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日本画コース

2022年12月05日

【日本画コース】制作の豆知識-パネルのアク対策①

こんにちは。日本画コース講師の佐竹龍蔵です。
写真は皆さんおなじみの「パネル」です。

パネルはキャンバスの木枠と並んで絵画制作に欠かせない支持体の一つで、日本画コースでも作品制作をするほとんどの科目で使用しています。今回はこのパネルに関する少し役に立つお話です。



パネルのアクについて

画材店で売られている一般的な木製パネルは、上の写真のように角材を組み合わせた木枠に、ラワンベニヤ板が貼られたものだと思います。

画用紙や和紙を水張りしたり板に直接絵を描いたり手軽に使えるものですが、ラワンベニヤ板からはアクが染み出してくるということをご存じでしょうか。水張りした紙をパネルから剥がすと気がつくと思うのですが、ラワンベニヤに直接紙が触れているとアクが染み付いて下の写真のような状態になってしまいます。

少しわかりにくいですが、左がアクが着いた画用紙。右が元の画用紙。



アクがついた画用紙を拡大するとこのような状態です。                                                               茶色いシミがラワンベニヤから出たアクです。



ラワンベニヤから出るアクは紙の保存上も良くないですし、薄い紙であれば紙の表面にまでアクが染みて作品の見た目にも悪影響を及ぼします。

作品完成後すぐにパネルから紙を剥がす場合など、パネルと紙が触れる期間が短ければそこまで問題はありませんが、長期間水張りした状態で保管や展示をする場合や作品を販売して自分の管理から離れる場合は、作品が劣化しないようにアク対策をしておくことをおすすめします。

捨て貼り

アク対策にはいくつか方法がありますが、まずは「捨て貼り(すてばり)」と呼ばれる方法をご紹介します。

捨て貼りは、パネルと絵を描く本紙の間に1枚別の紙を挟むことで、アクが直接本紙につくのを防ぐ方法です。

●準備するもの 

  • パネル                                   

  • 捨て貼り用の紙 (パネルより一回り大きいサイズ)

  • 刷毛 (糊刷毛がベストですがアクリル絵具用やペンキ用などでも構いません)

  • でんぷん糊 (フエキ家庭のり・ヤマト糊など)



捨て貼り用の紙は和紙でも洋紙でも構いませんが、和紙を使う場合はある程度厚さのあるドーサ引きをした紙を使います。今回使用した紙は、僕が普段から捨て貼り用に使っている「新鳥の子紙」です。



① 糊の濃度調整                                                              写真では少しわかりにくいですが、2種類の濃さの糊を用意します。

ほんの少し水を加えた硬めの糊。



水を多めに加えた薄めの糊。



② 糊を紙の裏面に塗る

まずは硬めの糊を紙の裏面の、ピンクで示したあたり(紙の縁から3〜4cm程度まで)                       に塗ります。糊が溜まって盛り上がらないように延ばして塗ります。



続けて薄めの糊をピンクのあたりに塗ります。                                                                             塗り残しがないように先に塗った糊と少しだけ重なるようにします。                                         糊が溜まらないように延ばして塗ります。



紙全体に糊が塗れました。



③ パネルに紙を貼る

糊が塗れたらそのままパネルの表面を貼り付けます。



パネルを返して、空気を抜きながらしっかり貼り付けます。



はみ出た部分は後で切り取るため、折り目をつけておきます。                                                    パネル側面のアクも気になる場合はそのまま紙を側面にまで貼りつけます。



糊が完全に乾いた後で余分な紙をカッターで切ります。



捨て貼りの完成

捨て貼りができたら本紙の水張りをします。





◇余談◇

以上が、僕が学生の頃に習ったスタンダードな方法なのですが、僕が普段捨て貼りをする際は大きい紙に糊を塗るのが大変なので、パネルの方に糊を塗っています。

パネルに糊を塗る場合は、糊の濃度は一種類だけにしています。                                                 刷毛で塗り延ばしやすくて乾燥後に紙が剥がれない程度の濃さです。                                         パネル全体に糊が塗れたら紙をパネルの上に乗せて貼りつけます。                                            紙を貼ってからのやり方は先に紹介した方法と同じです。



今回紹介した捨て貼りは、和紙をパネルに水張りして制作する日本画とも相性がいい方法だと思います。

パネルのアク対策は様々な方法があるので、次回は捨て貼り以外のアク対策の方法や、アク対策が不要なパネルなども紹介します。

 

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