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2024年11月01日
【建築デザインコース】学びの定点としての京都
こんにちは、建築デザインコースの山口です。
建築を学ぶ環境として京都という場所を選ぶのは、とても良い選択だなと思います。私自身、普段は東京で生活をしていますが、京都を訪れる度に実に多くの学びを得ています。そして面白いことにその学びは訪れる度に変化します。京都という都市や建築はもう何百年も変わらずにそこに在り続けている訳ですから、私の見る視点が変わっていることに気づくのです。日本では京都ほどの時間を蓄積した不変(私の時間的変化と比較してそう思われる)の都市も、何度も訪れる都市もそうはないので、私にとっての京都は自身の成長を観測する定点のような場所となっています。
今回はみなさんなりの京都の楽しみ方や学び方を見つけるきっかけとなることを願って、建築を学び始めてから現在に至るまで私自身が極私的に京都から学んだことを、学びの段階ごとにご紹介してみたいと思います。
まず初めは大学1年生という建築を学び始めた頃。同じく建築学科の友人と二人で訪れました。結論から述べれば、あまり楽しめなかったというのが正直なところです。もちろん友人と京都を見て回るのは楽しい訳ですが、学び始めたばかりの建築(今思えば講義で扱われる近代建築や雑誌で見る現代建築)と目の前の京都とを地続きの建築として見るだけの力が私になかったのです。それでも、東福寺の起伏に富み、多様な木々に彩られた風景を横目に、緩やかに弧を描く橋を渡る体験には興奮しました。俗世を離れ神聖な場所に向かうために意図された空間だと思いますが、当時はこういった感想もその理由まで説明することはできませんでした。それでも、このときにそう感じたことが今となっては大きな学びとなっているので、この時期に訪れておいて本当によかったと思っています。

次は大学四年生の、学部のすべての講義や課題を終えて残すは卒業設計のみとういう頃。大学のカリキュラムの一環で、歴史系の先生の解説のもと、厳選された古建築を見て廻るというものでした。大学一年生の頃に深く楽しめなかった経験もあってか、建築の一部位をみて多くを語る先生の後ろを、必死でついて周りメモを取りまくったことを覚えています。細かな組み木の名前など、その多くは忘れてしまっていますが、建築に時代精神が現れること、時代によって人と空間の意味合いや関係性が変化し、建築も変化してきた、ということが学べたのは大きな収穫でした。

最後はそれから約10年後、社会人として実務経験もある程度積んだ頃に休みを取って一人で訪れました。あいにくの雨のなか訪れた高山寺で特別な経験をしました。屋根や庭の形状、材料、背後に聳える山や木々までを含めたすべてが雨を流し土に還すためのかたちとして圧倒的な合理性を伴って見えたのです。建築家の事務所で働いていた私は現代建築を扱っていたということになりますが、実務では学生の頃にはそこまで深くは考えることのないこと、たとえば雨水の処理など多くの知識を学ぶこととなります。そして少し変わった形状を実現しようとするときほど、雨水などの初源的な問題と深く向き合う必要がでてきます。日々そうしたことと格闘していた私は、なぜこの建築がこのような形となっているのか、雨水の処理という視点から、或いはつくり手の視点から理解できたのです。この寺をつくった人はこう考えてこういう形状にしたのだな、素材にしたのだなと、まるで時間を超えて対話しているような特別な時間でした。そしてなによりそうした視点で、いま自分がつくっているものと何百年も前につくられたものとを並列で考えられるようになっていることが嬉しかったのを覚えています。
大袈裟に記述しましたが、もちろんそんな些かマニアックなことだけですべてが決まっているわけではないので、四方森に囲まれた環境でアプローチや外陣をどちらに向けるか、といったことを考えるのも面白かったのですが、そのときは森全体が雨音の静けさに包まれる中、そのことに興奮していました。


