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ランドスケープデザインコース

2021年12月03日

【ランドスケープデザインコース】日本庭園の美と作法を体感し、空間演出の基本を学ぶ

こんにちは。ランドスケープデザインコース教員の稲田です。
今回は当コースのカリキュラムの特色のひとつであるスクーリング科目「庭園実習」をご紹介をします。



本学の通信教育では、自宅で各自のペースで取り組む「テキスト科目」と、土日を利用してキャンパスに集まり実地で学ぶ「スクーリング科目」という、2つの科目の組み合わせて学んでいます。


今回ご紹介するのは一年次の最初に行う「庭園実習」のうち、京都キャンパスで行われたスクーリングの様子です。

このスクーリングは「管理から日本庭園を学ぶ」ことを目的に、事前課題と2日間の実習で構成されています。
(東京キャンパスでも、別の実習地で同じテーマのスクーリングを行っています。)




私たちはランドスケープデザインの学びの中でも、伝統的な日本庭園から得られる知見がとくに重要だと考えています。

その庭園が生まれた地域の気候や植生や風土、社会制度や宗教観などの時代背景、住宅・別荘や寺社仏閣など施設の用途との関係などを実地で学ぶことで、より深く理解することができます。そして、そこで得られた知見を現代のランドスケープデザインに活かしていこうと考えています。



1日目は、京都市右京区の嵐山にほど近い地に圃場を構える”池内善兵衛園”での実習です。京都の中でも歴史のある庭園材料生産・卸店で、庭園用に生産・管理された樹木や様々な時代の石像美術品を扱っています。



その広い圃場を使って、多種多様な植物や石像美術品を実際に見て回りながら、庭園材料としての植物の特徴や生産・管理する際の注意点などを学びます。



その後、手ほどきを受けながら実際に樹木を掘り上げ、移植・植え付け作業を行ったり、高木に登って整枝剪定を体験します。






2日目は、京都市左京区にある南禅寺の寺域内にある非公開庭園を利用した実習です。

実習地によっては一般のお客さまがいる場合もあるので、揃いの実習服と地下足袋を着用して作業します。

庭園管理で職人さんが頻繁に使う「手箒(てぼうき)」とよばれる短い竹箒は、入学当初のスクーリングで職人さんに習って自作したものを使用しています。

まずは講師の解説で庭園内をじっくりと見て回りながら、どこをどう管理したらより良くなるか?議論をします。それぞれの考えを元にプランをたて、それを実際の庭園のなかで実施していきます。

自分が考えた管理プランを実施することで、空間がどのように変化するか?
日頃この庭園を管理している庭師の方々から手ほどきを受け、目と手と身体を使って体感していきます。


植物単体の樹形を整えるだけではなく、その場の空間全体を考えながら管理のプランを考えることを目的としています。
「作業をして、離れて眺める」を繰り返すことで、単なる植栽管理の実習ではなくランドスケープデザインのための庭園実習となります。


最後は思い思いの場所でスケッチをします。
朝来た時と、一日手をかけて管理をした後では、同じお庭でも見えてくるものがまったく異なります。実習を通してお庭への愛着と理解が深まったところで、じっくりとスケッチをしていきます。

スケッチは目で見たり写真を撮ったりする以上に対象を深く観察をすることができる、デザイナーにとってはとても大切な技術です。1年のはじめにデッサンの基礎から学び、ことあるごとにスケッチを重ねるので、徐々にではありますが確実によいスケッチを描けるようになっていきます。


実習後はキャンパスに移動し、座学を行いました。
実習した庭園のある東山の地形が、数億年かけて出来上がってきた地質学的な歴史を理解することからはじめ、庭園が作庭された当初の史資料を紐解き、そこから解釈して現代の管理手法を考えるプロセスを学びます。

この2日間のスクーリングを通して、庭園管理という作業はとてもクリエイティブなものであること、
管理はまさにランドスケープデザインに通じるということを、参加者それぞれの感性で感じ取っていただけたと思います。





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