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食文化デザインコース

2026年10月21日

【食文化デザインコース】「ゴミのスープ」から考える、おいしさと食の未来

こんにちは。
食文化デザイン研究室の開裕子です。

「ゴミのスープ」。
そう聞いて、みなさんはどんな味を想像しますか?

今回、食文化デザインコースでは、特別講義イベント
「なぜ、パリのグランメゾンで修業したシェフのスープが『ゴミのスープ』と名付けられたのか」― 狐野扶実子先生と考えるリジェネラティブな食 ―
を開催しました。

会場は、東京・日本橋にあるGastronomy Innovation Campus Tokyo(GIC Tokyo)。対面とオンラインのハイブリッドで、多くの方にご参加いただきました。

登壇したのは、食文化デザインコースで「おいしさの食体験デザイン」を担当する狐野扶実子先生と、料理人で8goシェフディレクターの野田達也シェフ。

一杯の「ゴミのスープ」から始まった対話は、やがて「おいしさとは何か」「食体験をデザインするとはどういうことか」、そして「これからの食はどうあるべきか」という問いへと広がっていきました。

「ゴミのスープ」って、どんなスープ?


「ゴミのスープ」と聞くと、少し驚いてしまいますよね。
でも、その正体は、レストランで料理をつくる際に出る野菜の皮や根、切れ端など、本来なら仕込みの段階で捨てられてしまう部分からつくられたスープです。

ゴミのスープの材料



端材を一度低温で乾燥させ、水で煮出し、最後に塩で素材の味を引き立てる。
野田シェフは、コース料理の最後にその日の料理を振り返りながら楽しんでもらう、いわば「エンドロール」のような一杯として提供しています。
もともとは「お野菜のコンソメ」という名前だったこのスープ。
パリで提供していた際、現代アーティストの村上隆さんから「捨てられるものでつくっているなら、ゴミのスープだ」と名付けられたことをきっかけに、現在の名前になったそうです。
同じスープなのに、「お野菜のコンソメ」と聞くのか、「ゴミのスープ」と聞くのかで、受け取る印象は大きく変わります。
ここから、この日の大きなテーマのひとつである「食体験」の話へとつながっていきました。

「おいしい料理」と「おいしい食体験」は違う


狐野先生のお話の中で、とても印象的だったのが、「おいしい料理と、おいしい食体験は切り離して考えられる」という言葉です。

料理そのものの味はもちろん大切です。
けれど、誰と食べるのか。
どんな場所で食べるのか。
どんな話を聞いてから口にするのか。
そうした料理の外側にあるものも、私たちが感じる「おいしさ」に影響しています。

この日、会場では実際に「ゴミのスープ」を味わいました。

ゴミのスープ



使われていたのは、根セロリ、人参、枝豆、バターナッツかぼちゃ、冬瓜、トウモロコシ、栗、しいたけ、ビーツ、菊、どんぐり、タケノコの皮、ミニトマトの皮など、全部で17種類。同じレシピがあるわけではなく、その時レストランで使われている食材によって、毎回味も変わるそうです。

本日のゴミのスープの食材



野田シェフから、このスープが生まれた背景や食材の話を聞きながら味わう。
それだけでも、ただ何も知らずに飲む一杯とは、感じ方が少し違ってきます。
まさに、狐野先生が授業で伝えている「おいしい食体験」を、参加者自身が体験する時間になりました。

もっと「おいしい食体験」にするなら?


さらに面白かったのが、狐野先生から会場のみなさんに投げかけられた問いです。
「今飲んだこのスープを、もっとおいしい『食体験』にするとしたら、どうしますか?」
味を変えるのではありません。

すると会場から
「土や木の香りを加えてみる」
「空腹のとき、一番最初に出してみる」
「冷めていく温度の変化も味わってみる」
など、さまざまなアイデアが出てきました。

同じ一杯のスープでも、何に注目するかは人それぞれ。
器、香り、温度、提供するタイミング、そしてそこにある物語。
「料理の味」だけではなく、食べる人の気持ちや、その前後の時間まで考えていく。
食文化デザインコースで学ぶ「食体験デザイン」の一端が見えてきます。

食べることも、「循環」の一部になる


話はさらに、「リジェネラティブな食」へと広がりました。

野田シェフの「ゴミのスープ」には、実は続きがあります。
野菜の端材を煮出したあとに残ったものは、細かくして、レストランのコンポストへ。
そこで堆肥に変え、お世話になっている農園へ戻します。
そして、その土で育ったハーブや野菜が、再び料理となって私たちのもとへ戻ってくる。
野田シェフは、食べる人もその循環の輪の中にいると考えています。
「食べる」という行為を、ただ食材を消費することとして捉えるのではなく、食べることで循環の一部に加わる。

一杯のスープから、そんな食のあり方まで見えてきました。

「正解」を覚えるのではなく、考え続ける


では、「リジェネラティブな食」とは、結局何なのでしょうか。

野田シェフ自身も、その答えについて「模索中」と話します。
狐野先生も、サステナブルとリジェネラティブを明確に分けるのではなく、何かが再生したり、より豊かになったり、人と人との関係が深まったりすることも含めて考えていると話されました。

この日の対話の最後に出てきたのは、
「知ることから始める」
ということ。

自分の地域にはどんな生産者がいるのか。
どんな食材が育っているのか。
それはどんな環境でつくられているのか。
まず知ること。
そして、誰かを思い、未来に思いを馳せること。
そこから食の未来を考えることが始まるのかもしれません。

食を学ぶと、見える世界が変わっていく


今回の特別講義で扱ったのは、一見すると「ゴミのスープ」という一杯の料理です。
けれど、そこから考えたのは、料理の味だけではありませんでした。
食材、生産者、食べ手、記憶、地域、環境、循環、そして未来。
ひとつの食を入り口に、さまざまな視点から問いを立て、考えていく。
それが、食文化デザインコースの学びの面白さのひとつです。

「食が好き」。
その気持ちから、もう一歩先へ。
なぜ自分は食に惹かれるのか。
おいしさとは何なのか。
食を通して、どんな未来をつくることができるのか。
そんなことを考えるわくわくする時間となりました。

今回イベントにご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。

次回の特別講義イベントは、スープ作家・有賀薫さんと卒業生を迎えて


次回の特別講義イベントは、11月14日(土)、スープ作家の有賀薫さんと食文化デザインコースの第1期卒業生を迎えて開催します。
「食の原体験」を入り口に、有賀さんがいつ、どんなきっかけで食を意識するようになり、その経験をどのように現在の仕事へとつなげてきたのかを伺いながら、自分自身の「食が好き」という気持ちを見つめます。
また、食文化デザインコースの卒業生からは、このコースで何を学び、その学びが現在の暮らしや仕事にどうつながっているのかをお話しいただきます。
なぜ、自分は食が好きなのか。
その「好き」を学ぶことで、何につなげられるのか。
有賀さん、卒業生と一緒に、「好き」を学び、自分らしい未来につなげる方法を考えます。

イベント詳細・お申し込みはこちら
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/briefing/foodculturedesign_20261114/

食文化デザインコース|学科・コース紹介



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