食文化デザインコース
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2024年07月25日
【食文化デザインコース】「おいしい」は、科学でひろがる
こんにちは、食文化デザイン研究室の麻生桜子です。
「おいしい」を科学の視点から考えることについて、1年次の基礎科目「おいしさの科学」を担当いただいている石川伸一先生にお話を伺ってきました。
食文化デザインコースの学びは、食を文化芸術と捉え、幅広い知識と感性を磨くことを大切にしています。芸術・科学、文化を基盤に「ライフデザイン」「ビジネスデザイン」「エクスペリエンスデザイン」の3領域を横断しながら、新たな価値に気づき、暮らしや社会に生かす力を育むことを目的としています。
「なぜ食文化デザインコースで科学を学ぶのでしょうか?」という声もよくいただきますが、「おいしい」を科学の視点から考えることの大切さについて、石川先生のお話を通じて触れていただけたらと思います。
宮城大学食産業学群 教授
石川 伸一 (いしかわ しんいち)
東北大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員、宮城大学准教授を経て現職。博士(農学)。専門は分子調理学。主な研究テーマは食品・料理構造からのおいしさの「可視化」。関心は「サイエンス×アート×デザイン×エンジニアリング」を組み合わせておいしさの未来を考えること。著書に『絵巻でひろがる食品学』(化学同人)、『分子調理の日本食』(オライリー・ジャパン)、『「食べること」の進化史』(光文社)、『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)など。
-石川先生が「おいしい」を研究するようになったきっかけを教えてください。
石川 私は小さい頃、家が貧乏で、姉と一個の卵を分け合って卵かけご飯を食べていました。姉は純粋無垢だった私に、きゅるきゅるとしたあまりおいしくない白身をかけて、自分はおいしい黄身の部分を多く食べていました。私が卵を研究対象としていたとき、姉から「小さい頃においしい卵かけご飯を食べられなかったから、潜在的に卵に興味を持ったんだろうね」と言われたことがあります。
当時、私は食の健康機能を研究していたのですが、東日本大震災で自分自身が被災し、流通も止まり、食べものがなくなってしまったときに、一番欲していたのは豪華な料理ではなく、普段食べているあたたかい料理でした。そこで「おいしい」は食の根幹だと感じ、食の健康機能よりも「おいしい」の研究をするために調理学を中心に移しました。
-「おいしいを科学的な視点から考える」ということについて教えてください。
石川 調理学は料理のメカニズムを科学的に理解する学問です。日常の料理では、経験や直感である程度おいしいものをつくることができます。しかし、これまでにない新しい料理をつくるには、科学的な理解が不可欠です。たとえば、鍋の中でどのような現象が起こっているのか、材料がどのように変化するのかを理解することで、よりおいしい料理をつくり出すことができます。
また、「おいしい」は「美味しい」と書きますが、「美しい」と感じることのように主観なものでもあります。食べる人の経験や食習慣、周りの環境などが大きく影響します。たとえば、同じ料理でも、一緒に食べる人や食べる場所によって感じるおいしさが変わります。私たちは食べもののシグナルを脳に伝えることではじめて「おいしい」と感じるため、「おいしい」をつくるためには単に食材や調理法だけでなく、人がどう感じるかを理解することが重要です。
-石川先生には「おいしさの科学」だけでなく、3年次科目の「食の未来ビジョン」で「食はどのように進化するのか」の講義もしていただいています。おいしさ研究者として、食の未来とどのように向き合われているのでしょうか。
石川 分子調理学の研究をしていますが、「食べること」がどう変わってきたのか、どう変わっていくのか、その「進化」にとても興味があります。小さい頃からSFのような未来設定の漫画やアニメが好きでした。そして「得意科目は給食」だったほど、食べることが好きで、必然的に「食の未来」に執着する人間になっていました。
