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歴史遺産コース

2022年12月07日

【歴史遺産コース】史料講読ガイダンスを通して史料読解にトライ

こんにちは。歴史遺産コース業務担当非常勤講師の上村正裕です。歴史遺産コースを卒業するにあたっては、卒業研究への取り組みが必要です。卒業研究では年2回の面談と年3回の草稿提出が求められ、それを踏まえた指導や添削を受けた上で最終的にその成果物を卒業論文として12月初旬に提出し、1月の口頭試問を受けることになります。

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卒業研究面談指導2回目の会場入り口(外苑キャンパス。2022年8月20日撮影)



では、歴史遺産コースでどのような卒業研究に取り組めばよいのかというと、「歴史遺産」は幅広い枠組みで、一言で説明するのはなかなか難しいですが、歴史学が該当することはまちがいありません。歴史を研究する素材は様々なものがありますが、大きく分けて文献史料と出土文字資料があります。前者は歴史書や古文書など、文献に文字で書かれたものの総称で、『日本書紀』などの六国史、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で話題の『吾妻鑑』などが該当します。
後者の出土文字資料には、木簡などがあります。

今回は文献史料のお話となりますが、もっぱら歴史研究を行うときに立ちはだかるのが、漢文です。漢文は古代に限ったものではなく、中世以降においても「変体漢文」という形で使われています。
近世以降だと活字化されていない史料が多く、くずし字を読むスキルが求められますが、やはり、一にも二にも漢文読解の能力が大変重要になってくることは言うまでもありません。

例えば、『類聚三代格』という法制史料があり、古代史の政治・社会を検討する上ではこの読解なくして研究はできません。ここでは、国文学研究資料館所蔵のものを掲げておきます。

『類聚三代格』巻2、昌泰3年(900)12月9日太政官符(左。国文学研究資料館所蔵)



通常『類聚三代格』を使用する場合、吉川弘文館から出ている新訂増補国史大系本を参照するのが一般的です。『吾妻鑑』も同様ですが、そこには編者による返り点が付されており、ある程度参考になります。
ただ、平安時代以降に広まる古記録(日記)は、かなり活字化が進んでいるものの、返り点は付されていません。いわゆる白文です。もちろんそれを克服していくための辞典や参考書などはありますが、とにかく粘り強く取り組んでいくほかありません。

通信制大学だから、自分一人で孤独に頑張るしかないのか…と思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。歴史遺産コースでは、年4回程度「史料講読ガイダンス」を実施しています。
「史料講読基礎」「史料講読応用」といった史料講読系テキスト科目への取り組み方、卒業研究につながる史料収集の方法論などを各回1時間半程度で行うというプログラムで、今年は私も12月10日に担当しました。ここ数年はオンラインで実施しています。

その一端をご紹介しますと、漢文は主語+動詞+目的語という、英語と構文が同じなので、それを意識して読むようにすることが肝要ということです。また、語学と史料読解は共通するところがあって、しばらく触れていないとすぐに読めなくなってしまいます。
少しずつ読んでいくことが一番の近道といえるわけですが、この一言でまとめてしまっては元も子もないので、古記録の読解で有用な参考書やツールを少しだけお伝えしたいと思います。

まず、『日本国語大辞典』です。様々な語句が具体的な用法含めて記載されており、必須の辞典といえます。ジャパンナレッジでも見られるようでしたら、そちらを併用するとよいでしょう。なぜなら、古記録特有の読み方が分からなければ、引くことすらままならないからです。
例えば、「結政」という史料用語が出てきたとき、皆さんはなんと読むでしょうか。実はこれ、「かたなし」と読みます。ただ、ジャパンナレッジで引けば、読み方が分からなくても検索することができるのです。この結政は平安時代の政務決裁の1つです。

『日本国語大辞典』 史料の出典も示しており、有用。



また、古記録を書き残すようになった平安時代は、様々な儀式が先例に即して行われました。その儀式がどのようなものなのか、またその祭祀はいかなる背景で行われているのかを知りたい場合は、阿部猛ほか編『平安時代 儀式年中行事事典』(東京堂出版、2003年)、岡田荘司編『事典 古代の祭祀と年中行事』(吉川弘文館、2019年)などをお薦めします。

阿部猛ほか編『平安時代 儀式年中行事事典』と『事典 古代の祭祀と年中行事』



さらに、平安時代の事柄を調べたいときは、『平安時代史事典』(角川書店、1994年)が有用です。語句と儀式の流れを調べるという二本立てをこなしていくことこそが、古記録読解の基本ですので、上記辞典はぜひ手に取っていただきたいと思います。

そのほか、東京大学史料編纂所の古記録データベースや大日本史料データベース、国際日本文化研究センターの摂関期古記録データベースなど、近年様々なデータベースが充実してきています。上記の辞典類に加えて、こういった自宅でも利用可能なデータベースを駆使しつつ、地道に取り組んでいくことが、古記録読解の近道ともいえます。

古記録を使った平安時代の研究は、奈良時代などと比べるとまだ緒に就いたばかりで、様々な可能性を秘めた分野です。まずはその一歩を一緒に踏み出してみませんか。

 

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入学説明会は12月~3月まで毎月開催します。最新情報は上記説明会ページをご確認ください。

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