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2019年07月24日
【アートライティングコース】「ファッションはもっと言語化されなければいけない」
こんにちは。アートライティングコース教員の大辻都です。今日は今月初めにおこなわれたコース主催による特別講義についてお伝えしたいと思います。
4月にスタートしたばかりの本コースはウェブでの学習が基本的なスタイルとなり、ふだん学生が登校することはありません。そのためこの日の参加者は、初めてコースの「生」の授業を体験することになりました。
記念すべき第一回講義のタイトルは「ファッション批評は止まらない」。フリージャーナリストであり、本コースの動画講義にも出演されている西谷真理子先生に登壇していただきました。西谷先生は雑誌『装苑』や『ハイファッション』の編集に長く携わり、ファッションシーンの最前線を取材してこられた方です。また最近では、ファッションについて大学で教える傍ら、独自の視点によるコラムを複数のメディアに発表されています。
さてここで「アートライティング」とは何か、のっけからのファッションの話題とどう関わるのかについて抱かれるだろう読者の疑問にかんたんにお答えしておきましょう。最初の問いはひと言で説明すれば、「アートについて書くこと」です。でもその「アート」とは、一般的に連想されがちな美術=ファインアートだけではありません。語の原義に遡ってこれを「人が作り出す技」と捉えれば、ファッションもまた疑いなくアートですし、その他にもいたるところにアートはあります。そうしたアートライティングの射程の広さを学生と共有するためにも、ファッションライティングの専門家である西谷先生にご登場願ったというわけです。
ファッション記事といえば、すぐさま思い浮かぶのはパリやNY、東京といった最先端の都市で行われるコレクションの紹介ではないでしょうか? そこではトレンドとなる服の色や生地、シルエットなどが主たる関心事となるのがふつうです。一方この日の講義では、ファッションについて書くことをめぐり、それだけではないより多角的な視点からの話題が提供されました。
ベルリンで活動する新人デザイナー・濱田明日香の独自性を評価し展覧会を企画した地方美術館の英断、ルイ・ヴィトン初の黒人系デザイナー、ヴァージル・アブローの構築的な感性といった、時代性を感じさせる作り手の登場やそのコンセプトへの言及もあれば、アカデミシャンの視点で編集される批評誌『VANITAS』、クリエイターのHaru.が東京芸大在学中に立ち上げたインディペンデント誌『HIGH(er)magazine』など新たなファッション発信の事例紹介もあり、その内容は刺激的なだけでなく多くの示唆に富んでいたと感じます。とりわけアメリカ人著者の視点から日本におけるアメリカントラッドの発展を考察した『AMETORA 日本がアメリカンスタイルを救った物語』(デーヴィッド・マークス著)を紹介しながらの「日本人の書き手の間では批評が育ちにくい」という指摘には大いに考えさせられました。
西谷先生ご自身、『感じる服 考える服』『相対性コム デ ギャルソン論』といった書籍の編集やウェブマガジン、展覧会カタログへの寄稿という形でファッションライティングを実践され続けています。それらを読んでいて感じるのは、ファッションをそれだけの小さな世界に閉じ籠ったものとしてではなく、哲学、建築や他のアートジャンルと結びつけ、広い視野の中で考えようとする気概、そして従来言葉は不要とされてきたファッションというジャンルを「もっと言語化されなければいけない」(『相対性コム デ ギャルソン論』)ものと捉え直す信念です。そうした意志のもとに作られる場が、身内の褒め合いともたんなる批判とも異なる真の批評の芽吹きをもたらすのではないかと予感しました。
全国、そして海外にいるコースの学生に向けライブ中継もされたこの講義は、多くの人にとって、書くことと発信することのヒントが詰まった時間だったはずと確信しています。
アートライティングコース|学科・コース紹介
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4月にスタートしたばかりの本コースはウェブでの学習が基本的なスタイルとなり、ふだん学生が登校することはありません。そのためこの日の参加者は、初めてコースの「生」の授業を体験することになりました。
記念すべき第一回講義のタイトルは「ファッション批評は止まらない」。フリージャーナリストであり、本コースの動画講義にも出演されている西谷真理子先生に登壇していただきました。西谷先生は雑誌『装苑』や『ハイファッション』の編集に長く携わり、ファッションシーンの最前線を取材してこられた方です。また最近では、ファッションについて大学で教える傍ら、独自の視点によるコラムを複数のメディアに発表されています。
さてここで「アートライティング」とは何か、のっけからのファッションの話題とどう関わるのかについて抱かれるだろう読者の疑問にかんたんにお答えしておきましょう。最初の問いはひと言で説明すれば、「アートについて書くこと」です。でもその「アート」とは、一般的に連想されがちな美術=ファインアートだけではありません。語の原義に遡ってこれを「人が作り出す技」と捉えれば、ファッションもまた疑いなくアートですし、その他にもいたるところにアートはあります。そうしたアートライティングの射程の広さを学生と共有するためにも、ファッションライティングの専門家である西谷先生にご登場願ったというわけです。
ファッション記事といえば、すぐさま思い浮かぶのはパリやNY、東京といった最先端の都市で行われるコレクションの紹介ではないでしょうか? そこではトレンドとなる服の色や生地、シルエットなどが主たる関心事となるのがふつうです。一方この日の講義では、ファッションについて書くことをめぐり、それだけではないより多角的な視点からの話題が提供されました。
ベルリンで活動する新人デザイナー・濱田明日香の独自性を評価し展覧会を企画した地方美術館の英断、ルイ・ヴィトン初の黒人系デザイナー、ヴァージル・アブローの構築的な感性といった、時代性を感じさせる作り手の登場やそのコンセプトへの言及もあれば、アカデミシャンの視点で編集される批評誌『VANITAS』、クリエイターのHaru.が東京芸大在学中に立ち上げたインディペンデント誌『HIGH(er)magazine』など新たなファッション発信の事例紹介もあり、その内容は刺激的なだけでなく多くの示唆に富んでいたと感じます。とりわけアメリカ人著者の視点から日本におけるアメリカントラッドの発展を考察した『AMETORA 日本がアメリカンスタイルを救った物語』(デーヴィッド・マークス著)を紹介しながらの「日本人の書き手の間では批評が育ちにくい」という指摘には大いに考えさせられました。
西谷先生ご自身、『感じる服 考える服』『相対性コム デ ギャルソン論』といった書籍の編集やウェブマガジン、展覧会カタログへの寄稿という形でファッションライティングを実践され続けています。それらを読んでいて感じるのは、ファッションをそれだけの小さな世界に閉じ籠ったものとしてではなく、哲学、建築や他のアートジャンルと結びつけ、広い視野の中で考えようとする気概、そして従来言葉は不要とされてきたファッションというジャンルを「もっと言語化されなければいけない」(『相対性コム デ ギャルソン論』)ものと捉え直す信念です。そうした意志のもとに作られる場が、身内の褒め合いともたんなる批判とも異なる真の批評の芽吹きをもたらすのではないかと予感しました。
全国、そして海外にいるコースの学生に向けライブ中継もされたこの講義は、多くの人にとって、書くことと発信することのヒントが詰まった時間だったはずと確信しています。
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