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2026年04月17日
【食文化デザインコース】災害時でも「いつも通り」を。管理栄養士が語る、備えの本質
こんにちは、食文化デザイン研究室の麻生桜子です。
12月のオフィスアワーに、管理栄養士の濱田真里さんをお迎えしました。
JDA-DAT(日本栄養士会災害支援チーム)のリーダーとして、熊本地震、西日本豪雨、能登半島地震など、数々の被災地で栄養支援を行ってきた濱田さん。そんな濱田さんの印象的な言葉が、
「災害食は、特別なものではない」
です。
濱田さんは2016年の熊本地震で、初めて被災地支援を経験されました。
倒壊した阿蘇神社、段差ができた道路。活断層が本当に動いたんだと分かる光景だったといいます。


でも、そこで見た食の現実は、もっと衝撃的でした。


「支援物資として届きやすいんです。軽いし、保存が効くし、そのまま食べられるから。でも被災者の方が本当に嬉しいと言うのは、野菜、温かいもの、フルーツなんです」
また、野菜が届いても避難所に調理器具がない場合も。食材はあっても、それを料理に変える手段がない。こうしたミスマッチが、被災地では日常的に起きていたそうです。
災害時の食の課題は、大きく3つあるといいます。
1つ目は、量の問題。
そもそも備蓄をしていない人が多い。全国平均の備蓄率は53.8%。2人に1人は備蓄をしていない計算です。
2つ目は、質の問題。
炭水化物過多、野菜・乳製品・果物の不足。これは実は、30年前の阪神淡路大震災から言われ続けていることだそうです。
3つ目は、要配慮者への対応。
乳児、高齢者、食物アレルギーのある方。こうした方々への配慮が、どうしても後回しになりがちです。

2024年の能登半島地震で、濱田さんは輪島市役所で活動しました。そこで出会ったのが「わじまセントラルキッチン」という取り組みです。
一般ボランティアがなかなか入れなかった輪島で、地元の飲食店オーナーたちが立ち上がりました。お正月用に仕入れていた食材を持ち寄り、炊き出しを開始。被災者には無償、支援者にはワンコインで提供していたそうです。
「支援の形として何がいいか聞いたら、『お金』と言われました。水が通っていないから、毎回使い捨ての容器を買わなければならない。その費用が一番かかると」
この取り組みは後にNHK「プロジェクトX」でも取り上げられています。

災害時の食事で一番大切なのは、いつも通りの生活を災害時にも続けること。
そのために濱田さんが勧めるのが「ローリングストック」です。普段食べているもの、飲み慣れたものを少し多めに買っておく。最低7日分を目安に。
「災害があったら食べようと思って特別なものを置いても、日頃食べ慣れていないものは災害時にも食べられません」
そしてもう一つ、印象的だったのは「選べる」ことの大切さ。
「今日のお昼はこれしかありません…と渡されるのと、A定食とB定食から選べるのでは、気分がまったく違いますよね。同じ種類でもいいから、味の違うものを揃えておいて選べるというのが、結構ストレス緩和になるんです」
備蓄にも、選択肢があるといいのかもしれません。
濱田さんは食物アレルギーと共に生きる会「LFA Japan」のご活動もされています。アレルギーを持つ方からの願いは、こうだそうです。
「炊き出しのときに、使った原材料の表記を貼り出してほしい」
手書きで書く時間はなくても、使った調味料のパッケージの成分表示を切り取って、段ボールにペタペタ貼るだけでいい。それだけで、アレルギーのある人は自分で判断できます。ハサミとセロテープと段ボールがあれば、知ってさえいれば、誰でもできることです。
ただ、注意すべきは食材だけではありません。たとえば、水が出ないときに牛乳パックをまな板代わりに使うことがありますが、重度の乳アレルギーの方には、洗ったパックでもNGな場合があるそうです。使っている食材だけでなく、調理器具にも気を配る必要がある。
知っておくだけで、防げることがあります。

最後に、濱田さんからこのような言葉をいただきました。
「災害時の食事だからって、特別なことは何もないんです。無理に何か新しいことをする必要はありません。できることを続けないと、結局長続きしない。日常の延長で考えていただくのが一番いいと思います」
特別なことをしなくていい。いつもの暮らしの中に、少しだけ備えを組み込む。それが一番続くし、いざというときにも役に立つ。
日本には乾物、発酵食品、保存食といった知恵が脈々と受け継がれてきました。災害食を考えることは、実はこうした日本の食文化を見つめ直すことでもあります。
「選べる」ことがストレス緩和になるという話、「原材料表示を貼り出す」というシンプルな配慮。食の備えとは、文化を絶やさないことなのかもしれません。こうした視点は、食文化をデザインする上でも大切な気づきだと思います。
当日は学生さんからも活発な質問がありました。食を学ぶ者として、いざというときに動ける実践者であってほしい。そう願います。
濱田さん、ありがとうございました!
写真=濱田真里さん提供
食文化デザインコース|学科・コース紹介

