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芸術教養学科

2022年08月05日

【芸術教養学科】遊び心とまじめさ

みなさん、こんにちは。芸術教養学科の宮です。

今年の4月に着任して、はやくも4ヶ月が経ちました。まさに光陰矢のごとし。4月に入学されて、同じように感じていらっしゃる方も少なくないのではないでしょうか。落語家の古今亭志ん朝が、マクラ(マクラというのは落語の本題に入る前の雑談のことです)で、ときおり話していたこんな言葉が、ふと頭をよぎります。
昔っから「光陰矢のごとし」なんという言葉がありまして、これはどういう意味かというと、光陰というものは、あぁ矢のごとしだなぁ、という意味だそうですな。

それにしてもこのマクラ、文字にすると、ひとつも面白くないですね。それがひとたび志ん朝という落語家の口から発せられると、えもいわれぬ可笑しみが醸し出されるのですから、芸というものの凄さを感じずにはいられません。

さて、閑話休題。今回は(といってもこのブログに文章を書くのは初めてなのですが)、光陰矢のごとく過ぎ去っていったこの4ヶ月を振り返って、私が芸術教養学科について、どのような思いを抱いたのかを、とりとめもなく綴ってみたいと思います。どうぞ、最後までお付き合いの程、よろしくお願い申し上げます。



4月3日、入学式のあとに行われた新入生ガイダンスが、学生のみなさんと接する最初の機会となりました。そこで、まず驚かされたのは、こちらが誘導するまでもなく、教室の座席が前から順々に埋まっていったことです。これまで私が教えていた大学では、学生が前の方や真ん中に座りたがらないので、わざわざ「ここからここまでに座ってください」と指定することも珍しくありませんでした。しかも、みなさんのお顔を拝見していると、緊張した面持ちのなかにも、ウキウキ、ワクワクされているのが、手にとるようにわかるのです。素直に「ああ、いいなあ」と思わずにはいられませんでした。

ワークショップとガイダンスをあわせて、3時間半にも及ぶ長丁場でしたが、その前向きで、積極的な姿勢に、かえってこちらが勇気づけられたことを、ありありと思い出します。「こんなにも学ぶことに熱意を持っておられるんだなあ」と、照れくさいので、あまり大きな声では言えませんが、嬉しくなってしまいました。



次に、みなさんの熱気に触れることになったのは、春学期の「芸術教養入門」のレポートを採点・添削したときでした。

レポートの課題内容は、大学入学の目的や芸術教養学科で学びたいことなどを、規定の字数でまとめるというものです。生い立ちや経歴は当然ですが、入学の目的や学びたいことも十人十色、いや、拝読したレポートの数からすれば百人百様で、その多彩さには仰天させられました。が、なによりも際立っていたのは、「芸術の歴史を学びたい」「デザイン思考について学びたい」「学位を取得したい」「芸術及びデザインへの造詣を深めたい」「大学で得たものを社会に還元したい」「物事を深く考察・理解する力をつけたい」「学んだことを仕事に役立てたい」「暮らしの中に芸術を生かす方法を模索したい」といった、その思いの強さにほかなりません。

もとより、レポートですから、その評価基準に沿って点数をつけなければなりません。ただ、その評価の如何に関わらず、文章の熱量は必ず読み手にも伝わります。それをうまく表現できているか、できていないかの違いはありますが、すべてのレポートから学ぶことへの強い意気込みを感じ取ることができたのは、私にとっても大きな喜びでした。

綺麗事を言っているように聞こえるかも知れませんが、そうではありません。講談界で初めて人間国宝となった一龍斎貞水は、よく次のようなことを述べていました。
前座が一所懸命にやる修羅場には敵わない。

修羅場というのは、軍談における合戦の場面のことで、朗々とした独特の調子で読み上げられます。入門して最初に習うのが「三方ヶ原軍記」、修羅場を読むことで、声を鍛えるとともに正しい発声や講談のリズムを身につけます。つまり、貞水が言いたかったことは、どんなキャリアや技術よりも、一所懸命さや真剣さこそが人の心を動かすということなのでしょう。

もっとも、数年間にわたる学生生活ですから、どこかで挫けそうになったり、嫌になったりすることもあると思います。一所懸命になれない、真剣さが続かない、そんなときには、ぜひ入学した頃のことや、ガイダンスのこと、芸術教養入門で書いたレポートのことを思い出してみてください。初心に戻ることで、見えてくるものが、きっとある筈です。

ずいぶん呑気なことを書いているようですが、個人的には、学問に必要なのは遊び心とまじめさだと思っています。遊びと言いながらまじめとは矛盾するようですが、遊び心のない学問ほど退屈なものはありませんし、まじめさのない学問ほどつまらないものはありません。学問をまじめにやっていると傍からは遊んでいるように見える、というのが、私の理想です。とはいえ、理想とはなかなか手が届かないからこそ理想なわけで、私の場合は遊び心が人一倍旺盛なのか、「遊んでばかりいるな!」と呆れられることも少なくないのですが……。



それでは最後に、私が普段仕事をしている瓜生山キャンパスの「陽陽館」をご紹介しましょう。まず「至誠館」にあるエレベーターで屋上まで上がってください。それから松麟館を抜けて、20段ほどの階段を登り、さらに山道を南東へ50メートルほど進むと、目的地の「陽陽館」が姿をあらわします。のどかで、空気が澄んでいて、部屋の窓からは「大文字」がはっきりと見えます。この陽陽館で、この夏の採点に励みたいと思います。ただ、たまに「猿が出没しました。ご注意ください」と言う注意喚起が回ってくるのですが……、まぁ、猿なら注意をすれば大丈夫でしょう。猿ですよ。熊じゃないですもんね。

【2022年10月入学】
芸術教養学科(手のひら芸大)のみ、10月入学を募集します。(芸術教養学科以外のコースの入学は春入学のみです。)

■出願期間(Web出願のみ)
2022年8月25日(木)10:00~10月8日(土)17:00
■入学のしかた
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/admission/howto/

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