援を行い、官民連携でこれを後押しすると話しています。
先週、出張でインドネシア、ジャカルタに行ってきました。
3泊の短い滞在でしたが、場所を移動して変えることは、自分の意識が変わるのでとてもありがたい経験です。日本を離れると、日本の状況がどうしても客観的に見えます。物価の件、為替の件など、日本が現在、経済的に相当ハンデキャップを背負っていることを痛感します。
今回の出張は、アメリカ・スカイバウンド社とフジテレビジョンで共同制作した実写ドラマ「HERAT ATTACK」という作品が、「ASIAN TELEVISION AWARD」というアワードの長編ドラマ部門でノミネートされたからでした。
(日本国内ではFODで観ることができますので、ご興味ある方は、是非ご覧ください。)

©Fuji Television Skybound Entertainment
最終結果は、グランプリをもらうことはできませんでした。
ジャカルタまで出かけて、とても悔しかったですが、ノミネートされたという事実は、この作品が海外の審査員に評価されたということで、大変ありがたいことです。この作品に携わって、いくつかの点で、日本と世界について感じたことがあったので、せっかくなのでこのブログに書きたいと思いました。


授賞式の模様

落選して、項垂れている私
日本の映像作品が世界から好かれるためにはどうすればいいのでしょうか?
ちょうど、劇場版映画「国宝」が日本では大ヒットを記録し、これから世界に進出していくタイミングです。そして、アニメーションは既にそのローカライズと権利クリアランスのハードルが低いこともあって、既に海外でも高く評価され、多くのコンテンツ輸出が実現できています。
世界で好かれるためのポイントをあげれば、たくさんあってキリがないのですが、今回は3つのポイントに絞りたいと思います。
①作品のクオリティを純粋にさらに上げる
一つ目は、現在の日本で制作されている映像作品のクオリティに関してです。
実は、既に東南アジアの国々にも予算規模、クオリティともに大幅な差をつけられている状況です。今回のアワードでもタイ、シンガポール、インドネシア、マレーシアなどの高いクオリティの映像作品がたくさんノミネートされていました。制作費も日本の放送コンテンツよりもかけている作品になっていました。
これまで、映像コンテンツの中心だった放送コンテンツ(テレビ番組)の質の低下(相対的に)が著しくなっています。
今後、日本の映像クリエーターやプロデューサー達は、世界を目指すレベルのクオリティコントロールを、意図的に、積極的に行う必要があります。
自分も過去にNetflixとの作品制作を行った際に、世界の皆様に観ていただくことを前提とした映像制作を初めて行い、大きな発想の転換ができました。目から鱗でした。そこには、世界の宗教や民族に配慮した制作などのコンプライアンス的な部分も関わってきます。
映像に関わる皆さんは、国際競争力を持った映像コンテンツを作っていくことをもっと真剣に考えていく必要があります。そのためには、最新の技術を学ぶ必要があります。
もちろん、ローカルに閉じた作品も別の存在価値があるので、全部の作品を世界に展開する必要はありません。
②世界規模の流通網を意識する
Netflixがワーナー・ブラザースを買収しました。
NetflixやAmazonプライムビデオ、Disneyプラス、AppleTVなど、全世界で視聴できるOTT(OVER THE TOP)サービスが席巻しています。さらに、YouTube、TikTok、インスタグラムなどのSNSを通じて、世界に映像を発信することもできます。
どれもアメリカ発のサービスであることを踏まえると、流通網を構築しているのは、日本ではなくアメリカだと痛感します。
この事象をポジティブに捉えるならば、「その流通網を利用して、日本で制作された映像コンテンツがそのプラットフォームを通じて世界で配信することができる。」と言えます。
ネガティブに捉えると、「日本発のサービスが世界に通用していない。そして、クオリティの低い作品を流通させてしまうと、クオリティの差が明確になってしまう。価格決定権は流通網側が握ることになってしまう。」と言えます。
今後、自分の作品をどのように世界に流通させていくのが正しいのかを真剣に考える必要があります。OTTなどのおかげで、世界は狭くなっていますが、その分、クオリティなどの差が一目瞭然の時代になりました。
③人材を発掘、育成する
では、そのクオリティの高い映像の制作を誰がやる、誰ができるようになるのか?
この部分が上記の①、②にも関わってくる大切なポイントだと思います。
そして、それがこの大学が果たす役割の一つでもあります。
単なる記憶力などの偏差値ではなく、芸術大学だからこその創造性、人間力を高め、世界に通用する文化創造コンテンツを生み出す人材を育成すること。
大学という場所は、教える側も、学ぶ側もともに育っていくことが理想です。京都芸術大学の存在意義は、このポイントにおいても、大変重要な存在です。
皆さんも日々の生活の中で、日本と世界について思いを馳せながら、コンテンツを制作する楽しさや意義について考えてみて欲しいと思います。
国としての重点産業として、今後無限の可能性が広がっている分野に皆さんは少なからず関与しているのです。
作品を通じて、世界と交流する。
クリエーターにとって、今後の大切なテーマであると思います。
頑張りましょう。
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