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通信教育課程 入学課

2021年04月04日

今、芸術を学ぶことの勇気と決意 - 2021年度 京都芸術大学通信教育部 入学式のご報告 -

こんにちは、通信教育部 事務局です。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!

本日4/4(日)京都・瓜生山キャンパスにて開催された 通信教育部の「入学式」のご報告です。
通信教育部では、4/15(木)まで春入学の出願を受け付けていますので、最終入学者数はまだ確定していませんが、現段階で3,700名強の出願をいただき、昨年の倍を超える多くの方々に入学いただくことになりそうです。4/4(日)の式典にはすでに入学許可を得た多くの方が参加されました。

「社会人が学ぶこと」だけでなく「社会人が“芸術”を学ぶこと」を当たり前の社会にするという本学のビジョンに少しずつ近づいていること、大変うれしく思っております。また、通学の代替えではなく、学生それぞれの環境や状況に左右されずに学べる教育手法として、通信教育の利便性や特長を存分に理解いただいた上で、積極的に活用いただければと思います。


「僕たちの目の前には、59段の架け橋、ひとつ階段を上ると、未来が近づいてくる」

学園歌「59段の架け橋」が会場に流れる中、入学者の方々が続々と集まってきました。
「59段の架け橋」とは、キャンパス入り口の「大階段」のことを指しているのですが、実はこの階段は、キャンパスの奥の方までずっと続いています。
「天に翔ける階段」という名が示すとおり、まるで天空まで続くかのよう。

スクーリング科目で瓜生山キャンパスに来た学生さんから「この大階段を上ってキャンパスに入ると、社会人から学生へとスイッチが切り替わる。」といったお話もききます。

本学の学生たちにとって大階段は象徴的な存在となっています。



 

式典会場となる「直心館(体育館)」へは階段かエレベーターを利用して向かいます。階段を上ってこられた新入生の皆さんは、その階段の長さに驚かれていました。瓜生山キャンパスは、京都盆地の東部を区切る南北12キロにおよぶ36の山々の総称「東山三十六峰」のなかのひとつ、瓜生山の山並みに沿って校舎が建てられていますので、構造上どうしても階段や坂が多く存在します。





上りきると、京都市内を一望することができます。当日は残念ながら雨天でしたが、入学式会場をめざし頑張って上った先にあるこの景色は格別のものがあったようで、新入生のみなさんも思わず立ち止まってパシャリと撮影されてました。





たしかにこの階段を上りきるのは大変かもしれません。
ただ、一段一段上ることで、入学したことの実感をゆっくりと噛み締めていただきたいという意図も込められているのです。

式典は本学教授の松平定知先生による、本学の理念京都文藝復興」の朗読からスタート。




生きるとは何か、生命とは何か、それらを大きく育む宇宙とは何か。

哲学や宗教、文学や芸術表現が追求し続けてきた、この根源的な問題について、

今や良心ある多くの人々が、生涯をかけた探求へと向かいはじめている。

我々はそこに、万物に対する謙虚さと天地自然への畏敬の念に満ちた、

創造的精神の復興の兆しを見いだし、

現代を超克し未来を拓くに至る、たしかな可能性を確信する。

「京都文藝復興」より抜粋。前理事長・徳山詳直による大学創設時のエネルギーに満ちた建学の理念です。是非ご一読ください。

つづいて吉川左紀子学長からの式辞です。
認知心理学、特に対人コミュケニーションの基盤となるこころの仕組みを専門に京都大学で研究されてきた吉川先生は今春より本学学長に就任されました。



「視覚の動物である人間の認知に従って、従来の人間社会や教育の仕組みは「視覚優位」で設計されているが、
そもそも芸術の持つ力は人間の五感に訴えかけるものであり、身体を通した技の伝達であり、感動の伝達です。
教育の中にこのような人間のもつ複数の感覚を動因する学びの仕組みをどのように取り入れていくのか
これは通信、通学問わず、世界中の芸術教育の大きなテーマになっている」と語られました。

また「人間は学びつづける動物であり、学びの中から人生の楽しみや喜びを見出していく動物です。通信教育の学びの中でいい仲間をみつけてください。
また伝える楽しさも味わってみてください。ご自身のライフワークとなるような楽しみや喜びをみつけてください。」
と新入生たちを激励しました。



 

