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ランドスケープデザインコース

2025年12月11日

【ランドスケープデザインコース】地域における茅葺きの差異

業務担当の遠藤です。
「環境デザインIV2(都市と地方を結ぶ風景デザイン)」のスクーリングでは、京都府南丹市の美山かやぶきの里を訪れました。

 一言で「茅葺き」といっても、使われている植物、屋根の形、厚み、用途、そしてそれを支える暮らしや文化は、地域ごとにまったく違います。今回のブログでは、美山以外の茅葺きも取り上げ、その違いを少しご紹介したいと思います。

 【美山の茅葺】
京都北部の美山では、茅葺きは主に住居として発達してきました。ここではススキを中心に、地域の湿地で手に入るヨシ、そして屋根の結束に欠かせないアサ(麻縄)など、複数の植物を組み合わせる混合型の茅葺きが特徴です。山あいの土地柄、夏と冬の気温差が大きく、一定量の降雪もあるため、屋根は3040cmほどの厚みを持ち、断熱性と通気性のバランスが考えられています。
また、美山特有の文化として、屋根裏を煙で燻して防虫・防腐を行う「煙草(えんど)」があります。これにより素材の寿命が伸び、結果的に屋根が地域の暮らしと連動した生きた仕組みになっています。茅葺き民家と周囲の田畑や山が一体となり、里山らしい風景が形づくられている点も美山の魅力です。
ヨシ/ススキ/アサ で構成されていました。



【白川郷の茅葺】
白川郷の合掌造りは、日本の茅葺き文化の象徴ともいえる存在です。豪雪地帯に位置するため、屋根には強いススキを大量に使い、4060cmもの厚みを持たせます。屋根勾配も非常に急で、4560°ほどあり、雪を効率よく落とすための形状が生まれています。



 【別府の茅葺】
別府には「湯の花小屋」と呼ばれる、温泉成分を採取するための作業小屋があり、そこで茅葺きが用いられてきました。素材は主にイネ(稲藁)で、アサを結束材として使うシンプルな構成です。以前ご招待いただいた湯畑ではテープで固定していました。
イネ/アサ/イネ で構成され、素材は近所の農家さんからもらっているそうです。

見学させてもらった湯の花畑。美容製品に使うそうです。



 【滋賀の茅葺】
滋賀の茅葺きは、日本のなかでも特に「水辺の風景」と深く結びついた独特の姿をしています。琵琶湖の湖岸一帯には大きなヨシ原(葦原)が広がっており、このヨシが昔から屋根材として地域の暮らしを支えてきました。美山や白川郷がススキを中心にした茅葺きであるのに対し、滋賀はヨシ葺きの文化が中心となっています。

ヨシはススキよりも軽くて真っ直ぐなため、屋根を葺いたときに仕上がりがシャープで、比較的薄めの屋根でも十分な機能を発揮します。また、湿地で育つ植物のため耐水性が高く、琵琶湖周辺の気候や暮らし方にとても合っていました。屋根の厚さは1525cm程度と美山よりやや薄く、葺き替えのサイクルは1015年ほどと短めです。
ヨシ/アサ で構成。

茅葺きの古民家の改修の様子。トタンを一部剥がし、天窓を作った。



【番外編】
万博のシグネチャーパビリオンのひとつ、EARTH MART では全国5か所(例:熊本・阿蘇、静岡・御殿場、滋賀・近江八幡、大阪の淀川流域 など)から収集された茅が使われました。

最後に、
同じ茅葺きに見えても、地域ごとにまったく違う顔をしています。ぜひ、いろんな土地でその違いを探してみてください。

 

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