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歴史遺産コース

2022年09月01日

【歴史遺産コース】卒業研究のテーマは身近なところから



みなさんお元気ですか。歴史遺産コース教員の石神です。

冒頭の写真は、8月16日に3年ぶりに完全な形で行われた、五山の送り火の「大文字」です。

直前まで豪雨が京都を襲い、どうなるものかと気をもみましたが、20時点火を10分遅らせたことで、雨もぴたりと上がり、無事に「大」の文字が浮かび上がりました。

この「大文字の送り火」について、本学が位置する北白川の小学生であった近藤勝重さんの調べた事がらが『北白川こども風土記』という本に掲載されています。

この『北白川こども風土記』とは、2024年に開設150周年を迎える北白川小学校の児童たちが、戦後、地元の古老への聞きとりや京大の先生に教えを請うなどして書き上げたもので、1959年に刊行されました。

その対象は大文字の送り火はもとより、北白川の遺跡や史跡、祭、習俗、暮らしぶりなど多岐にわたります。

さて近藤勝重さんが調べた「大文字の送り火」に関する内容ですが、小学生が調べたとは思えないほど、とても具体的かつ詳細なものであることに驚かされます。

例えば、大文字の送り火に関わる人々に「聞き取り調査」を行い、大の文字を描くための「火床」の数は75床であることや、燃やす「ごま木」は赤松が良いことなどを教えてもらいます。

「なんで言うたら、赤松は、さっともえて、同時にさっと消えるからや」といった古老の言葉は、実際に行事に長らく携わってこられた方だからこそ知りうる情報といえるでしょう。

そして日清戦争のときには「祝平和」の文字を点したこと、第二次世界大戦時は1943年から送り火が途絶えたことなども聞き取り、「もう戦争でもないかぎり大文字の送り火は休まず続けられていくことだろう」と文章を結んでいます。

この2年間、五山の送り火は「大文字」だけとなり、しかも数点のみを点すという異例の事態となりました。近藤さんが書いていたような「戦争」ではありませんでしたが、新型コロナウイルス感染症はそれに匹敵するものであったと言えるのかもしれません。

 

本稿でなぜ『北白川こども風土記』を取り上げたかと言いますと、先日、卒業研究の面接指導が東京外苑キャンパス・京都瓜生山キャンパスにて行われました。

歴史遺産コースの所属する芸術学科では、芸術学、歴史遺産、和の伝統文化コースの学生が研究テーマの専門領域別に指導を受けていく形態で、卒業研究に取り組んでいただきます。

一年間かけて進めていただくスケジュールとしては、3回のプレ提出・添削指導と2回の面接指導によって、本提出に向けてブラッシュアップしていきます。

 



 

第二回目の面接指導となった先日も、学生の皆さんの研究テーマに真正面から取り組まれる熱量に、圧倒され頭の下がる思いでした。

ただ入学された当初は、卒業研究のテーマ決めに困られる話をよく耳にします。そうしたとき、子どものころから見聞きしていたことや小・中学校の自由研究で調べたことがらが、実は卒業研究のテーマになりうる場合もあります。

歴史遺産コースの学生の皆さんはお住まいの地域の身近な歴史や文化遺産をテーマとされる方が多いように感じます。

実は私も中学生のころ、溜めにためた夏休みの宿題にあたふたしつつ、自由研究で地元の歴史を調べることにして、江戸時代に建てられた庚申塔と呼ばれる石造物を探して歩き回った記憶があります。

実はこの庚申塔が、いまも私の研究テーマのひとつとなっています。

こうした身近な歴史を深く調べてみることによって、新たな地域の魅力の発見にもつながることがあるかもしれません。

歴史研究のネタは私たちのごく身近にあります。

このブログをご覧の歴史好きのみなさま。ぜひ一度、ご自身の地元の歴史を見直してみてはいかがでしょうか。きっと面白い発見があると思います。本格的な調査の方法については、わが歴史遺産コースでしっかりと学ぶことができますよ。

【参考文献】

京都市北白川小学校編『北白川こども風土記』(山口書店、1959年)

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