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日本画コース

2023年06月21日

【日本画コース】教員インタビュー「風景写生、制作の取り組み方」

こんにちは、日本画コースの岸本です。                                                   先月に引き続いて今回は3年次のテキスト科目、スクーリング科目をご担当いただいております池庄司 淳先生にお話を伺いしました。また、池庄司先生がご担当のスクーリング科目【日本画V-4(風景写生)K】のご紹介も兼ねてお届けします。

「日本画Ⅴ-4(風景写生)K」のスクーリング授業は出町柳、貴船口、鞍馬などの指定された地点で自由に風景を描く学外写生で、計4日間(週末土日×2週)にわたって開講されます。

こちらは二ノ瀬の駅



岸本:3年次から始まる風景の授業は描くテーマを自分で決めるところから制作が始まりますね。自由度が高い反面、入学初年次(1〜2年次)までの科目に比べると、考えることもかなり増えてくるように思います。風景のように広がりのある空間では何処までを描いていけばよいのかという構図の部分で、苦労される方も多いように感じます。

構図の取り方について先生の方からアドバイスいただけますか?また、先生がご自身で風景を描かれる際はどのように、構図を決定しておられますか?

池庄司:現場での写生は紙を継いで描くので、画面が今まで以上に大きくなり全体を見渡す事が難しくなります。いきなり描き始めてもなかなか捉えられません。その前に描く場所が決まったらクロッキー帳などに小さい枠を描いてその中に当てはめてみる。縦画面か横画面かその中にどう入れるかを何パターンか描いてその中で一番良いと思うのを選びそれを基に写生に移る方が進めやすいと思います。これを「小下図」と言います。何処を描くかは時間をかけて選びます。ぶらぶら歩きながらピンときた所を片っ端から写生して何枚か貯まったらそれを基に「小下図」、「大下図」へと進めます。風景写生はできるだけ時間をかけて選ぶのが良いと思います。

構図決めの相談の様子。(写真右 池庄司 淳先生)



4日間かけてじっくり向き合った写生を、実際の作品の比率に当てはめて構図を決定してゆきます。

岸本:風景画の授業では、40号の作品を描くことになっています。1〜2年次の課題で指定されているサイズと比較すると、画面の面積は一気に大きくなります。受講生の中には大きい画面を前にどう手を入れていけば良いのかわからない、という方もおられるのではないかと思います。

制作する気持ちの面で学生のみなさんに前向きなメッセージなどありますでしょうか。

池庄司:いきなり40号というのは大変でしょうが、その前に20号で制作していると思います。それでも制作枚数が少ない分不安でしょう。でもこれも良い経験と思ってチャレンジしてください。

小さい絵ばかり描いていても大きい絵は描けません。大きい絵が描ければ小さい絵も描けます。あまり先の事は考えず楽しんでください。制作中は何度か絵から離れて眺め色調の流れや何処か変に浮いていないか全体感を大切にして進めましょう。壁とか椅子に立てかけて2〜3m位離れると良いです。

 

写生の現場での講評の様子



写生のサイズもかなり大きくはありますが、こうして離れてみると画面全体が把握できるようになります。

 

40号サイズの参考作品



受講生の皆さんが3年次に取り組む課題と同じ大きさです。

 

左が40号Fサイズの割パネで右が6号F



パネルのサイズ感だけ見るとご覧の通りです。です。

岸本:最後の質問になります。スクーリングでは緑を多用した写生が多く、写生の現場を見てまわられている際も色の使い方に関するアドバイスを何度か仰っていたように覚えております。今回のスクーリングを経て、受講生の皆さんに風景画の色彩における考え方を改めてここで頂ければと思います。また、先生ご自身の制作ではどのような感覚で色を選択していらっしゃるかもお伺いしたいです。

池庄司:一言で緑色と言ってもその色幅は無限です。周りが緑色ばかりだからといってその系統の色だけでなくそれ以外の色も積極的に使いましょう。黄色,紫色,青色,茶色系も使えますし場所によっては赤系も使えます。自分が持っている絵具の全てを使って描く気持ちで自由に色彩表現してください。自身の色彩観としては現実の色だけではなく内面的に感じた色彩表現に重きをおいて制作しています。



これらは参考作品の一部です。画面全体は青系統で描かれておりますが、要所的に赤や紫の様な色が差し込まれているのがわかります。また、画像では少しわかりにくいかもしれませんが、水面や石垣の部分には多様なマチエールが施されています。この辺りは2年次の授業を受けた方なら触れてきた部分ですね。

インタビューは以上になります。池庄司先生、ありがとうございました。

風景写生のおさらいと、今後に続く風景制作の授業に向けて、具体的にアドバイスをいただきました。受講生の皆様も初めて向き合う大きな画面を楽しんで制作していただければと思います。



最後にこちらは、ブログの途中に紹介した参考作品の元になった景色です。出町柳の駅を降りた近くにある景色なので、お近くまで来られた際は是非探してみてください。

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