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2023年03月01日
【日本画コース】制作の豆知識-作品保管について
こんにちは。日本画コース講師の佐竹龍蔵です。
今回は、日本画制作をしている方あるいはこれからやってみたいと思っている方にとって避けては通れない「完成した作品をどのように保管するか」という内容です。
いつもはつくることが話題の中心になるので、たまにはつくった後のことに目を向けてみたいと思います。
日本画の場合、よくある作品劣化の主な原因は次の4つが挙げられるかと思います。
これらの劣化は一度起こってしまうと修復が困難な場合が多いので、何よりもまず劣化させないことを考えて保管します。物質である以上は時間の経過とともに少しずつ劣化していくものですが、正しく保管して作品の状態をできるだけ良好に維持していきましょう。
完成した作品は家の中にあると邪魔なことこの上ないのですが、大切な作品なので保管する場所は慎重に決めましょう。
避けるべき場所としては、キッチン・喫煙室・屋外の倉庫などです。煙や匂いが充満する場所や温度差が大きくなる場所、湿度が高くなる場所は避けるようにします。人の出入りが少なく空気がこもっている部屋よりは、普段から人が出入りして換気や掃除が行き届いている部屋の方が望ましいです。また、大きい作品は倒れてくると危ないので、寝室や子ども・ペットのいる部屋は避けた方がいいかもしれません。
ちなみに同じ部屋の中でも、作品を立てかける壁は屋外に面した壁よりも、隣の部屋や廊下など屋内に面した壁の方が温度の変化が小さいので保管に適しています。完璧な条件の部屋はないかもしれませんが、できるだけ条件を満たす場所に置くようにしましょう。
作品を保管する際のポイントとして次の3つを抑えておきましょう。
紫外線は説明するまでもなく様々な物質の劣化の原因になります。直射日光が当たらない場所に作品を置く、紫外線カットのカーテンを使うなどして対策しましょう。また、通気性が悪いと湿気や埃が溜まりやすく、カビが発生する原因になります。作品を置く際も湿気が溜まらないように、作品の下にすのこ等を敷く、壁と作品を密着させない、作品同士を密着させないなど、できるだけ通気性をよくしましょう。
梱包には様々な方法がありますが、適当に包むのではなく作品保護を第一に考えた梱包をしましょう。一例として僕が普段やっている梱包方法をご紹介します。
まずは埃の付着を防ぐためにクラフト紙で作品全面を覆います。画面側だけでもいいと思うかもしれませんが、作品の保管状況によってはパネル裏に埃が溜まって、そこからカビが発生する原因になるので、作品全面を覆うことをお勧めします。
次に、紙だけの梱包ではぶつけた際に破損する可能性が高いので、緩衝材で作品の画面をカバーします。エアキャップでもかまいませんし、大切な作品の場合は段ボールで箱を作ってもいいと思います。箱があれば作品と一緒に乾燥剤を入れておくこともできます。
緩衝材での梱包ができたら完了です。次の項で説明しますが、開梱しやすさも大事になってくるので過剰な梱包は避けましょう。
どんなに完璧に梱包できたと思っても長期間放置しているといつの間にか劣化していることがあるので、定期的に梱包を解いて目視で作品の状態を確認しましょう。万が一劣化が生じていても被害の少ないうちに対処ができますし、作品を新鮮な空気に触れさせて湿気を取り除くことでカビの発生を抑制することができます。天気の良い日に風通しの良い場所で虫干しをするのも効果的です。
額装していると展示中は破損や紫外線などに対して安心感がありますが、保管する時は絶対安全というわけでは無いので気をつけましょう。長期間保管する場合は定期的に状態を確認するのが望ましいです。自分の作品ですが、額装した作品を倉庫に3年ほど放置していたら額の中でカビが大量発生していたことがありました。
博物館などのプロの現場は違うと思いますが、個人でできる範囲では確認に勝る劣化対策は無いというのが10年ほど試してきた現時点での実感です。
自分の作品が杜撰な管理で劣化してしまったということであれば自業自得ということで済ませられるかもしれませんが、自分の作品を購入してくれている人のことを思うと作品の最適な保管方法を考えておくのも作家の責任の一つだと思います。自分にとって、あるいは誰かにとって大切な作品を、できるだけ長く残していきましょう。
※今回紹介した保管方法は、日本画コースの授業で扱う「パネルに水張りした麻紙に、墨・水干絵具・岩絵具等で描かれた日本画作品」に対する保管方法です。異なる技法や素材でつくられた作品に関してはそれぞれに合った方法で保管してください。また、今回紹介した保管方法は作品の永続的な保護を保証するものではありませんのでご了承ください。
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今回は、日本画制作をしている方あるいはこれからやってみたいと思っている方にとって避けては通れない「完成した作品をどのように保管するか」という内容です。
