和の伝統文化コース
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2023年08月08日
【和の伝統文化コース】スクーリング「伝統文化研修」のご紹介
みなさん、こんにちは。和の伝統文化コース教員の葛西周です。本コースには、伝統文化を実践的に体験することを目的とした「伝統文化研修」というスクーリング科目があります。今年度は横浜能楽堂のご協力のもと、初めてオンラインで実施し、全国各地からの参加がありました。今回はその内容をご紹介します。
1996年に開館した横浜能楽堂には、東京大空襲をくぐり抜けた、関東に現存する最古の能舞台が移築・復原されています。まずは同館プロデューサーの遠山香織さんにバーチャルツアーで館内をご案内いただき、能楽師が登場する際に揚幕を上げる鏡の間や、地謡・後見が舞台に出入りする切戸口、大鼓の革を火鉢で焙じて乾燥させるための焙じ室など、普段見られないところを見せていただきました。
続いて、観世流シテ方能楽師の谷本健吾先生より、能道具や仕舞・謡について実演を交えて講義いただきました。横浜能楽堂所蔵の能面からは、小面(こおもて:若い女性の面)と増女(ぞうおんな:天女や女神などの面)の能面を比較説明していただきました。一見似ているようにも感じられる女面ですが、並べてみると毛描きや目の形が異なり、随分と違った表情をしていることがわかります。
さらに唐織や縫箔、半切といった能装束をご紹介いただき、解説をしながら実際に「羽衣」のシテ・天女の腰巻姿の着付けをしていただきました。袖を通さずに縫箔を腰に巻くことで、天女が羽衣を脱いで水浴びをしている様子を表しています。通常は前・後・補佐の三人がかりで一人に着付けるところ、今回は谷本先生おひとりで奮闘していただきましたが、立体感や紐結び、裾捌きなど外から見えない細部に至るまで考慮しながら、重さのある装束を着付ける技術もまた、日々の積み重ねの賜物であると改めて感じました。
能には大道具さん・小道具さんがいないので、能の作り物(舞台装置)はシテ方の能楽師さんによって組み立てられています。例として、桜の立木の作り方を実演していただきました。竹の土台に「ぼうじ」という細長いさらしを巻いていくのですが、生地の薄い部分やギザギザした部分を隠しながら、一巻きごとにシワを伸ばして美しく丁寧に巻かれていたのが印象的でした。
能道具の説明のあと、谷本先生に仕舞と謡を実践していただきました。仕舞は「屋島」のクライマックスの、源義経が平教経との激戦の様子を再現する場面で、舞台を目一杯使った勇壮で迫力のある舞振りに圧倒されました。謡は「羽衣」のキリの一節を抜き出し、谷本先生がお手本を示されてから、受講生もそれぞれの場所で声を出して挑戦しました。
最後に、2016年に横浜能楽堂で開催された「能の五番 朝薫の五番」第2回公演より能「羽衣」(浅見真州)と組踊「銘苅子」(宮城能鳳)を取り上げ、同館プロデューサーの大瀧誠之さんから見どころをご紹介いただいた上で、記録映像を鑑賞しました。舞台裏の創意工夫や緻密な準備について学んだことで、芸能がいかに伝承され、その公演がどのように成立しているか、より多面的に考えられるようになったのではないでしょうか。
授業後に実際に横浜能楽堂に足を運んでみたと、複数の受講生から報告を受けたのは何よりの喜びでした。伝統芸能をもっと味わいたいという意欲が高まり、身近な芸能実践の場に足を運ぶきっかけとなるような、刺激的なオンライン科目を今後もお届けします。
和の伝統文化コース|学科・コース紹介
1996年に開館した横浜能楽堂には、東京大空襲をくぐり抜けた、関東に現存する最古の能舞台が移築・復原されています。まずは同館プロデューサーの遠山香織さんにバーチャルツアーで館内をご案内いただき、能楽師が登場する際に揚幕を上げる鏡の間や、地謡・後見が舞台に出入りする切戸口、大鼓の革を火鉢で焙じて乾燥させるための焙じ室など、普段見られないところを見せていただきました。
続いて、観世流シテ方能楽師の谷本健吾先生より、能道具や仕舞・謡について実演を交えて講義いただきました。横浜能楽堂所蔵の能面からは、小面(こおもて:若い女性の面)と増女(ぞうおんな:天女や女神などの面)の能面を比較説明していただきました。一見似ているようにも感じられる女面ですが、並べてみると毛描きや目の形が異なり、随分と違った表情をしていることがわかります。
さらに唐織や縫箔、半切といった能装束をご紹介いただき、解説をしながら実際に「羽衣」のシテ・天女の腰巻姿の着付けをしていただきました。袖を通さずに縫箔を腰に巻くことで、天女が羽衣を脱いで水浴びをしている様子を表しています。通常は前・後・補佐の三人がかりで一人に着付けるところ、今回は谷本先生おひとりで奮闘していただきましたが、立体感や紐結び、裾捌きなど外から見えない細部に至るまで考慮しながら、重さのある装束を着付ける技術もまた、日々の積み重ねの賜物であると改めて感じました。
能には大道具さん・小道具さんがいないので、能の作り物(舞台装置)はシテ方の能楽師さんによって組み立てられています。例として、桜の立木の作り方を実演していただきました。竹の土台に「ぼうじ」という細長いさらしを巻いていくのですが、生地の薄い部分やギザギザした部分を隠しながら、一巻きごとにシワを伸ばして美しく丁寧に巻かれていたのが印象的でした。
能道具の説明のあと、谷本先生に仕舞と謡を実践していただきました。仕舞は「屋島」のクライマックスの、源義経が平教経との激戦の様子を再現する場面で、舞台を目一杯使った勇壮で迫力のある舞振りに圧倒されました。謡は「羽衣」のキリの一節を抜き出し、谷本先生がお手本を示されてから、受講生もそれぞれの場所で声を出して挑戦しました。
最後に、2016年に横浜能楽堂で開催された「能の五番 朝薫の五番」第2回公演より能「羽衣」(浅見真州)と組踊「銘苅子」(宮城能鳳)を取り上げ、同館プロデューサーの大瀧誠之さんから見どころをご紹介いただいた上で、記録映像を鑑賞しました。舞台裏の創意工夫や緻密な準備について学んだことで、芸能がいかに伝承され、その公演がどのように成立しているか、より多面的に考えられるようになったのではないでしょうか。
授業後に実際に横浜能楽堂に足を運んでみたと、複数の受講生から報告を受けたのは何よりの喜びでした。伝統芸能をもっと味わいたいという意欲が高まり、身近な芸能実践の場に足を運ぶきっかけとなるような、刺激的なオンライン科目を今後もお届けします。
和の伝統文化コース|学科・コース紹介
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