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2021年11月26日

【アートライティングコース】この文字は茨に似てるの。お互いにからみあって言葉になってるけど、茨の枝みたいに、切り離すこともできる(『茨文字の魔法』マキリップ)



こんにちは。アートライティングコース非常勤教員のかなもりゆうこです。

音もなく散る落ち葉から生命の循環を感じる季節です。言葉や創造の面から思い至るのですが、人間もまた自然の一景として静かに眺めた時に、自分たちの本質について知ることができるような気がしています。

「アートライティング」について


先日、来年度の入学を考えておられる方のための「秋のオンライン一日体験入学」が開催され、コース主任の大辻都先生が『京都発アートライティング』と題したミニ講義で、美術批評、エッセイ、紀行文、食文化の取材、書店論・読書論、年史プロジェクトなどの実例を紹介しながら、芸術や文化を独自の発見と考察で記述して伝える「アートライティング」についてお話ししてくださいました。

また、参加者からの質問への応答の中で、「アートライティング」とは取り上げる対象や着眼するテーマのみならず書き上げる文章自体も作品(=アート)であるということを再確認し、その内容を他者と共有できることの重要性、そこから始まる可能性というものにも目を向けることについて触れられました。それから、文章が書けるようになるためには、読書を重ねることや繰り返し書いてみることはもちろんのこと、常日頃から「言葉に意識的になること」が大切であるということが、個人的にも胸に刻まれました。

言葉による言葉の楽しみ


さて、今回の冒頭の見出しは、パトリシア・A・マキリップによるファンタジー小説から援用しました。ストーリーも簡単に記しておきます。

主人公は王立図書館で暮らす孤児の書記ネペンテス。彼女はある時、謎の暗号文字で記された一冊の本を解読することになります。頁いっぱいに広がるもつれた茨模様のような文字には、太くて棘だらけの蔓や枝分かれの刻み目があって、ネペンテスに何かを知らせようとしています。一方、その上層の宮殿に暮らす年若い女王テッサラは急死した父王に代わって即位したばかりで、その心もとなさとともに国も揺れており、地下の洞窟の墓所に眠る初代の女王から「茨に気をつけよ」とお告げを受けます。そして、一見、取るに足らないもののように見える文書の翻訳に何故かのめり込んでいくネペンテスは、次第に運命の渦に巻き込まれ、自身の過去と素性を知ることになるのです。そこには何世紀も前の古代の王アクシスと彼を支えた魔術師ケインの伝説がつづられていました。

言葉は技巧を駆使して美しい模様を織り上げるタペストリーによく例えられますが、この作品ではさらにその織物をたたんで別の時間や場所に触れさせ、あたかも柔軟な布のように並行世界を扱っています。登場人物たちを取り巻く複数の物語も茨のように伸びて絡み合っていく構造で、読者がその仕掛けに足を踏み入れて夢中になれるというだけでなく、言葉にまつわる奥深い世界を示し、実践しているという面でも見事に創造的な一冊だと感じました。

“ファンタジー小説”と言ってしまうと軽く捉えられてしまうかもしれませんが、SFや幻想文学はどこか神聖な雰囲気を纏い、思弁的な要素を持っていますね。

言葉は思考や創造の根本にあるもの


ところで、言葉を自然科学の面から見てみると、人間の脳にはあらかじめ「言葉の秩序そのもの」が組み込まれていると言われます。それはつぎつぎと無限に文を繰り出していける樹木のようなフラクタル構造で、芸術のような創造行為にも使われ、人間の知性の根幹になっているものです。



これは茨です/これは私が見つけた茨です/これは散策が好きな私が見つけた茨です

どんどんと枝分かれさせながら複雑に増やしていくことができる文……。 根底に秩序があるからこそ、違う言語を話すもの同志でもコミュニケーションが可能です。ただし私たちは言葉を発するよりも前にまず思考を行っていて、じつはそういった内言語を脳内で発して枝のように広げ絡ませながら自問自答している時間の方が長いのではないでしょうか。つまり、私たちが言葉を使う機能はコミュニケーションのために生まれたものというより、すでに備わっていたもので、それがものを考えたり作ったりする能力につながる根本的なものであるというわけです。

「言葉とは何か」は「人間とは何か」に通じていくもの──そう考えると言葉への親しみがより湧いてきます。まさに自然による奇跡的な偶然なのですが、このふところに抱き上げられながら、細やかに且つ大きな視点からも、「言葉」を意識して過ごしたいと思っています。

アートライティングコース|学科・コース紹介

 



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※アートライティングコースは12/5(日)13:30~15:00予定です。是非本コースの学びに興味がある方はご参加ください。






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