PHOTO

PHOTO

染織コース

2022年04月13日

【染織コース】紅色ってどんな色? 紅花の染色

こんにちは。染織コースの久田多恵です。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在学生の皆さん、今年度もよろしくお願いします。新年度早々ですがすでにスクーリングが始まっています。49日(土)、10日(日)に開講された大学院の授業「技法研究 天然染料の色をさぐる」紅花の染色実習をご紹介します。

 

紅花の染色



 

紅花はキク科の一年草で染料として紅色を染める他、種からはサフラワー油を、血行促進作用のある生薬として、また口紅の材料としても知られています。紅花に含まれる色素カルタミンは水には溶けず、アルカリ性の水溶液で抽出します。熱に弱く媒染剤を使わない点から、多くの天然染料染色からみると特殊な染色方法と言えます。

*媒染剤:天然染料と繊維の仲立ちをする金属塩。アルミ、銅、鉄など、それぞれ染まる色が異なります。

 

紅花の花びら(乾燥)



 

授業では担当の石塚先生から紅花染めについてのレクチャーに続き貴重なコレクションの中から紅で染められた古い時代の裂を見せていただきました。紅花で染めた色は蛍光色を含んでいて、その衣装はほの暗い部屋の中で存在感を発揮します。古の人々は紅色の衣装を身に纏いたいと願いました。今も昔も大変高価な染料です。

 

紅で染められた衣装



 

紅花は紅色の色素だけではなく黄色の色素、サフラワーイエローも含んでいます。こちらの色素は水によく溶けます。鮮やかな紅色を染めるためには黄色の色素を取り除いておく必要があります。まず最初の作業として、紅花の花びら(乾燥させたもの)を水に浸して黄色の色素を出してしまいます。

 

黄色色素を流し出す



 

黄色の色素も取っておいて染色しました。黄色を染める染料は他にもたくさんあり、ウコンやエンジュ、堅牢度に優れたカリヤスなどがあります。美しい色という点では紅色にひけを取りませんが希少性はありません。授業では酢酸アルミで先媒染した絹布をサフラワーイエローで染めました。

 

黄色色素で染める



 

さて、いよいよカルタミンの抽出です。いろいろな方法がありますがアルカリ性の炭酸カリウム水溶液を使う方法を行いました。2時間ほど浸して十分に色素を出します。クエン酸で中和してから染液に絹の布を浸してゆっくりと動かします。熱に弱いので40C程度まで温めるように湯煎にしました。

 

 

炭酸カリウム溶液に浸す



抽出した染料液



湯煎して染色する



 

とても美しい紅色! というか鮮やかなピンク色です。この色を身に纏いたいと思う気持ちが実感できます。色サンプルの絹布を染めた後は綿布や絹布、絹糸など各自が持参した繊維を染めました。春爛漫の学内にはピンク色のシャクナゲが咲いていました。新緑はいよいよ輝きを増します。

 

紅色に染まった絹布



いろいろな素材を染める



シャクナゲ



新緑



最後に恒例の夕景。大階段上のピロティから見る夕日はいつも心に染みます。年度の始まりにふさわしい華やかな紅染めの授業でした。

 

この日の夕景



 

 ▼染織コース紹介動画(教員インタビュー)



染織コース | 学科・コース紹介



京都芸術大学 通信教育部 染織研究室ブログ
研究室が在学生・卒業生向けに情報発信しているブログです。こちらでも授業の様子や展覧会の情報などが豊富です。

この記事をシェアする