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日本画コース

2021年06月28日

【日本画コース】素材編①~天然の鉱物を砕いて作る、岩絵具~

こんにちは、日本画コース業務担当非常勤講師の山本雄教です!
今回は岩絵具をテーマに少し書かせていただきます。

まずは早速ですがこちらの写真を見ていただきたいと思います↓

これ、なんだか分かりますか??
正解は…

岩絵具の「緑青」の元となる孔雀石(マラカイト)でした!

岩絵具の歴史




岩絵具はその名の通り、この孔雀石のような天然の鉱石や岩石が原料で、それを細かく砕き粉状にしたものです。これに膠(動物の皮などを煮出して作られる溶液)を混ぜ合わせて使用します。
その歴史はとても古く、例えば高松塚古墳の壁画にも、現在私たちが使っている「緑青」と変わらないものが使われています。

▼飛鳥歴史公園/高松塚古墳
https://www.asuka-park.go.jp/area/takamatsuzuka/tumulus/

▼ニュース記事/産経新聞・高松塚古墳壁画の岩絵具の原料確認
https://www.sankei.com/article/20150328-5PNZGJGSEBPUHMFT4XIHLVZGPU/

また、紀元前2万年~紀元前1万年前に描かれたとされるラスコーの壁画も天然の顔料に動物のゼラチン質を混ぜることで描かれています。

▼Google Arts&Cultuer Grotte de Lascaux(ラスコーの壁画)
https://artsandculture.google.com/search?q=Grotte%20de%20Lascaux&hl=ja

▼YOUTUBE:国立科学博物館「世界遺産ラスコー展」



 

岩絵具を使うということは、気づかないうちに紀元前の絵を描いていた人たちとダイレクトに繋がっているといえるかもしれません! 果てしないロマン…。
そしてそんな素材をどう活かすのか、先人が試行錯誤を重ねてきたのが、皆さんが大学で学ぼうとしている日本画の様々な技法や描き方なのです。

岩絵具の番数



再び「緑青」とマラカイトくんの登場。
絵具の名前の横に数字にご注目下さい(6番)。これは岩絵具の粒子の大きさを表す数字で、番号が少ないほど粒子が荒く、数字が大きいほど粒子が細かいものになります。
そしてこの粒子の大きさで色が大きく変わります。

左から順番に「天然松葉緑青」の6番、8番、10番、白(一番細かいもの)です。
粒子が荒いほど色が濃く、細かくなっていくと色が淡くなっていきます。

こちらは山田真澄先生が絹本に描かれたもので、花の青色は9番の岩絵具で描かれています。
粒子の少しざらついた質感がお分かりいただけるでしょうか?
粒子の違いによる色や質感の違いも岩絵具ならではの魅力です。

様々な岩絵具とその原石


日本画コース研究室にある原石コレクションと、その色をいくつか紹介していきたいと思います。

こちらの青い石は…
こちらは「瑠璃色」の元になる瑠璃石(ラピスラズリ)でした!
油絵具などでは「ウルトラマリンブルー」と呼ばれるもので、いわば宝石を砕いたものですので非常に高価な素材でもあります。そして同じ写真に参考として写しているのが、日本画で青色といえば! といえる存在の「群青」です。
こちらは藍銅鉱(アズライト)が原料になっていますが、こちらも非常に美しい色でありつつも、お値段的には使うのに少々勇気がいる希少な絵具です。
日本画を学んだことがある人が青い絵を見ると、どこかで絵具代が気になってしまうのが玉に瑕です…(笑)

ちなみに…この写真の群青には実は秘密があります(その秘密については後ほど)。

続いてこちらは…

こちらは絵具の名前通りの辰砂(しんしゃ)です。日本では「丹」とも呼ばれてきました。
ちなみにこちらは猛毒の水銀の原料にもなる鉱物です。
天然岩絵具は接種すると体によろしくないものもありますので、日本画を描く際はコロナが落ち着いても手洗いはこまめにしっかりやりましょう!

人造岩絵具




最後に紹介するのがこちら。
天然の石っぽくない感じがするこの欠片は…

新岩絵具とも呼ばれる、人造岩絵具の元になる欠片でした。

科学的に着色した色ガラスを砕いて作られるのが人造岩絵具です。
人造岩絵具は近代になってから作られたものなのですが、天然では存在しない様々な色があったり、天然よりも比較的安価であったりと、日本画家の制作の幅を広げてくれた存在です。

そして先ほどの群青は実は…

天然ではなく人造岩絵具の群青だったのでした。(石は天然のアズライトです)

今回は岩絵具について紹介させていただきました。
今後も色々と日本画について紹介していきますので、どうぞお楽しみに!

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