そして本学名物の和太鼓教育センターによる演奏です。
祝奏が、会場中に力強く響き渡りました。





なかなか文章ではお伝えしにくいのですが、「音が聞こえる」というよりも、音そのものが身体の奥に響いてきて、心を揺さぶってくるような感じです。
和太鼓は「打てば鳴る」ごく簡単な楽器ですが、大地のエネルギーを何百年もの間、吸収して育った樹木と牛革を使用して作られた、音階もなく同じ音を再び出すことが大変困難な楽器です。しかし、技術だけでは伝えきれない、人間の魂を揺るがす程の「何か」があります。それは演奏者(打ち手)の心で大きく左右され、人間の感情(喜怒哀楽)がリアルに表現されるものです。

新たに芸術の学びをはじめる皆さん方にとって、和太鼓の振動はまるで「祝砲」のように身体とこころに大きくずっしりと轟いたのではないでしょうか。

続いて、入学生を代表して、大学院の芸術環境研究領域 比較芸術学分野に進学された楠葉 直子さんより「入学の辞」をお読みいただきました。
学部での学びを更に探究するべく、大学院生として芸術の学びを続ける決意を表明されました。(内容は後ほどご紹介します!)



そして徳山豊理事長より、歓迎の辞です。



それでは最後に、楠葉さんの「入学の辞」をご紹介いたします。




入学の辞




木々の芽が膨らみ、穏やかな季節となった今日、入学の日を迎えました。
現在のコロナ禍において、本日、入学式に参加できることに、吉川学長をはじめ、多くの教職員の方々にご尽力いただいてのことと、お礼申し上げます。

私はこの3月に、本学通信教育部芸術学部を卒業しました。学部の学習では美術作品そのものを取り上げるだけにとどまらず、日本文化や思想・哲学に及ぶ様々な課題に取り組みました。新しい知見を得ることは喜びでしたが、一方で自分の感じたことを文字にすることに悪戦苦闘し、画材に関する実技では、慣れない絵の具の取り扱いに戸惑うこともありました。

卒業論文では西洋絵画の色の表現を取り上げ、特定の配色が、慣例となった背景を探ることを主題としました。膨大な作例と、見えない結論に途方に暮れることもありました。現物を見られないという制約もありましたが、それでもひたすら絵画作品と対峙する時間は、自分の考えを深めることのできるかけがえのない時間でした。これが芸術の力と感じました。

そして卒業論文で調べたことをさらに深めたいと思い、大学院への入学を志願しました。絵画作品の背景を探る研究は、結び付けの作業と考えます。その背景の一つ一つはバラバラに見えても、どこかに糸口があり、つなげていくと作品の理解につながります。日本とは異なる文化の中ではぐくまれた西洋絵画の背景を探る思索は、絶え間ない問いと宗教的思想や社会風俗も俯瞰することが必須であり、その営みは絵画作品の理解を深めるだけでなく、広く世界を理解する一助につながっていくのではないでしょうか。

また、今年入学することの意味を、今の社会を取り巻く環境を除いて考えることはできません。自然災害、地震、そしてコロナウィルスの猛威。私自身も仕事内容が在宅勤務ではできず、得体の知れない不安に襲われる時があります。その中で、純粋に芸術作品と対峙する時間は、時にほのかな明るさをもたらす光でもありました。先ほど芸術の力と申しましたが、これからの研究の中で異なる文化の理解を深め、さらには大学の基本使命として掲げられた「多くの人々の幸せのために芸術の力を用いる姿勢」を探りたいと思います。

結びにあたり、時を同じくして入学し共に学ぶ仲間たちと、互いに切磋琢磨してそれぞれの分野で真理を探究することを望みます。これまでご指導いただいた先生方、時に厳しい批評をくれた友人、応援してくれた家族。ここに至る過程を支えてくださったすべての方への感謝の気持ちを忘れず、これからも学びを続けることをお誓いし、入学の辞といたします。

令和三年 四月四日
京都芸術大学大学院 芸術研究科(通信教育)芸術環境専攻
修士課程 芸術環境研究領域 比較芸術学分野 楠葉 直子







改めて、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

仕事や家庭など、様々な状況で生きる新入生の皆さんの生活には新たに「学生」としての生活が加わることとなります。
そんな皆さんの学生生活を教職員一同全力でサポートいたします。

実り多き学びの日々を、共に創っていきましょう!

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