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書画コース

2023年09月04日

【書画コース】水墨画科目の紹介「構図と空間を学ぶ」

水墨画では「対(つい)」の関係が大切にされます。

書画コースの画の専門科目に「構図と空間」を学ぶものがありますが、この授業では、書画に用いる筆や硯などの文房具(「文房四宝」等と呼ばれます)を題材にして、「実虚」「賓主」「疎密」「呼応」など「対」の関係を考え、空間を構成していきます。

文房具が題材ですから、組み合わせや配置を自由に出来るわけです。テキストには画譜や浮世絵、歴代の作品から東洋を代表する構図法が紹介されていますので、まずはそれらを学び、各自の作品を構成する力を養います。



今回は、東洋的な「構図と空間」を取り上げつつ、水墨画で文房具を描いてみたいと思います。担当は書画研究室の渡邊です。

●歴代の構図法


さて、前述のような東洋を代表する構図法には、どういったものがあるのでしょうか。歴代の作品から、いくつか見てみましょう。



これらの構図法のうち、どれが題材とする文房具を特に活かせるのか吟味していきます。

なお、実際の授業では、縦位置と横位置の二作品を課題として設定しています。上記の各構図法と題材との相性のほか、縦位置では奥行きや上下の流れ、横位置ではリズム感や時間的な経過等、画面の形式を活かした表現を考慮することも重要です。


●実際の制作


そして、いきなり作品を描き始めるというのも、その時の情況を反映させやすい等の良さがありますが、簡単な画稿を用意することや、試作を重ねることによって、作品の完成度を上げたり、表現の幅を広げたり出来るでしょう。

構図を何通りか考えてみます。また、歴代作品の構図を参考にしつつ創作を行う場合も、無論、自身の作品には自身の工夫が必要になります。画面の辺や角の押さえ方や、余白との兼ね合いを見ながら、題材の配置を決めていきます。

●文房清玩


以上を踏まえて、水墨画で文房具を描きました。いずれも、物の大小によって「賓主」の構図をねらいつつ、物が離れるところと集まるところを作って「疎密」を意識しています。また余白は、画面上下で大小の違いを出しました。「対」の関係は単体で用いることも出来ますが、組み合わせることで様々な題材がより活きるといえるでしょう。

授業の課題の中では落款や押印は不要ですが、「作品」ということを念頭に置くと、どこに落款を書いてどこに印を押すかを考慮することも大切になります。ところで作品に描いた文房具は、恩師からいただいたものや、かつて旅先で手に入れたものなど、愛着のある品々です。これらを題材として画を描くと、改めてその造形や特性を見つめることになりますが、今回紹介した科目は「構図と空間」を学ぶことの他に、書画を書く(描く)にあたって用いる文房具を、見つめていただきたいという願いもあります。文房具を愛でることも、書画の楽しみの一つであるわけです。

「文房清玩」等といいます。ここで、水墨画をご担当の塩見貴彦先生に、愛用の文房具をお見せいただきたいと思います。鯰の文鎮は、地震の研究で知られる、本学前学長の尾池和夫先生が作られたものを、雛型にして鋳造されていて、水墨画科目での実演の際には活躍しているのをよく見かけます。筆には「養吾」と銘が刻まれており、塩見先生は筆を購入した際にはこの言葉をよく彫ってもらうのだそうです。孟子の「養吾浩然之気」に由来するとのことで、先生の、筆に対する信頼が窺えます。陶硯は中国の蚤の市で、造形や釉薬の色に惹かれて購入されたようです。良寛が残した「心月輪」の言葉を引き合いに、この円い陶硯を愛でながら柔軟な心を持ち続けたいと仰います。

作品が生み出される書斎の空間が、どのような文房具から構成されているのかが垣間見えたと思います。

以上、今回の書画コースブログでは「構図と空間」の授業について紹介し、そこで画題となる文房具のお話しをしました!

―附―

(塩見先生の文房清玩を詠んだ拙詠二首)

「洛北草堂文房清玩」
文房不必用千金、洛北草堂興趣深。
鯰搖乾坤安紙面、翰描山水養吾心。
(大意:文房具には必ずしも大金は必要ない。洛北草堂では、このような面白いことがある。鯰は天地を揺るがすが紙面を鎮め、筆は山水を描いて浩然の気を養う。)

「題翠雨樓陶硯」
文房時有異、曾度禹邦人。
磨墨從圓滿、自心如月輪。
(大意:書斎に時々変わったものがある。かつて中国へ渡った人。墨を磨る動作が円満の形に従えば、自ずから心も月輪のようになる。)

 

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