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歴史遺産コース

2020年09月05日

【歴史遺産コース】ウィズ・コロナ時代に歴史遺産を学ぶ−春・夏期スクーリング科目を振り返って−

瓜生山よりみた愛宕山の夕景



 

みなさん、こんにちは。歴史遺産コース教員の石神裕之です。日中は連日35度を記録する残暑のなか、マスクの離せない日々ですが、お元気でお過ごしでしょうか。

先日公開されました『瓜生通信』の尾池和夫学長の記事(「瓜生山歳時記#48)にもありましたように、特別な今年の「五山の送り火」も終わりました。

瓜生山も朝晩の風は心地よく、京都も少しずつ「秋」へ向っています。

 

さて、今年は新型コロナウィルス感染症対策のために、本学通信教育部でも、春期や夏期のスクーリング授業の多くがオンライン開講となりました。

世間では、大学のオンライン講義について、その「質」を問う声が多く聞かれます。例えばパワーポイントのスライドに音声を載せたものを配信する講義などは、「紙芝居」と変わらないと揶揄されたりもしています。

歴史遺産コースを含め、芸術学科は「講義系」科目が多いのですが、単に対面授業がオンライン講義に「置き換えられただけ」にならないように、いろいろな模索を続けています。

 

歴史遺産学概論を講義中の栗本先生



 

結論を先取りするなら、単調なオンライン講義を、動画配信授業(オンデマンド型)と遠隔対面授業(リアルタイム型)の組み合わせによって、新しい遠隔授業スタイルへとブラッシュアップさせるべく検討を進めているところです。

例えば、7月に行われた【歴史遺産II-1 文化財の保存と活用】。

今年も九州での豪雨災害では、人命や社会インフラはもとより「文化遺産」にも多くの被害が出ました。

日本は災害大国です。そうした地域の文化遺産を守るためには、文化財保護のしくみや保存・活用の実践活動について学んでおくことが不可欠です。それらの基礎的な事がらを学ぶのが、この科目の目的です。

これまでは二日間の講義とフィールドワークを合わせたスクーリングでした。

しかし今年は、日本の文化財保護の歩みといった基礎的な知識は、「動画配信授業(オンデマンド型)」によって事前に学ぶかたちとしました。

オンデマンド型講義で基礎知識を得て頂いたうえで、より具体的な文化財保存と活用の実践例については、リアルタイム型講義([web会議システム・Zoom]を用いた授業)を1日、受講して頂くかたちとしました。

いわゆる基礎的知識を自宅で学んだ上で、授業では応用的な演習を行う、「反転授業」と呼ばれる手法に近いものです。

事前の「動画配信授業(オンデマンド型)」では、Zoomを用いて収録した講義動画を、本学独自のシステム(airU)で配信したもので学びます。

 

「文化財の保存と活用」のオンデマンド講義の一場面



 

授業動画は、都合のよい時間に何回も動画を見ることができるため、受講した学生にも好評でした。

そして718日(土)は「リアルタイム型講義」。

文化財建造物の修理を長年されてきた津村泰範先生(長岡造形大学)に、遠隔でご出講いただき、近代建築の保存・修理の実際について学びます。

本来の対面授業では、東京丸の内周辺をフィールドワークも行っていました。

しかし今回は、映像による丸の内フィールドワークの擬似体験ということで、東京駅の公式サイトなどで、一般にも公開されている「動画」を用いて、津村先生に詳細に解説して頂くかたちをとりました。

 

TokyoStationCity公式youtubeの動画を用いて解説する津村先生(TokyoStationCity 東京駅丸の内駅舎保存・復原 – 動画 – [http://www.tokyostationcity.com/learning/station_building/])



 

 

普段何気なく見ている建造物の歴史や東京駅や東京中央郵便局などの建物保存に関する専門的な裏ばなしをお聞きできるのは、大学ならではの講義と言えます。

さらに最終講時では、文化庁の宇田川滋正先生に、現在の文化財行政の課題についてお話し頂き、後半では津村先生も交えてZoom内でのディスカッションなども行いました。

 

文化財政策について語る宇田川先生



私(京都)、津村先生(新潟・長岡)、宇田川先生(東京)、そして全国に散らばる学生たち、と多様な地域の人々が集い、文化財を守るための議論ができるというのは、まさにオンライン講義の強みと言えるかもしれません。

 

ほかにも歴史遺産コースが関わる科目が開講されていますが、例えば「史料」と「資料」の違いも含めた史料学の基本や活字の「古文書」に親しむのが目的の【文献資料講読】。

こちらも二日間のスクーリングを、「オンデマンド講義」とZoomによる「リアルタイム講義」を1日分、行うかたちで開講しました。

とくに「オンデマンド講義」では、多様な史資料形態の説明や漢文体の「古文書(活字史料)」の読み方を、日本中世史の野村朋弘先生(本学芸術教養学科)より詳細にレクチャーして頂き、事前課題に取り組みます。

 

史資料を並べて……野村先生の授業準備風景



 

活字とはいえ、「史料」を読むには歴史的背景や言葉や事項の適切な把握も必要ですし、語学のような「鍛錬」も不可欠です。そうした意味で、「繰り返し学習」のできるオンデマンド動画による学習は学生にとっても、とても有益だったようです。

 

さらにもう一例。卒業論文を書いていくにあたり、「論文」とは何か、学術研究の成果をどのように読み解けばよいのか、その手順や基礎を知ることが目的の【論文研究基礎】。

こちらも二日間のスクーリングを「オンデマンド講義」と「リアルタイム型講義」に分けて行いましたが、普段の本授業の「キモ」は、「論文」2本を読み比べて、発表するグループワーク。

今回はそれをZoomのブレイクアウトルームを用いて行いました。本コースの栗本徳子先生と私が担当しましたが、グループごとに「論文」の要旨や問題点などを活発に話し合われていて、とても頼もしく感じました。

また論文を読むときには、わからない言葉を調べることが不可欠ですし、絵巻に関する論文などは描かれた内容も見比べたりして、論文を評価していくことが重要です。

対面授業では『絵画全集』や辞書・辞典類など書籍を用いるのですが、今回は昨今充実してきている国会図書館などのデジタルアーカイブ資料や「ジャパンナレッジ」といったweb辞書・辞典サイトを用いました。

 

「四条道場で踊躍する一遍」(『一遍聖絵』国会図書館デジタルコレクション[インターネット公開・保護期間満了] https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2609343

 

こうしたデジタル資料の活用によって、対面授業のときと遜色なく、調べも進み、議論も活発で、いつになく素晴らしいグループ発表となりました。

 

【論文研究基礎】のグループワークの光景



 

以上、歴史遺産コースが主管するスクーリング科目をいくつかご紹介してきました。

 

いわゆる「ウィズ・コロナの時代」において、今後はソーシャルディンタンスを取りつつ、対面スクーリングの本格的な再開が求められていくものと思います。

例えばオンデマンド講義を事前に配信し、後日、少数人数による対面スクーリングを開講する(例えば同一講義の二日開催などにより、学生の集中を避けつつ、受講人数は減らさない)、など適切な感染対策に配慮した講義形態について検討を続けていきたいと思います。

 

そして通信教育におけるスクーリング科目のあり方はどうあるべきなのか。

対処療法的な対応に終始するのではなく、本学通信教育なりの新しい「歴史遺産の学び」のあり方を模索してまいります。

現在は秋期・冬期スクーリングに向けて着々と授業準備を進めています。またこのブログでご報告致しますので、ご期待ください!

 

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