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博物館学実践コース

2026年10月13日

【博物館学実践コース】国外から発信される漆の展覧会、そして巨大収蔵庫。ロンドンで映像教材を撮影しました

みなさん、こんにちは。京都芸術大学 通信教育課程アドミッション・オフィスです。

2027年4月開設予定の「博物館学実践コース」。学芸員資格の取得やミュージアム運営の実際を学びたい方に向けた新しいコースです。

現在、この博物館学実践コースの開設に向けた映像教材の制作が進んでいます。

今回はその撮影のため、コース教員の菊池敏正先生と教材制作チームがイギリス・ロンドンへ。美術・工芸・デザインの分野で世界最大級のコレクションを誇る「ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム(V&A)」を訪ねてきました。

案内してくださったのは、V&Aアジア部門で2018年から日本コレクションを担当されているキュレーターの山田雅美さんです。

ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム正面にて、撮影前の菊池先生


目次


  1. 撮影したのは、「博物館学実践入門」と「博物館学特講I」

  2. 日本の文化を、国外から発信する ―― 東芝ギャラリーの「Urushi Now」展

  3. ミュージアムを支える収蔵庫 ―― V&A East Storehouse

  4. 「展示」と「収蔵」は、つながっている


1. 撮影したのは、「博物館学実践入門」と「博物館学特講I」

今回撮影したのは、2つの科目の教材です。ひとつは「博物館学特講I」の第10章。テーマは「日本の文化を国外から発信する」。
もうひとつは「博物館学実践入門 」の第8章、こちらのテーマは「ミュージアムを支える収蔵庫」です。
一見バラバラのようですが、実はこの2つ、博物館という営みの表と裏にあたります。
そのことは、記事の最後にあらためて触れたいと思います。
2. 日本の文化を、国外から発信する ―― 東芝ギャラリーと「Urushi Now」展

撮影初日は、朝8時から。まだ来館者のいない、静まりかえった展示室に入れていただきました。
向かったのは、日本美術を専門とする東芝ギャラリー(Japan, Room 45, The Toshiba Gallery)です。


開館前の展示室で。山田さんにお話を伺いました



V&Aは年間約300万人が訪れる、世界有数のミュージアムです。その日本ギャラリーで、いま何が行われているのか。
撮影当日、ここで開催されていたのが、「Urushi Now: Contemporary Japanese Lacquer」展でした。

漆は、日本で7000年以上にわたって使われてきた素材です。その技法は各地で独自に発展しながら、同時にアジアからの異文化の影響も受けてきました。
「Urushi Now」展は、そうした長い歴史を背景に、21世紀の芸術表現としての漆の多様性に光を当てる展示です。
出品しているのは、石塚源太さん、青木千絵さん、田中信行さん、室瀬和美さん、池田晃将さんをはじめとする現代の作家たち。
なぜ漆なのか。どのような準備期間を経て、どんな構成で組み立てたのか。開催にあたって苦労した点は何か。山田さんには、展示ケースを一つひとつたどりながら、企画の裏側を語っていただきました。

そして、この取材でとりわけ重要だったのが、次の問いです。

「ロンドンから日本の文化を発信するとき、日本国内で展覧会をつくるのとは、何が違うのか」

V&Aを訪れるのは、世界中の国々から来た人々です。日本の文脈を共有していない人に、漆という素材の何を、どう伝えるか。同じ作品でも、どこで、誰に向けて、どんな順序で並べるかによって、伝わる意味は変わります。
これは博物館学の中心的なテーマのひとつです。教科書で読むだけではなかなか実感しにくいことを、現地の展示室で、担当学芸員の言葉とともに教材として収録することができました。
「Urushi Now: Contemporary Japanese Lacquer」
会期:2027年4月30日(金)まで
会場:V&A South Kensington/Japan, Room 45, The Toshiba Gallery
入場無料
展示の詳細はV&A公式サイトへ

この展示は、2027年4月まで会期が続きます。ロンドンを訪れるご予定のある方は、ぜひ実際に足を運んでみてください。
3. ミュージアムを支える収蔵庫 ―― V&A East Storehouse

撮影2日目は、ロンドン東部のハックニー・ウィック地区へ。
2012年のロンドンオリンピック会場跡地の再開発エリアに、2025年に開館したばかりのV&A East Storehouseを訪ねました。

Weston Collections Hall。この光景そのものが「展示」です



ここは、いわゆる展示室ではありません。収蔵庫そのものを、来館者に開いた施設です。
何層にも積み上げられた棚に、絵画も、家具も、衣装も、バイクも、建築部材も——分野もジャンルも越えて、収蔵されています。ガラス床の下にも収蔵品が広がり、来館者は文字通り、コレクションのただ中を歩くことになります。

「見せる収蔵庫」という世界的な潮流

博物館が所蔵する資料のうち、常設展示に出ているものはごく一部です。大半は収蔵庫のなかにあり、来館者の目に触れることはありません。
その「見えない大半」を公開しようという動きは、いま世界的に広がりつつあります。
ただし、館内の一部を見せる収蔵庫として公開する例はあっても、収蔵庫そのものを公開することは、きわめて新しい試みです。
なぜこのかたちにたどり着いたのか。すべての収蔵品を運び込むまでに、どんな困難があったのか。そうした経緯を、山田さんに詳しく伺いました。

見せることと、守ることは両立するのか。
これだけの収蔵品を公開していれば、保存対策も相応に大変なはずです。実際、館内には防虫トラップが数多く設置されていました。教材では、こうした保存管理の実際にも踏み込んでいます。
また、今回の教材撮影では修復室やなど、通常は目にすることのないエリアも撮影させていただきました。

East Storehouseの特徴的な仕組みのひとつが、事前予約をすれば、収蔵品を最大5点まで間近で見られるというサービスです。これが成立するということは、収蔵品データベースと収蔵庫の番号がリンクしているということでもあります。
「見せる」ための仕組みが、資料管理の体系に支えられている。博物館の裏側にある、きわめて重要な部分です。
V&A East Storehouse
開館:10:00–18:00(木・土は22:00まで)/入場無料
2 Parkes Street, London E20 3AX
施設の詳細はV&A公式サイトへ


4. 「展示」と「収蔵」は、つながっている

さて、冒頭で「2つの科目は博物館という営みの表と裏だ」と書きました。
展示は、選び、並べ、意味を与えて、人に見せる仕事です。
収蔵は、守り、記録し、次の世代へ渡していく仕事です。

この2つは、しばしば対極にあるものとして語られます。見せれば傷む。守れば見せられない。けれども実際には、この2つは循環しています。そのことは、実は「Urushi Now」展そのものに表れていました。出品作の多くは、V&Aがこれまでに収集し、収蔵品番号を与えて管理してきた作品です。
きちんと収蔵され、記録されているからこそ、展示ができる。 そして展示を通じて価値が知られるからこそ、収蔵し守り続ける意味が生まれる。
East Storehouseは、まさにこの循環を可視化しようとしている施設でした。
今回撮影した2つの教材は、その循環の両側から博物館という営みを見ていくことになります。



教材はこれから編集作業へ

ロンドン市内を移動しながらの2日間でした



撮影した素材は、これから編集作業に入ります。完成した映像教材は、2027年4月開設予定の博物館学実践コースで使用される予定です。
学芸員資格の取得をめざす方はもちろん、「博物館ってどういう場所なんだろう」と考えたことのあるすべての方に届く教材を目指して、制作を進めています。

最後になりましたが、丁寧にご対応いただいたヴィクトリア&アルバート・ミュージアムの山田雅美さんに、あらためて御礼申し上げます。

 

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