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芸術学コース

2023年04月12日

【芸術学コース】美術について学んでみませんか



 4月になりました。皆さまいかがお過ごしですか。芸術学コースの田島です。春の暖かさが感じられるようになり、外出もしやすくなりました。美術館、博物館に行かれた方、これからお目当ての展覧会に行く予定の方も多いのではないでしょうか。

 私は少し前に、会場近辺の桜見物も兼ねて「春の院展」(第78回、日本橋三越本店)※1にいってきました。友人の入選作を見に毎年足を運んでいますが、力作揃いなのはもちろんのこと、展示数も多く見応えがあり、この時期の楽しみのひとつになっています。専門ではないこともあり、いつもリラックスして好きなように自由に作品を見ています。

※1 現在は巡回展を開催中。詳細はこちら


 例えば上のチケットにある作品(小田野尚之《次の駅へ》)※2について、まず最初に想像するのは、都会とは異なる、ゆっくりとした時間の流れです。どこかの田舎で目にするようなローカル電車の走るのどかな風景は、観る人を穏やかな気持ちにさせるとともに、慌ただしい毎日を顧みることを促しているようにも感じます。

※2
名古屋展のチラシに少し大きめに掲載されていました。拡大して見ることができます。

https://www.matsuzakaya.co.jp/nagoya/museum/exhibition/2023_harunoyinten/paper/#target/page_no=1

そしてもうひとつ、私が惹きつけられたのが、電車が画面中央の明るい方へ向かって進んでいることです。中心に収斂していく構図によって光の中へ電車が吸い込まれていくようにも感じられ、《次の駅へ》というタイトルとも重なって、これから向かう次の未来が明るいものであるように思え、より強く印象に残ります。穏やかさとともにどこか希望を感じさせる、そのような1枚としてこの絵を堪能しました。皆さんはどうでしょうか。

 1枚の絵に対峙するとき、何を思い、どんな想像をしますか? タイトル、作者、制作年等の情報や手持ちの知識をもとに想像を膨らませたり、色や形、画面構成や描かれ方など視覚的な情報から創り出される印象、それから想起される記憶や感情を味わったり、各自いろいろな体験をするでしょう。あるいは、実際に絵を描いたことがある方であれば、表現方法や技法など造形的特徴に注目し、その技量を吟味したり、画家がどんな画面を創ろうとし何を伝えようとしているのか想像することもできるのではないでしょうか。

 このように見ていくだけでも十分にその魅力や面白さを楽しむことができるのですが、一方で、多くの作品を見るうちに、想像力や感情に依る作品鑑賞では満足できなくなってきた方、飽き足らないと感じるようになった方もいるのではないでしょうか。もう一歩踏み込んで作品を理解したいと思うようになったら、その時は、学問として学ぶこと、つまり大学で美術を学ぶことを考えてみてはいかがでしょうか。

 絵画などの美術作品を含め芸術とよばれるものは、人間の文化的行為によって生じたものであり、人間活動の産物です。したがってその背景には様々な事情があり、作品は作者と注文主、受容者、そしてそれらをとりまく環境-画家や注文主の個人的事情や関係だけでなく、作られた当時の社会的、経済的、宗教的、文化的な様相を含め―これらが複雑に絡み合った関係の上に成立しています。

なぜその作品が描かれたのか、それはどのように見られていたのか、どんな意味を伝えようとしているのかといった疑問は、この関係性を紐解いていくいくことで明らかになります。対象が過去の作品であればそれは歴史的な研究となり、先人が積み重ねてきた研究をあたり、当時の史料を読み解くといった作業も必要になるでしょう。それには方法が重要です。他にも例えば、対象を分析するのに用いる方法やアプローチの方法、どうやって文献を調査し、入手した情報をどのように分類整理し記述するか、仮説に対する検証の仕方や成果を論文としてまとめる方法などがありますが、大学では、体系化された知識だけでなく、このような研究の方法も学びます。少し難しく思われるかもしれませんが、卒業論文というゴールに向けて研究を進めていく過程で身につけることができます。

これらを踏まえて一枚の絵を読み解いていくことで、それがとても豊かなもの、かけがえのないものにみえてきますし、作品を見ることの新たな面白さに気づくこともできるでしょう。

 以上、簡単ですが、大学で美術を学ぶことについて述べてみました。

それは地道な作業の積み重ねであり、かなりの時間と労力を要します。働きながら、あるいは子育てしながら、介護をしながらといった環境では難しいのではと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、経験者として述べるなら、成果を論文としてまとめあげることができたとき、その達成感と満足感はきっと想像以上に大きなものとなるでしょう。

新学期がスタートするこの時期、何か新しいことを始めたいと考えている方がいらっしゃいましたら、ぜひ大学で美術を学ぶということもひとつの選択肢として検討していただければうれしく思います。

🔗芸術学コース|学科・コース紹介



🔗芸術学コース紹介動画(教員インタビュー)



🔗芸術学コースコースサイト Lo Gai Saber|愉快な知識

 

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