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和の伝統文化コース

2022年10月04日

【和の伝統文化コース】目に映らぬ香りを遠隔授業の手元で聞く

みなさん、こんにちは。和の伝統文化コースの中村です。いよいよ空気も澄んで、みなさん文化の秋を満喫されていることでしょう。

さて本コースの特徴の一つとして、暮らしに息づく様々な生活文化を学べることがあげられます。その中から今回は、香の文化と「伝統文化実践E 室礼と道具」という遠隔授業についてお話ししましょう。

🔗和の伝統文化コース|学科・コース紹介

日本で香を炊くことは、一体いつから始まったのでしょうか。文献における香木の初出は『日本書紀』推古3年(595)卯月に、淡路島への漂着の記事とされています。この渡来の文化は仏教とも相まって、日本に根付いてゆきました。

やがて貴族社会では、香木や各種香料の粉末を、甘葛や蜜などで練って丸薬状にした「薫物(たきもの)」が用いられるようになります。



さらに中世になると武家の間にも、薫物や香木、香薬が珍重されます。こうして香を炊くことは宮中だけでなく、公武や連歌師、僧侶らの寄合が流行する中で、香会も催されるようになります。香会では複数の香木を、和歌や物語の主題によって組んで聞き当てる「組香」などが行われ、「十炷香(じしゅこう)」という方法が完成します。



その他にも、平安時代以来の二種の香を聞き比べて優劣を決める「名香合(めいこうあわせ)」も行われ、その判定には文学的な香銘も重視されました。

そして16世紀に「源氏香」などの新たな組香の方法が考案されます。この源氏物語を題材とした「源氏香図(げんじこうのず)」は、今も衣食住に渡る様々な工芸品の意匠に取り入れられ、私達の暮らしに風雅な情趣を添えてくれます。



そもそも香りは、色や形を見たり、音を聴いたり、感触を確かめたりできません。
しかしそれ故に、文学との自在な結びつきによる、イメージの展開が可能なのでしょう。
そうした香道具には、和歌や物語から取材した花鳥風月などの意匠を精緻に施したものが多く制作されました。
やがて優美な香道具は、国内だけでなくマリー・アントワネットのコレクションをはじめ、明治期にはあまたの香道具が海外の王室や、新興ブルジョワジーに観賞用の美術品として収集されました。

さて、伝統文化実践「室礼と道具」という遠隔授業では、山田英夫先生の香木の講義に続き、教材の香道具と香木・香料のセットを用い、香木を炊いて聞く「聞香」や、香を調合する「調香」のワークショップを行います。

まず聞香の実践では、先生の指導により、皆さん自ら香炉の灰に炭団を入れて、灰押で押した聞香炉で香木を聞きます。





続いて調香では、練香・線香・匂袋の制作をします。そこでは皆さんそれぞれが調合した、無段階に移り変わる香りの奥深さに出会うことでしょう。調香ではご自身の好みの香りを探り、それに相応しい「銘」をイメージされるのも一案かもしれません。言葉と繋がることで、香りの存在と芸道の世界を、より実感されるのではないでしょうか。こうしたひと時の視覚化しがたい繊細な文化だからこそ、遠隔地それぞれのリアルな体験を、この授業の大きな目的とします。

このように本コースでは、様々な伝統文化の講義・対面や遠隔によるワークショップ・現地見学とフィールドワークなど、多様な授業方法を組み合わせて学んでゆきます。

今回は冴えた空気の秋にピッタリな香の文化と、その一端を体験する遠隔授業のご紹介でした。

🔗和の伝統文化コース|学科・コース紹介

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