さて、長々と私的な学びの経験を記載しましたが、いまのみなさんにとって京都はどんなふうに見えるでしょうか。是非時間をつくって、いまのみなさんにとっての京都を目に焼き付けてみてください。そして数年後にまた訪れること、そのときの変化を楽しみに学びを積み重ねてみてはいかがでしょうか。
建築を学ぶ環境として京都という場所を選ぶのは、とても良い選択だなと思います。私自身、普段は東京で生活をしていますが、京都を訪れる度に実に多くの学びを得ています。そして面白いことにその学びは訪れる度に変化します。京都という都市や建築はもう何百年も変わらずにそこに在り続けている訳ですから、私の見る視点が変わっていることに気づくのです。日本では京都ほどの時間を蓄積した不変(私の時間的変化と比較してそう思われる)の都市も、何度も訪れる都市もそうはないので、私にとっての京都は自身の成長を観測する定点のような場所となっています。
今回はみなさんなりの京都の楽しみ方や学び方を見つけるきっかけとなることを願って、建築を学び始めてから現在に至るまで私自身が極私的に京都から学んだことを、学びの段階ごとにご紹介してみたいと思います。
まず初めは大学1年生という建築を学び始めた頃。同じく建築学科の友人と二人で訪れました。結論から述べれば、あまり楽しめなかったというのが正直なところです。もちろん友人と京都を見て回るのは楽しい訳ですが、学び始めたばかりの建築(今思えば講義で扱われる近代建築や雑誌で見る現代建築)と目の前の京都とを地続きの建築として見るだけの力が私になかったのです。それでも、東福寺の起伏に富み、多様な木々に彩られた風景を横目に、緩やかに弧を描く橋を渡る体験には興奮しました。俗世を離れ神聖な場所に向かうために意図された空間だと思いますが、当時はこういった感想もその理由まで説明することはできませんでした。それでも、このときにそう感じたことが今となっては大きな学びとなっているので、この時期に訪れておいて本当によかったと思っています。

東福寺。美しい風景と緩やかに弧を描く床、その上で歩みを進める体験。
次は大学四年生の、学部のすべての講義や課題を終えて残すは卒業設計のみとういう頃。大学のカリキュラムの一環で、歴史系の先生の解説のもと、厳選された古建築を見て廻るというものでした。大学一年生の頃に深く楽しめなかった経験もあってか、建築の一部位をみて多くを語る先生の後ろを、必死でついて周りメモを取りまくったことを覚えています。細かな組み木の名前など、その多くは忘れてしまっていますが、建築に時代精神が現れること、時代によって人と空間の意味合いや関係性が変化し、建築も変化してきた、ということが学べたのは大きな収穫でした。

宇治上神社本殿。手前の拝殿に向かい飛檐垂木によって大きく持ち出した庇。
最後はそれから約10年後、社会人として実務経験もある程度積んだ頃に休みを取って一人で訪れました。あいにくの雨のなか訪れた高山寺で特別な経験をしました。屋根や庭の形状、材料、背後に聳える山や木々までを含めたすべてが雨を流し土に還すためのかたちとして圧倒的な合理性を伴って見えたのです。建築家の事務所で働いていた私は現代建築を扱っていたということになりますが、実務では学生の頃にはそこまで深くは考えることのないこと、たとえば雨水の処理など多くの知識を学ぶこととなります。そして少し変わった形状を実現しようとするときほど、雨水などの初源的な問題と深く向き合う必要がでてきます。日々そうしたことと格闘していた私は、なぜこの建築がこのような形となっているのか、雨水の処理という視点から、或いはつくり手の視点から理解できたのです。この寺をつくった人はこう考えてこういう形状にしたのだな、素材にしたのだなと、まるで時間を超えて対話しているような特別な時間でした。そしてなによりそうした視点で、いま自分がつくっているものと何百年も前につくられたものとを並列で考えられるようになっていることが嬉しかったのを覚えています。
大袈裟に記述しましたが、もちろんそんな些かマニアックなことだけですべてが決まっているわけではないので、四方森に囲まれた環境でアプローチや外陣をどちらに向けるか、といったことを考えるのも面白かったのですが、そのときは森全体が雨音の静けさに包まれる中、そのことに興奮していました。

高山寺。雨によって樋の形状、外構の素材や微かな起伏の意味が浮かび上がる。

高山寺。周囲の山や木々と同様に長年雨を受け流してきたことを感じさせる軒下空間。
さて、長々と私的な学びの経験を記載しましたが、いまのみなさんにとって京都はどんなふうに見えるでしょうか。是非時間をつくって、いまのみなさんにとっての京都を目に焼き付けてみてください。そして数年後にまた訪れること、そのときの変化を楽しみに学びを積み重ねてみてはいかがでしょうか。
(※写真はすべて筆者撮影)
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