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和の伝統文化コース

2022年07月05日

【和の伝統文化コース】七夕の花

皆さん、こんにちは。和の伝統文化コースの井上です。
本学通信教育部「和の伝統文化コース」では、さまざまな日本の伝統文化を学んでいます。今回はその中から花道について、七夕をテーマにお話ししたいと思います。

七夕の植物と言えば、現在では笹をまず思い浮かべるのではないでしょうか。夏の夕方に短冊を付けた笹が揺れている景色は風情があって良いものです。いけばなの世界はどうでしょう。流派によってさまざまですが、たとえば船花器に五色の糸を結んで飾る「七夕向船」というしきたりがあります。これも実に雅な趣向です。

『いけばな嵯峨御流大鑑』(主婦の友社、1986年)



中世まで遡ると、また違う景色が見えてきます。当時の七夕には、仙翁花とよばれる撫子のような花をおもに飾っていたようです。奈良の大乗院の記録によると、文明七年(1475)七月七日の「七夕御会」には周辺寺院の協力で百瓶もの花瓶が用意され、数千本におよぶ仙翁花を前日から十五、六名で立てたとあります。
「祭礼草紙」という絵画資料にも、仙翁花と思われる花を挿した花瓶が部屋の周りに並べられている様子が描かれています。しかし、ここでの主役は花ではなく、大陸から渡ってきた唐物の花瓶の方だったようです。

「祭礼草紙」前田育徳会蔵、『いけばな美術全集』第二巻(集英社、1982年)



『立花口伝大事』という花伝書には「七夕会花の事」という条があり、詳しく書かれています。それによると七夕には「まづ七瓶の花あり」として、松、梶、楓、女郎花、仙翁花、藤袴、桔梗を立てるとしています。次に「又三瓶の添花あり」として桂、柏、萩を立てます。その後も種類の指定はないですが次々に花を立て、最終的には百三十六瓶の花を立てると書かれています。当時の皇族の日記などを見ても七夕に五十瓶を並べている記述があるので、かなりの数の花瓶を揃える風習があったことがわかります。また、このように飾り立てた空間は「花座敷」と呼ばれたようです。

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