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ランドスケープデザインコース

2025年06月23日

【ランドスケープデザインコース】庭園管理のコツは?

こんにちは。ランドスケープデザインコース業務担当非常勤講師の大嶋陽子です。
今回は、20256月に実施された環境デザインⅠ-2「日本庭園1・管理から日本庭園を学ぶ」のスクーリングの様子をお伝えします。
このスクーリングでは、日本庭園や公園といった心地よい空間を形づくる「緑」の管理について学びました。作庭者の思いやデザインの特徴を読み取りながら、空間全体を観察し、樹木の剪定や下草の手入れの基本技術を実践的に学ぶことを目的としています。

 1日目は東京都西東京市にあります「石正園」で実習を行いました。ここでは、雑木を活かした庭園づくりのスペシャリスト・平井孝幸先生にご指導いただきました。先生が実際に作庭された庭を見学しながら、雑木の庭における樹種の選び方、植え方、組み合わせ、そして手入れの方法について学びました。
庭を巡ると、流れのある空間から生命力が感じられ、みずみずしさが印象的でした。樹々の幹の美しさが際立ち、まるで武蔵野の森の中にいるかのような清涼感があります。落ち着いた雰囲気からは、庭づくりの奥深さがしみじみと伝わってきました。

武蔵野の雑木を思わせる



実習では、実際に雑木の手入れを体験しました。剪定鋏やノコギリなどの基本的な道具の使い方から丁寧に学びますが、木を傷めずに剪定する方法や、将来の樹形や生育を見越した枝おろしのテクニックまで習得できるのが、この実習の大きな魅力です。
繊細な判断力と経験が求められる作業を、実際の庭を前に体験することで、教室では得られない学びがありました。

剪定の実演風景





多くの貴重な石材や灯篭なども見どころ



2日目は東京都世田谷区にある「帰真園」での庭園見学と樹木管理の実習を行いました。庭園の案内は作庭者の高﨑康隆先生に、剪定の実習は杉山薫先生にご指導いただきました。
帰真園は、二子玉川駅から徒歩約10分の場所にある二子玉川公園内の日本庭園で、平成25年に開園しました。園内には、世田谷区登録有形文化財である「旧清水家住宅書院」が移築されており、富士山を模した築山や多摩川を思わせる流れや池、そしてダイナミックな石組みなど、見どころが多くあります。
この日は、設計の意図やデザイン手法、石組の考え方などを伺いながら、庭園の見方を深めました。また、空間に対して樹木が大きくなりすぎている箇所や、本来見せたい景色が隠れてしまっている場所に実際に手を入れ、剪定による景観の変化を体験しました。
マツやモミジといった馴染みのある樹木でも、実際に手入れをするのは初めてという学生が多く、最初はおそるおそる剪定していましたが、慣れてくると次第に積極的になり、夢中で取り組む様子が印象的でした。
樹木の剪定一つで空間の印象が大きく変わること、また、設計者と管理者の意図や感覚を共有することの重要性を、実践を通して実感する貴重な学びの機会となりました。

講師の高﨑康隆先生



旧清水家住宅書院



杉山薫先生による剪定指導



茶室前のモミジの手入れ



 実習の最後には、それぞれが庭園のスケッチを行い、観察や気づきをデザインシートにまとめました。「管理から学ぶ」という今回の課題の通り、庭園はどれほど優れた作庭であっても、その後の植物管理が適切でなければ、その魅力を保ち続けることはできません。庭園は、設計者だけでなく、管理する人、訪れる人など多くの人々の関わりの中で守られ、育まれ、心地よい空間として成立していきます。
ちょうど梅雨入りしたばかりにもかかわらず、東京では真夏のような猛暑が続いていました。こうした気候変動の中で、私たちはどのようにして緑を守り、維持していくべきか。ランドスケープデザインを学ぶ私たちにとって、環境の変化を深く理解しながら、心地よい「緑の場」を創造していくことの重要性を、改めて強く実感した2日間となりました。

 

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