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2022年02月10日

【染織コース】特別講義「絹糸を繭からひく、真綿からつむぐ」準備と実験をしました

皆さんこんにちは。通信染織コースの久田多恵です。スクーリングのない223日(祝日)、通信染織コースでは特別講義を計画しています。絹の糸を自分の手でつくる工程を実習する内容です。実施に先立ち、手順を確認するために講師のやまこし先生が大学に来てくださいました。(受講受付は終了しました。新型コロナウィルス感染拡大の状況により中止する場合もあります)

 

繭と道具類



 

この日の繭は先生がご自宅で育てられたものです。(特別講義では産地から購入した繭を使います)やまこし先生は桑の木を育て、作品に使う絹糸はほぼ手作りされています。

 

湯を沸かす



 

湯を沸かします。90℃と60℃、温度差のあるお湯で交互に煮ることで繭から糸が取れやすくなります。電熱器なのでなかなか80℃以上になりませんでした。繭は表面に出ている毛羽を少し取ってから洗濯用のネットにいれておきます。

 

落し蓋をして煮る



 

空気が入っているので浮いてきます。落し蓋をして全体が湯に浸るようにして煮ます。高温と中温の湯で煮る工程を繰り返し、最後は煮沸(煮絹 しゃけん)します。

 

手箒で軽く触り、引き上げる



 

 

さて、いい状態になったら(ここを見極めるのは経験が必要)手箒で軽く表面を触ると絹糸がくっついてきます。これをひっぱると最初はかなり太い糸になります。

 

きびその部分



 

 

この部分は「きびそ」といって独特の風合いを持つ糸になり、好んで使う人もいます。

 

絹糸をひく



 

どんどん引いて新聞紙の上に乗せていきます。途中、新聞紙を重ねて糸が重なりすぎないようにします。

左右の手で少しずつ撚りをかけるようにしています。撚りといっても全体に撚りが入るのではなく、ところどころを指でひねっていく要領です。

 

繭の一部を切って蛹を取り出す。卒業生も手伝ってくれました。



 

 

絹糸の作り方には、繭から糸をひく方法と、繭を一旦真綿にしてからつむぐ方法があります。繭からひいた糸は精練すると素晴らしい光沢が出て、太・細が少ないので滑らかな布を織ることができます。繭には二頭の蚕が入っていて糸をひけないもの(玉繭–今はほとんどないそうです)や、出荷の基準に満たないものもあります。そのような繭を真綿にしています。真綿からつむいだ糸には太・細があって布に織ったものは紬(つむぎ)と呼ばれます。糸自体に空気が含まれていて、紬の着物は着心地がよく、着れば着るほど風合いがよくなるといわれています。

 

アルカリ性の湯で煮沸したもの



 

 

灰汁(あく)またはソーダ灰(炭酸ナトリウム)を入れた熱湯で繭を煮沸するとふわふわの状態になります。これはアルカリの性質によってセリシン(糸の表面を覆っているタンパク質)が取れて繭がほぐれるのです。これを水でよく洗って絞ります。

 

真綿をほぐす



 

洗った真綿をほぐします。この日は濡れたままでしたが、乾燥させてから行う場合もあります。丁寧にほぐしてふわふわにすることが大切です。そういえば洗った羊毛をつむぐときも、まず最初は丁寧にほぐすところからです。

 

糸をつむぐ



 

真綿がほぐれたら少しずつ引っ張り出すと長くつながった糸ができます。ところどころ指で撚っておきます。適度な湿り気が必要で、乾いている場合は指を水で濡らしながらつむいでいきます。ためしてみたところ繭からひくよりも難しいと感じました。

手でひいた糸と、糸屋さんで買ってくる糸との違いがよくわかりました。蚕が繭を作るときの動きが糸に残っているようで、糸はまっすぐではなく自然に波打っています。糸をひく時の手の動きでも違ってくるそうです。時間をかけて糸をとる意義がわかりました。

絹糸に関する特別講義は今回が初めてです。条件が整えば次年度以降も続けていきたいと考えています。

 

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京都芸術大学 通信教育部 染織研究室ブログ
研究室が在学生・卒業生向けに情報発信しているブログです。こちらでも授業の様子や展覧会の情報などが豊富です。

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