いま、新しいテクノロジーがどんどん食の世界に革新をもたらしています。私は食品・フードテック産業と協力しながら科学の視点からサポートし、新しい食の可能性を探究しています。
また、培養肉などの新しい食品技術が普及するなかで、新しい食が消費者にどのように受け止められるのか、受け止められないのかについても関心を持っています。未来の食への期待と不安が交差するなか、私たちが何を選ぶのかはその人の価値観によるものです。食べものを選ぶときの価値観が、栄養がある、おいしい、健康的である、安い、安全であるだけでなく、懐かしい、環境に良い、倫理的であるなど多様化しています。この食の未来の多様化に関心を持っています。
-石川先生が食のデザインにおいて、大切にしていることを教えてください。
石川 食のデザインは、いろいろな人と交わらないといけません。よりよい食をつくる、食環境を提案することはひとりではできないことなので、私の場合はこもるのが好きですが実験室を出て解放するようにしています。いろいろな人と話すのはとてもおもしろいですよ。
-最後に、メッセージをお願いします。
「おいしい」は幸せに繋がっている概念なので、「人を喜ばせたい、幸せになってもらいたい」ということに、「おいしい」を科学的な視点で考えることを役立てて欲しいです。
…石川先生のお城(研究室)は、たくさんの食に関する書籍や、食べものでできた食品サンプルなど、今までに見たことのない食に溢れ、心から楽しんで「おいしさ」研究に取り組まれていることが、ひしひしと伝わってきます。石川先生のやわらかい雰囲気と相まって、うっかり住み着きそうになる場所でした。
「おいしさの科学」は食文化デザインを学ぶうえで重要な基礎力です。科学的な視点から「おいしい」を学んで身につけると、ロジカルに考える力やデザインするための地頭を鍛えることができます。科学のまなざしを知ると、見ていた食の世界の解像度があがり、世界もぐっとひろがります。
「科学は苦手…」という方も、石川先生のあたたかい講義で自由自在に食をつくる力と食べる力を身につけることにチャレンジしてみてはいかがでしょう。
「おいしさの科学」や他の食文化デザインコースの学習内容について、もっと詳しく知りたい方は、食文化デザインコースのシラバスもぜひご覧ください!
「おいしい」を科学の視点から考えることについて、1年次の基礎科目「おいしさの科学」を担当いただいている石川伸一先生にお話を伺ってきました。
食文化デザインコースの学びは、食を文化芸術と捉え、幅広い知識と感性を磨くことを大切にしています。芸術・科学、文化を基盤に「ライフデザイン」「ビジネスデザイン」「エクスペリエンスデザイン」の3領域を横断しながら、新たな価値に気づき、暮らしや社会に生かす力を育むことを目的としています。
「なぜ食文化デザインコースで科学を学ぶのでしょうか?」という声もよくいただきますが、「おいしい」を科学の視点から考えることの大切さについて、石川先生のお話を通じて触れていただけたらと思います。
宮城大学食産業学群 教授
石川 伸一 (いしかわ しんいち)
東北大学大学院農学研究科修了。日本学術振興会特別研究員、北里大学助手・講師、カナダ・ゲルフ大学客員研究員、宮城大学准教授を経て現職。博士(農学)。専門は分子調理学。主な研究テーマは食品・料理構造からのおいしさの「可視化」。関心は「サイエンス×アート×デザイン×エンジニアリング」を組み合わせておいしさの未来を考えること。著書に『絵巻でひろがる食品学』(化学同人)、『分子調理の日本食』(オライリー・ジャパン)、『「食べること」の進化史』(光文社)、『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)など。
-石川先生が「おいしい」を研究するようになったきっかけを教えてください。
石川 私は小さい頃、家が貧乏で、姉と一個の卵を分け合って卵かけご飯を食べていました。姉は純粋無垢だった私に、きゅるきゅるとしたあまりおいしくない白身をかけて、自分はおいしい黄身の部分を多く食べていました。私が卵を研究対象としていたとき、姉から「小さい頃においしい卵かけご飯を食べられなかったから、潜在的に卵に興味を持ったんだろうね」と言われたことがあります。
