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2025年06月03日
【食文化デザインコース】大阪・関西万博 EARTH MARTグループ見学会

2025年食文化デザインコースでは京都芸術大学副学長であり、食文化デザインコースを監修している小山薫堂先生がプロデューサーを務められている大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「EARTH MART」を学びの場として万博特別講義を行っています。第1弾の今回は食文化デザインコースの学生さん10名と一緒にグループ見学会を実施しましたのでその模様をレポートします。

茅葺
全国から学生さんが集まり見学会がスタートしました。EARTH MARTの屋根は茅葺になっていて日本各地から素材が集められています。茅は里山の暮らしにおいて、人の営みと自然との「循環」の象徴。万博終了後には再利用も検討されているそうです。
中に入ると暗い部屋の中で、プロローグ映像を見ます。没入感があり、これからどんなものが見られるのかワクワクが止まりません。いよいよ中へ。フロアは大きく分けて「いのちのフロア」と「未来のフロア」に大きく分かれています。
「いのちのフロア」
いのちであることを見つめ直すフロアです。人間一人のいのちを紡ぐ為に、どれだけの他のいのちや自然の助けが必要なのか?それを知って、自ら考え、食べ物の見方が変わっていく感覚がありました。
「野菜のいのち」
たくさんの在来種が展示されています。大量に育てることができるように品種改良された野菜の陰で、数えきれないほどの在来種が姿を消している。種や苗を買ってきて育てるのではなく、在来種の「種をつなぐ」ことを選んだ一人の農家、長崎県雲仙市の岩﨑政利さんの野菜畑から一年の営みの中で生まれたものが展示されています。近づくと土や種の匂いがし、いのちを感じました。
「いのちの色」
日本人が食べる主要な食材300種・816カットの写真が瓶に閉じ込められています。食には「色」があり、それは「いのち」の色。とてもきれいな空間でした。私たちが多種多様な食べものに恵まれていることがわかります。
「いちばん食べられる魚」
イワシが象徴的に展示されていました。1匹のマイワシは、一生の間に約10万粒の卵を産みます。大きくなるまでに他の生物に食べられてたったの100匹(約0.1%)が残り、そこから人間が水揚げするのが推定0.01%だとして、そのうち7割が豚や養殖魚の餌となり、私たち人間が食べるイワシはたったの3匹。イワシは海の中でも、人間に水揚げされた後も、食べられることで他のいのちを支えています。
「家畜といういのち」
家畜写真家として、牧場で生きる家畜の動物たちを撮り続けているタキミアカリさんによって撮影された「いのちが生まれる瞬間」の写真が見られます。

いのちのフロア1
「一生分のたまご」
日本人ひとりが一生で食べる卵の数は約28,000個。日本では一人あたり300個以上の鶏卵を消費しています。世界で第2位だそう。一生分の卵を表した目玉焼きが展示されています。
「いのちのはかり」
食品サンプルを乗せると、その商品の背景にある自然と人の営みの物語がアニメーションによって表示されます。いのちの重さを感じる「はかり」です。
「世界のレシート」
世界に実在する家族の一週間分の食料をレシートとして表しています。食文化を表すものもあれば、予想していたものとは異なる食事の様子を伺うことができました。

いのちのフロア2
「未来のフロア」
「未来のフロア」では、古来からある食の技術から最新のフードテックまで、異なる視点から食の未来をより良くするヒントが展示されています。ワクワクするフロアでした。
「未来を見つめる鮨屋」
江戸前の鮨文化を代表する「すきやばし次郎」創業者・小野二郎氏が養殖技術や品種改良技術によって生まれた食材で鮨を握っています。映像ですが本当にそこにいらっしゃるよう。「現在(いま)は養殖より天然の方が美味しいから、天然の魚を握ります。しかし、漁獲量が減ったり、良質な魚がとりづらい環境の中で鮨の未来を考えた時に、国や人々が海の資源を守ることや新しい技術にも目を向け、職人もまた努力をしなければなりません」とお話しされているそうです。鮨職人とフードテクノロジー、伝統と革新が融合することで食の未来が見えてきます。
「進化する冷凍食」
様々な食材を凍結粉砕することで作られた、長期保存することのできるパウダーを展示しています。そのパウダーをベースにお米の形に再成形したり、新しい価値を持つ未来の食品の可能性が提示されていました。こんな冷凍食品が未来にできるかも?!

未来のフロア1
「味を記憶し、再現できるキッチン」
プロが作った料理も、大好きなおばあちゃんの料理も、遠い誰かの家庭料理も記録され、時代を超えて継承することができる。世界中の料理文化や知恵が共有される未来がそこまできているようです。
「みんなが幸せになる未来のお菓子」
日本をはじめ、いくつかの国々に暮らす9~11歳の子供たちから、「みんなが幸せになるお菓子」というテーマでアイデア募集を実施し、審査会によって選定された約34作品をプロのCGデザイナーの手によって再現して展示しています。ワクワクするアイデアばかりでした。
「EARTH FOODS 25」
日本が培った食材、食品、食の知恵・技術の中から25を選定し、その価値を国内外に発信することで、地球の食の未来をより良くするためのアイデアを共有するためのリストです。
EARTH FOODSの展示には、「25の食材・食品の紹介」、25の食品を包むための「パッケージデザインの提案」、シェフ5名による25の食品を使った「コンセプト料理の提案」という3つの要素がありました。EARTH MARTは空想のスーパーマーケット。パッケージもいつもとちょっと違う、これまでの定番をリセットし、食材の背景と可能性を新しい視点から見つめ作られています。こちらは日本全国から一般公募をし、審査をして選ばれたデザインを元にパッケージ化されています。
EARTH FOODS 25
https://expo2025earthmart.jp/news/622

未来のフロア2
「ディスカッション」
見学後別室に集まり、みんなで感じたことをシェアし合いました。たくさんの展示があった中でもみなさんそれぞれの視点から「食べる」ということ「いのち」ということそして「未来」への想像をワクワクしながら語っていただきました。
そして、それぞれの皆さんが感じたこと、おすすめの展示などを食文化デザインコースのインスタグラムなどで今後発信することになりました。乞うご期待!
京都芸術大学通信教育部 食文化デザインコース Instagram

最後に楽しそうな集合写真を掲載します。次回は第2弾大阪・関西万博会場 飲食店レポートをお届けします。

集合写真
食文化デザインコース|学科・コース紹介

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