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和の伝統文化コース

2022年03月01日

【和の伝統文化コース】伝統文化を学ぶ意味とは?

みなさんこんにちは、非常勤講師の黒河星子です。
本日は、伝統文化を学ぶ意味について、少し違った角度からお話ししたいと思います。

★★★本ブログの末尾に、2021年度までの卒業生の研究事例を掲載しています★★★
★★★ブログにあわせて、文化それ自体に焦点を当てた研究をピックアップ!★★★

和の伝統文化コースは、
「伝統文化」を学問の対象として体系的に学ぶことのできる珍しいコースです。


そもそも、「伝統文化」を学術的に探究するとは
どういうことなのでしょうか。


まず、伝統文化と呼ばれる事物の歴史的成り立ち、
文化的・思想的背景などを解明することが挙げられるでしょう。

それと同時に、伝統文化の現代的意義や今後のあり方、
さらにはそもそも「伝統」とは何なのかという枠組みを再考したり定義するということも、
伝統文化研究の重要な側面でしょう。



皆さんは、「創られた伝統」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。


今ではある程度定着している概念ですが、
この言葉が最初に用いられたのは1983年に出版されたエリック・ホブズボウムの著書、
Invention of Traditionの和訳本『創られた伝統』(前川啓二・梶原景昭他訳、紀伊國屋書店、1992年)
においてのことです。

原書タイトルの”invention of tradition”は、
直訳すると「伝統の創出」となるでしょう。

ホブズボウムは同書で、伝統とは古来から守られ、
忠実に受け継がれてきたものであるという既成概念から離れ、
多くの「伝統」はじつは近代に「創出」されたものであるという説を提唱したのです。

もう少し詳しくいうなら、
「伝統」の中にはごく一部の地域や階層の慣習であったものを改変して正統性を付与したり、
そもそも歴史の浅い慣習を長い歴史があるかのように主張しているものがあるということです。
ひとことに「創られた伝統」といってもそこには性格の違いがありますが、
いずれにしても、何らかの人工的な作為が働いているということが言えるでしょう。

 

このような観点からすると、今日「伝統文化」と呼ばれているものすべてが、
程度の差はあれ何らかの意図によって選択され、「改良」され、
保護されてきたと言うことも出来ます。

‟文化の真正性という価値観に立てば、
これは一見ネガティブなことのように思えるかもしれません。
ですが、本当にそうなのでしょうか。

伝統とは、常に現代的な価値から評価されるものであって、
時代が変わればその意義も変わってくるものであり、
だからこそ未来への可能性を持っているという見方もできるのではないかと思います。

 

伝統文化の現代的意義を考える上でひとつの重要な指標として、
グローバリズムとナショナリズムの葛藤という観点があります。

現代において、文化とは国境を越えて受容されてこそ価値があるものとなりつつあります。
伝統文化の存続は、長期的には国境を越えた人類の共通財産となりうるかどうかにかかっていると言えるのかもしれません。

そういった中で、本来の形を守るとか、
正統性を主張するという努力もまた必要になってくるでしょう。

しかし…


そもそも文化とは、その国だけのものなのでしょうか。


たとえばインドの伝統文化である「ヨーガ」は、
いまや健康法として普及しています。
その中で本来の修養的・精神的側面が切り離され、
単なるエクササイズとして受容されているケースも少なくないでしょう。
そこで、精神性と切り離されたヨーガはヨーガではないと断じたり、
インドが国家として正統性を主張することにどれだけの意味があるのでしょうか。



日本文化の多くも、国境を越えた交流によって育まれてきました。

茶文化などはその典型ですが、このような文化は、
中国や韓国などの周辺諸国と比較することでより理解が深まります。
そこで出てきた差異を「日本らしさ」と定義することもできますが
東アジア全体をひとつの文化圏として捉えるなら、
そのような視点もまた固定的観念に過ぎないということもできるかもしれません。

このように、伝統文化を学問するということは、
これからの世界について考えたり
人類の普遍的価値について考えることでもあるのかもしれません。

皆さんもぜひ、和の伝統文化コースでの学びを通して、
伝統文化のもつ広い意味について探求していただけたらと思っています。

★★★文化とは何か?にせまる、和の伝統文化コース卒業生の卒業研究事例を掲載★★★

  • 『異文化受容過程にみる「間」の働き・機能に関する一考察』

  • 『「たしなみ」についての考察』

  • 『茶道具が博物館資料になるまで』

  • 『落語を通して考える文化の継承』


※論題を要約しており、実際の論文題目とは異なります。

 

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