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2025年12月11日
【芸術教養学科】芸術教養学科フライングカフェ「生きるための芸術、メーソットから。―「声」を可視化するためのスクリーニングワークショップ編@ CAPS ワークルーム/京都芸術大学」レポート
芸術教養学科 松本理沙
はじめに
芸術教養学科では、教員や学生と交流し、学びを深めるためのイベント「フライングカフェ」を定期的に開催しています。芸術教養学科は完全オンラインで学べる学科ですが、ときには直接先生や学友と会ってみたい、あるいは目の前で実際の作品を見ながら学びを深めたい、という方もいらっしゃると思います。対面のフライングカフェは、そんな方に向けて開催されているものです。
2025年11月22日には、京都芸術大学通学部の大学院生、及び京都芸術大学通信教育部芸術学部芸術教養学科の学生向けのイベント「生きるための芸術、メーソットから。―「声」を可視化するためのスクリーニングワークショップ編@ CAPS ワークルーム/京都芸術大学」を行いました。この記事では、そのイベントの様子をご紹介したいと思います。
このイベントは、東南アジアのタイにあり、ミャンマーとの国境沿いの街である「メーソット」で、生きるために芸術活動に取り組むアーティストたちについて、スクリーニング(映像作品の上映鑑賞)と「声」を可視化するためのワークショップを通じて学ぶものでした。ミャンマーでは2021年にクーデターが起こり、国内では政治的な混乱や衝突が頻発しています。2025年の現在も、その状況は依然として深刻なものです。こうした中で、たくさんの人々がタイのメーソットという地域に逃れ、一時的避難民として暮らしています。このイベントは、生きていくために芸術を続ける、メーソットという地域のアーティストたちの実践から、そのあり方とそうした芸術の意味を考えるものでした。
イベント当日は、キュレーターで京都芸術大学大学院芸術実践領域講師の居原田遥先生、アーティストで国際芸術祭「あいち2025」テクニカル・コーディネーターの土方大先生のお二人にお越しいただき、レクチャーとワークショップを運営していただきました。
アーティストたちのまなざし──ドキュ・アッタン(Docu Athan) のスクリーニング
プログラム前半では、ミャンマーのクーデター以降、同地の映像作家や映画監督と協働する「ドキュ・アッタン(Docu Athan)」という団体・取り組みによる映像作品を上映しました。
「ドキュ・アッタン(Docu Athan)」は、ミャンマーで拘束された経験を持つジャーナリストの北角裕樹さんとドキュメンタリー作家の久保田徹さんの発案から生まれた、ミャンマー人クリエイター(ジャーナリスト/ 映像制作者/ アーティストなど)を支援するためのオンラインプラットフォームです。しかし、この活動はオンラインプラットフォーム上に留まるものではありません。上映会を開催して作品を日本に紹介するなど、「ドキュ・アッタン(Docu Athan)」はさまざまなかたちで制作を支え、ミャンマーのクリエイターたちが集う場としての役割もまた果たしています。
ウェブサイト(https://www.docuathan.com)では作品を無料で視聴できるほか、クリエイターに寄付を行うことができる仕組みが設けられているので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
イベントでは、このような活動を行う「ドキュ・アッタン(Docu Athan)」が公開している映像を鑑賞しました。とりわけ、不当に逮捕された人々が、刑務所の中でなんとか音楽を奏で、自らや仲間を鼓舞する姿を映し出す映像や、2021年の軍事クーデター後の弾圧に抵抗して、武器を取った若者たちの信念を歌ったミュージックビデオが印象に残っています。上映された映像はどれも、音楽やアートが、困難な状況の中でも人々にエネルギーを与える力を持っていることを再確認するものでした。

居原田先生のレクチャーと「ドキュ・アッタン(Docu Athan)」の映像上映風景。
同時に、「ドキュ・アッタン(Docu Athan)」のメンバーである久保田徹さんから、現在のミャンマーの状況や、こうした支援活動を続ける動機などについてもzoomを通じてお話いただきました。ミャンマーの現状についての切実なお話を聞くことで、映像作品が持つ意義への理解がさらに深まったのではないかと思います。
「声」を可視化する──メーソットのアーティストたちの作品鑑賞
プログラム後半では、メーソットで創作を続けるアーティストたちの絵画や造形作品を、土方先生が即興的に作ってくださった展示空間で鑑賞し、言葉にするワークショップに取り組みました。

土方先生がこのイベントのために作ってくださった展示空間。設営の様子を生で見ることができました。
ワークショップではまず、事前に作品が持つ情報について知ることなく、「作品に何が描かれているのか?」、「どのように描かれているのか?」と問いかけ、考え、言葉にすることを試みました。それによって参加者は、作品をじっくりと観察し、考えを巡らせることができたのではないかと思います。さらに、それを言葉にしていくことで、作品を鑑賞することや、考えをまとめることの難しさも体験できたはずです。
考えたことはポストイットに書き込み、各自そのポストイットを作品の近くに貼りました。他の参加者の考えを知ることで、さらに作品理解が深まるとともに、他者の考えに触れる楽しさも感じられたのではないでしょうか。
ワークショップの最後には、居原田先生がそれぞれのアーティストが持つ背景について解説してくださいました。作品から受け取る情報、自分の考え、そしてアーティストや作品についての情報を複合的に組み合わせることで、作品の理解が深まっていくことを、実際に感じられるワークショップとなりました。

各作品のまわりには、参加者のみなさんの考えが書かれたポストイットが貼られました。
おわりに
今回のワークショップは、メーソットで生きながら芸術を続ける人々の姿を通じて、「芸術は社会とどのような関係を持つのか」、「社会の中で芸術がどのような力を持ちうるのか」ということについて考える貴重な機会となりました。
芸術教養学科では、このようにアートを通じて社会や他者とつながりながら学びを深める機会を数多く用意しています。知識がなくても問題ありません。イベントを通じて、社会が抱える問題について学び、新しい視点を得てみませんか。
ぜひ、こうした学びの場を体験しに来てください。皆さんと一緒に、これからのアートのあり方を考えていけることを楽しみにしています。
芸術教養学科|学科・コース紹介

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