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2025年04月24日
【食文化デザインコース】食関連人材が人間国宝になる?

麹づくりの様子 (筆者撮影)
こんにちは。食文化デザインコースの中山晴奈です。今日は最近気になったニュースをご紹介します。
先日、文化庁がある提言を発表し話題になりました。なんと食関連人材が将来的に国宝登録されることになるというのです。
文化庁は昨秋から議論していたという料理人や杜氏などを「食の至宝」として国が顕彰する制度について2025年の2月25日に発表を行いました。この取り組みは2026年度からの実施を目指すといい、将来的には食分野からの人間国宝(重要無形文化財保持者)の認定につなげたいという考えです。
「日本では食は文化ではなかった?!」
食関連人材が人間国宝に、という知らせを受け、むしろこれまで食の国宝はいなかったの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そもそも、日本という国が食を文化として扱うようになったこと自体が、最近のことです。文化庁が食を扱う本格的な準備をはじめたのが2000年に入ってからです。「文化芸術振興基本法の一部を改正する法律」として、文化芸術に関する基本的施策に食文化の振興が新たに明記されたのも2017年と極めて最近のことなのです。
なぜ食が文化として認められてこなかったかといえば、芸術分野と異なり暮らしに近すぎたということがあげられます。当たり前のことであるが故に、保護される対象とみなされてこなかったということです。つまり、これらの法改正の動きは文化として保護すべき対象として見なすための下準備といえるでしょう。文化庁に先立って、農水省が2005年に食育基本法を制定し、「食文化の理解」が子どもの教育において重要と位置づけたことも注目すべきポイントです。食の活動というかたちのないものを、文化として支援するための準備なんですね。また、文化庁と農水省が連携する動きを多面的に行えるような準備ともいえるかと思います。(参考:文化芸術基本法 、食育基本法 )

食文化デザイン演習Ⅲ-2「食の地域価値共創」から常陸杜氏の取材風景(筆者撮影)
「課題、そしてソフトパワーとしての日本の食文化」
食を文化として扱われはじめたところからは、様々な動きがありました。ご存じの方も多いと思いますが、2013年のユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」や、昨年2024年には日本酒などを造る技術「伝統的酒造り」もユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、海外からの評価も高まっています。今や、コペンハーゲンのnomaをはじめ、日本の食文化産業は世界中のトップレストランから注目されています。日本各地を巡回している「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」という展覧会も、そのような流れで見てみると、日本はこれから食文化を保護していくぞ、という国民へのお披露目のように思えてきますね。
ではなぜ、いまさらともいえるタイミングで日本は国をあげて食を文化として取り扱うことにしたのでしょうか。背景には、私たちの食文化の変化による和食離れといった課題、そして国家戦略があります。人口の一極集中や、核家族化をはじめとした食生活の大きな変化は、私たちの伝統的な食生活や、また伝統的な食産業からの離脱につながっています。文化の継承が難しくなっているのです。
一方で年々増えているインバウンドの観光需要は、日本の食を求めています。日本は小さな島国であり、そもそも国外に輸出できるような資源や環境に恵まれた国ではありません。しかしながら、寿司、旨味といった日本の食文化のキーワードは「sushi」「umami」と言葉そのままに輸出され、世界を魅了しています。
発酵が世界的なムーブメントになっていることもご存知の方は多いでしょう。日本の食文化は資源として捉えた時に、国の経済を支えるかもしれないソフトコンテンツとして無視ができなくなってきたというわけです。国をあげて食をサポートする必要が出てきた、というのはこういった背景があるのです。

日本酒のテイスティング風景(撮影 片山達貴)
「食文化デザインを学ぶと社会がおもしろくなる」
私の担当する「食文化デザイン入門」では、このような話題についても取り扱っています。ちょうど今、春期に新入生が受講している本科目は、このような社会との繋がりについても目を向けています。身近なニュースと繋げて考えていくと、学習の理解が深まり、さらに社会がおもしろくなっていきます。
食に関連する伝統的な仕事は、近年担い手不足が深刻です。私たち一人一人が社会における食の役割に目を向け、どんな働きかけができるか考えていく必要が出てきています。日本の食文化を盛り上げる担い手づくりに、本コースの学びが一助になることを祈っています。

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