当時、私は食の健康機能を研究していたのですが、東日本大震災で自分自身が被災し、流通も止まり、食べものがなくなってしまったときに、一番欲していたのは豪華な料理ではなく、普段食べているあたたかい料理でした。そこで「おいしい」は食の根幹だと感じ、食の健康機能よりも「おいしい」の研究をするために調理学を中心に移しました。
-「おいしいを科学的な視点から考える」ということについて教えてください。
石川 調理学は料理のメカニズムを科学的に理解する学問です。日常の料理では、経験や直感である程度おいしいものをつくることができます。しかし、これまでにない新しい料理をつくるには、科学的な理解が不可欠です。たとえば、鍋の中でどのような現象が起こっているのか、材料がどのように変化するのかを理解することで、よりおいしい料理をつくり出すことができます。
また、「おいしい」は「美味しい」と書きますが、「美しい」と感じることのように主観なものでもあります。食べる人の経験や食習慣、周りの環境などが大きく影響します。たとえば、同じ料理でも、一緒に食べる人や食べる場所によって感じるおいしさが変わります。私たちは食べもののシグナルを脳に伝えることではじめて「おいしい」と感じるため、「おいしい」をつくるためには単に食材や調理法だけでなく、人がどう感じるかを理解することが重要です。
-石川先生には「おいしさの科学」だけでなく、3年次科目の「食の未来ビジョン」で「食はどのように進化するのか」の講義もしていただいています。おいしさ研究者として、食の未来とどのように向き合われているのでしょうか。
石川 分子調理学の研究をしていますが、「食べること」がどう変わってきたのか、どう変わっていくのか、その「進化」にとても興味があります。小さい頃からSFのような未来設定の漫画やアニメが好きでした。そして「得意科目は給食」だったほど、食べることが好きで、必然的に「食の未来」に執着する人間になっていました。
いま、新しいテクノロジーがどんどん食の世界に革新をもたらしています。私は食品・フードテック産業と協力しながら科学の視点からサポートし、新しい食の可能性を探究しています。
また、培養肉などの新しい食品技術が普及するなかで、新しい食が消費者にどのように受け止められるのか、受け止められないのかについても関心を持っています。未来の食への期待と不安が交差するなか、私たちが何を選ぶのかはその人の価値観によるものです。食べものを選ぶときの価値観が、栄養がある、おいしい、健康的である、安い、安全であるだけでなく、懐かしい、環境に良い、倫理的であるなど多様化しています。この食の未来の多様化に関心を持っています。
-石川先生が食のデザインにおいて、大切にしていることを教えてください。
石川 食のデザインは、いろいろな人と交わらないといけません。よりよい食をつくる、食環境を提案することはひとりではできないことなので、私の場合はこもるのが好きですが実験室を出て解放するようにしています。いろいろな人と話すのはとてもおもしろいですよ。
-最後に、メッセージをお願いします。
「おいしい」は幸せに繋がっている概念なので、「人を喜ばせたい、幸せになってもらいたい」ということに、「おいしい」を科学的な視点で考えることを役立てて欲しいです。
…石川先生のお城(研究室)は、たくさんの食に関する書籍や、食べものでできた食品サンプルなど、今までに見たことのない食に溢れ、心から楽しんで「おいしさ」研究に取り組まれていることが、ひしひしと伝わってきます。石川先生のやわらかい雰囲気と相まって、うっかり住み着きそうになる場所でした。
「おいしさの科学」は食文化デザインを学ぶうえで重要な基礎力です。科学的な視点から「おいしい」を学んで身につけると、ロジカルに考える力やデザインするための地頭を鍛えることができます。科学のまなざしを知ると、見ていた食の世界の解像度があがり、世界もぐっとひろがります。
「科学は苦手…」という方も、石川先生のあたたかい講義で自由自在に食をつくる力と食べる力を身につけることにチャレンジしてみてはいかがでしょう。
「おいしさの科学」や他の食文化デザインコースの学習内容について、もっと詳しく知りたい方は、食文化デザインコースのシラバスもぜひご覧ください!
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