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歴史遺産コース

2022年10月14日

【歴史遺産コース】「歴史遺産III-2民俗文化の調査方法」

皆さんこんにちは。歴史遺産コース教員の加藤詩乃です。
今回は「歴史遺産III-2民俗文化の調査方法」のフィールドワークの一部をレポートいたします。

この授業では鵜飼均先生と石神裕之先生のご指導のもと、実際に現地でモノ資料に触れながら民俗文化の調査方法を学んでいきます。
私もお手伝い人員として学生さん方の学びに同行させていただきました。

🔗歴史遺産コース|学科・コース紹介

フィールドワークの場所は、嵯峨釈迦堂(清凉寺)です。
本堂の背後に臨む愛宕山を眺めながら、まず門前で集合します。2つのチームに分かれて、それぞれ石造文化財の調査、民俗芸能の調査を入れ替えでおこないます。

私が同行したチームはまず、嵯峨釈迦堂前の道標などの石造文化財の実測、拓本実習に取り組みました。

石神先生の実演



 石神先生の実演を見て拓本の取り方や注意点を学んだ後に、各自で実際に拓本をとっていただきます。この日は日差しが強く、(紙がすぐに乾いてしまうので)拓本をとるには少し難易度の高い環境で、作業をしながら、あちらこちらで紙が剥がれる~と悲鳴が聞こえていました。

でも皆さん無事に拓本を取り終え、調査カードの作成までしっかりとやり遂げていました。

続いては、場所を狂言堂に移しまして、民俗芸能「嵯峨大念仏狂言」の調査です。演技の見学や演者への聞き書き実習、能面の実測や装着体験を行います。

複製の能面で実習します。



 1986年に国指定重要無形民俗文化財に指定された「嵯峨大念仏狂言」は京都に伝わる三つの「大念仏狂言」の一つです。これらは良忍が開いた融通念仏の「大念仏会」という法会に狂言が伴ったものです。嵯峨釈迦堂の大念仏は鎌倉時代に円覚が始めたものであると伝えられています。

清凉寺や壬生寺は京都で融通念仏信仰の拠点となった地であり、多くの人々が集まり念仏の大合唱が行われていました。
そこに狂言が行事として定着していくのは近世に入ってからと考えられていますが、面に遺された銘文から室町期にはすでに仏教芸能としての狂言がおこなわれていたことが分かります。狂言を通じて大念仏会に集まった人々に信仰を伝えてきたのです。

嵯峨大念仏狂言と壬生寺の壬生大念仏狂言は、セリフがなく、身振り手振りだけて芝居が進行する無言劇です。演目によっては、舞台の天井にかけた縄に登りながら演じたり、奈落のような舞台装置を使用するなど、アクロバティックで人の目を惹きつけます。

実習では実際に舞台上でお囃子に合わせた立ち回りの型を見せていただき、学生さんから演者の方々へ多くの質問が投げかけられました。

狂言堂でのもう一つの実習は能面の実測と装着体験です。各自が好きな能面を手に取り、調書を取った後に、能面を装着していただきました。頭にさらしを巻いて、目の位置を合わせ、しっかりと固定します。

加藤が選んだのは「蟹殿(かにどん)」で「栗」に使用する面でした。



私も体験しましたが、実際に着けてみると大変視野が限られていて、鏡の前まで歩くだけでも困難です。これであんな動きをするなんて大変…という言葉が度々聞こえました。

「嵯峨大念仏狂言」は一度継承者不足で中断を余儀なくされた経緯があります。現在は、保存会の方々の尽力で復活し、その振興及び後継者の育成を進めています。

嵯峨大念佛狂言保存会公式HP https://www.sagakyogen.info/

そうした地元の人々の努力によってさまざまな伝統文化が守られていることを、心身で体感した実習となりました。

本堂前から見た愛宕山



歴史遺産コースでは、こうしたフィールドワークの機会を度々設けております。是非皆さんも、現地だからこそ経験できるリアルな歴史・文化の学びに触れてみてください。

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