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12月のオフィスアワーに、管理栄養士の濱田真里さんをお迎えしました。
JDA-DAT(日本栄養士会災害支援チーム)のリーダーとして、熊本地震、西日本豪雨、能登半島地震など、数々の被災地で栄養支援を行ってきた濱田さん。そんな濱田さんの印象的な言葉が、
「災害食は、特別なものではない」
です。
目次
菓子パンの山、野菜のない避難所
濱田さんは2016年の熊本地震で、初めて被災地支援を経験されました。
倒壊した阿蘇神社、段差ができた道路。活断層が本当に動いたんだと分かる光景だったといいます。


2016年熊本地震
でも、そこで見た食の現実は、もっと衝撃的でした。
どこの避難所に行っても、菓子パンが山積み。でも野菜がない。


避難所に届いた支援物資(食料)
「支援物資として届きやすいんです。軽いし、保存が効くし、そのまま食べられるから。でも被災者の方が本当に嬉しいと言うのは、野菜、温かいもの、フルーツなんです」
また、野菜が届いても避難所に調理器具がない場合も。食材はあっても、それを料理に変える手段がない。こうしたミスマッチが、被災地では日常的に起きていたそうです。
30年変わらない課題
災害時の食の課題は、大きく3つあるといいます。
1つ目は、量の問題。
そもそも備蓄をしていない人が多い。全国平均の備蓄率は53.8%。2人に1人は備蓄をしていない計算です。
2つ目は、質の問題。
炭水化物過多、野菜・乳製品・果物の不足。これは実は、30年前の阪神淡路大震災から言われ続けていることだそうです。
3つ目は、要配慮者への対応。
乳児、高齢者、食物アレルギーのある方。こうした方々への配慮が、どうしても後回しになりがちです。

輪島で見つけた希望
2024年の能登半島地震で、濱田さんは輪島市役所で活動しました。そこで出会ったのが「わじまセントラルキッチン」という取り組みです。
一般ボランティアがなかなか入れなかった輪島で、地元の飲食店オーナーたちが立ち上がりました。お正月用に仕入れていた食材を持ち寄り、炊き出しを開始。被災者には無償、支援者にはワンコインで提供していたそうです。
「支援の形として何がいいか聞いたら、『お金』と言われました。水が通っていないから、毎回使い捨ての容器を買わなければならない。その費用が一番かかると」この取り組みは後にNHK「プロジェクトX」でも取り上げられています。

ローリングストックと「選べる」こと
災害時の食事で一番大切なのは、いつも通りの生活を災害時にも続けること。
そのために濱田さんが勧めるのが「ローリングストック」です。普段食べているもの、飲み慣れたものを少し多めに買っておく。最低7日分を目安に。
「災害があったら食べようと思って特別なものを置いても、日頃食べ慣れていないものは災害時にも食べられません」
そしてもう一つ、印象的だったのは「選べる」ことの大切さ。
「今日のお昼はこれしかありません…と渡されるのと、A定食とB定食から選べるのでは、気分がまったく違いますよね。同じ種類でもいいから、味の違うものを揃えておいて選べるというのが、結構ストレス緩和になるんです」
備蓄にも、選択肢があるといいのかもしれません。
炊き出しでできる、ひとつの配慮
濱田さんは食物アレルギーと共に生きる会「LFA Japan」のご活動もされています。アレルギーを持つ方からの願いは、こうだそうです。
「炊き出しのときに、使った原材料の表記を貼り出してほしい」
手書きで書く時間はなくても、使った調味料のパッケージの成分表示を切り取って、段ボールにペタペタ貼るだけでいい。それだけで、アレルギーのある人は自分で判断できます。ハサミとセロテープと段ボールがあれば、知ってさえいれば、誰でもできることです。
ただ、注意すべきは食材だけではありません。たとえば、水が出ないときに牛乳パックをまな板代わりに使うことがありますが、重度の乳アレルギーの方には、洗ったパックでもNGな場合があるそうです。使っている食材だけでなく、調理器具にも気を配る必要がある。
知っておくだけで、防げることがあります。

炊き出しの原材料表示
「日常の延長」で考える
最後に、濱田さんからこのような言葉をいただきました。
「災害時の食事だからって、特別なことは何もないんです。無理に何か新しいことをする必要はありません。できることを続けないと、結局長続きしない。日常の延長で考えていただくのが一番いいと思います」
特別なことをしなくていい。いつもの暮らしの中に、少しだけ備えを組み込む。それが一番続くし、いざというときにも役に立つ。
日本には乾物、発酵食品、保存食といった知恵が脈々と受け継がれてきました。災害食を考えることは、実はこうした日本の食文化を見つめ直すことでもあります。
「選べる」ことがストレス緩和になるという話、「原材料表示を貼り出す」というシンプルな配慮。食の備えとは、文化を絶やさないことなのかもしれません。こうした視点は、食文化をデザインする上でも大切な気づきだと思います。当日は学生さんからも活発な質問がありました。食を学ぶ者として、いざというときに動ける実践者であってほしい。そう願います。
濱田さん、ありがとうございました!
写真=濱田真里さん提供
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