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2025年08月25日
【芸術教養学科】「私たち」のデザイン

今回は、芸術教養学科教員の下村からお届けします。
このブログをご覧になっている方のなかには、これから大学で学んでみるのはどうだろう、とお考えの方もおられることと思います。そして、いろいろな大学や学科のサイトをご覧になりながら、ご自身が何を学びたいのかをも探しておられるのではないでしょうか。
このブログでは、そうした方々のために、芸術教養学科ではどのようなことが学べるのか、という記事を書いたことがあります。
【芸術教養学科】アートを学びたい人にとっての「デザイン思考」
【芸術教養学科】アートを学びたい人にとっての「デザイン思考」
この記事では、「デザイン思考」を掲げる大学多しといえども、「伝統文化」と併せ学べるのはここだけ、ということと、「アート好き」の人たちが集まることによる予測不能な面白さ、ということを挙げました。
この二つは、今でも芸術教養学科の本質的な特徴であり続けていますが、大事なことがもう一つあったのを忘れていました。
それは、この「デザイン思考」が「私たち」のものだということです。
デザインというのは、ものの色や形をかっこよく作ることではなく、問題を解決することに本質があるのだということはずいぶん知られてきたと思います。そしてデザインのジャンルを超えて存在する、問題解決のための創造的思考が「デザイン思考」なのです。
これまでデザインは、専門性の高い仕事として存在してきました。プロダクトデザイン、建築デザイン、グラフィックデザイン…、いずれも産業の仕組みに組み込まれた高度な技術を含むものでした。そして、それは高度な専門教育でしか学べないものでした。デザインは、専門家が独り占めしている領域であって、「私たち」のものではなかったのです。
しかし「デザイン思考」は違います。その定義からいって、そうした具体的でややこしい技術、たとえば難しい製図や高度なプログラミングといったものとは、本質的に関係ないものです。その本質は「私たち」に開かれているのです。
先に触れたように、デザインは専門的で高度なもの、もっと言えば資本や権力に近しいものでもありました。「デザイン思考」にもそうした側面はありました。多くの大学では「デザイン思考」は相変わらず工学系の専門課程の中で扱われています。また、「デザイン思考」を用いた企業に対するコンサルティングが流行してそれが華々しく報じられたり、そうしたコンサルティングが下火になって「デザイン思考は終わった」などと喧伝されたこともありました。
しかし、そういったことは「私たち」とは関係ありません。これらは従来型の世界の出来事だからです。専門家たちではなく、市民層が「デザイン思考」を武器にする事例は始まったばかり、むしろ未来に属することだからです。
もうわかっていただけたと思いますが、芸術教養学科が企んでいるのは、「デザイン思考を人々の手に」、ということなのです。
こうした考え方は、必ずしも新しいものではなく、よりよい世界を目指すデザインの一つの理想としてあり続けてきたものです。しかし、世の中の仕組みに組み込まれたデザインの方法は、なかなか「私たち」が生きている現場には根付いてきませんでした。普通の人の普通の暮らしの中にそうした学びの場がなかったし、そうした考え方をどう活かすかといったイメージもありませんでした。
しかし、インターネットが普及したことで、多くのことが変わりました。面白いアイディアを活かしたさまざまな活動例が紹介(※)され、人々が刺激しあうようになり、何よりも、多くの人が好きな時間に取り組めるインターネットを用いた学びの場が生まれました。このことによって「デザイン思考」が「私たち」に開かれたのです。
「デザイン思考」を知った人は、ものの見え方や使い方が変わってきます。そしてそれを使ってご自身の生活を変え、身の回りを変えていくでしょう。わくわくするような場や機会を作っていくことでしょう。「デザイン思考」を多くの人々が知ることは、社会を変え、国や世界を変えていくことにも繋がっているのです。
こうした「私たち」「人々の」という視点から、多くの人たちに「デザイン思考」教育の機会を開いているのは、この芸術教養学科の極めて大きな特徴だと思います。
「私たちのデザイン」というのは、なにもここで思いつきで言っているわけではありません。本学科テキストに、その開設当初から堂々と銘打たれている志なのです。そしてそれは、今年度刷新された新テキストでも変わりません。
私たちと一緒に、暮らしを、世の中を、面白くしてみませんか?
※:芸術教養学科が発行しているwebマガジン『アネモメトリ』には、創意に富んださまざまな活動が紹介されています。
https://magazine.air-u.kyoto-art.ac.jp
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