いつもはつくることが話題の中心になるので、たまにはつくった後のことに目を向けてみたいと思います。
何から作品を守るのか
日本画の場合、よくある作品劣化の主な原因は次の4つが挙げられるかと思います。
- 物理的な破損(ぶつける・引っ掻く・濡れるなど)。
- 紫外線による支持体の劣化および絵具の褪色。
- 湿気や埃によるカビの発生。
- 虫食い、虫の糞や死骸。
これらの劣化は一度起こってしまうと修復が困難な場合が多いので、何よりもまず劣化させないことを考えて保管します。物質である以上は時間の経過とともに少しずつ劣化していくものですが、正しく保管して作品の状態をできるだけ良好に維持していきましょう。
作品はどこに置くべきか
完成した作品は家の中にあると邪魔なことこの上ないのですが、大切な作品なので保管する場所は慎重に決めましょう。
避けるべき場所としては、キッチン・喫煙室・屋外の倉庫などです。煙や匂いが充満する場所や温度差が大きくなる場所、湿度が高くなる場所は避けるようにします。人の出入りが少なく空気がこもっている部屋よりは、普段から人が出入りして換気や掃除が行き届いている部屋の方が望ましいです。また、大きい作品は倒れてくると危ないので、寝室や子ども・ペットのいる部屋は避けた方がいいかもしれません。
ちなみに同じ部屋の中でも、作品を立てかける壁は屋外に面した壁よりも、隣の部屋や廊下など屋内に面した壁の方が温度の変化が小さいので保管に適しています。完璧な条件の部屋はないかもしれませんが、できるだけ条件を満たす場所に置くようにしましょう。
作品の保管方法
作品を保管する際のポイントとして次の3つを抑えておきましょう。
- 直射日光が当たらない通気性の良い場所に保管する。
- 湿気・埃・キズを防げるように梱包をする。
- 作品の状態を定期的に確認する。
①直射日光が当たらない通気性の良い場所に保管する。
紫外線は説明するまでもなく様々な物質の劣化の原因になります。直射日光が当たらない場所に作品を置く、紫外線カットのカーテンを使うなどして対策しましょう。また、通気性が悪いと湿気や埃が溜まりやすく、カビが発生する原因になります。作品を置く際も湿気が溜まらないように、作品の下にすのこ等を敷く、壁と作品を密着させない、作品同士を密着させないなど、できるだけ通気性をよくしましょう。
②湿気・埃・キズを防げるような梱包をする。
梱包には様々な方法がありますが、適当に包むのではなく作品保護を第一に考えた梱包をしましょう。一例として僕が普段やっている梱包方法をご紹介します。
まずは埃の付着を防ぐためにクラフト紙で作品全面を覆います。画面側だけでもいいと思うかもしれませんが、作品の保管状況によってはパネル裏に埃が溜まって、そこからカビが発生する原因になるので、作品全面を覆うことをお勧めします。
次に、紙だけの梱包ではぶつけた際に破損する可能性が高いので、緩衝材で作品の画面をカバーします。エアキャップでもかまいませんし、大切な作品の場合は段ボールで箱を作ってもいいと思います。箱があれば作品と一緒に乾燥剤を入れておくこともできます。
緩衝材での梱包ができたら完了です。次の項で説明しますが、開梱しやすさも大事になってくるので過剰な梱包は避けましょう。
③作品の状態を定期的に確認する。
どんなに完璧に梱包できたと思っても長期間放置しているといつの間にか劣化していることがあるので、定期的に梱包を解いて目視で作品の状態を確認しましょう。万が一劣化が生じていても被害の少ないうちに対処ができますし、作品を新鮮な空気に触れさせて湿気を取り除くことでカビの発生を抑制することができます。天気の良い日に風通しの良い場所で虫干しをするのも効果的です。
額装していると展示中は破損や紫外線などに対して安心感がありますが、保管する時は絶対安全というわけでは無いので気をつけましょう。長期間保管する場合は定期的に状態を確認するのが望ましいです。自分の作品ですが、額装した作品を倉庫に3年ほど放置していたら額の中でカビが大量発生していたことがありました。
博物館などのプロの現場は違うと思いますが、個人でできる範囲では確認に勝る劣化対策は無いというのが10年ほど試してきた現時点での実感です。
おわりに
自分の作品が杜撰な管理で劣化してしまったということであれば自業自得ということで済ませられるかもしれませんが、自分の作品を購入してくれている人のことを思うと作品の最適な保管方法を考えておくのも作家の責任の一つだと思います。自分にとって、あるいは誰かにとって大切な作品を、できるだけ長く残していきましょう。
※今回紹介した保管方法は、日本画コースの授業で扱う「パネルに水張りした麻紙に、墨・水干絵具・岩絵具等で描かれた日本画作品」に対する保管方法です。異なる技法や素材でつくられた作品に関してはそれぞれに合った方法で保管してください。また、今回紹介した保管方法は作品の永続的な保護を保証するものではありませんのでご了承ください。
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