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和の伝統文化コース

2023年09月08日

【和の伝統文化コース】「西芳寺(さいほうじ) – 夏の苔寺で心を整える」

残暑が続きますが、長月となり虫の音に涼やかな秋を感じるようになりました。
和の伝統文化コースの青木です。この夏いかがお過ごしでしたでしょうか?



先日、暑い京都で涼を求めて、聖徳太子の別荘地と伝わる世界文化遺産・特別名勝及史蹟の西芳寺「苔寺」へ参拝に行って参りましたので、その魅力をご紹介いたします。日本で最も有名な「苔寺」。梅雨の青々としたみずみずしい苔の姿だけでなく、夏の苔にはまた別の美しさがあります。

「衆妙門(しゅうみょうもん)」の受付では、夏の苔(日照りにじっと耐えている境内の苔)をしっかりとご覧いただき、どうぞ心で感じてくださいね!とのご説明。心静かに山門を潜った瞬間、静寂に包まれ、夏の真っ青な空の中を風で木々が揺れる音、小鳥の囀りや小川の水の流れなど、どんどん五感が研ぎ澄まされるような感覚になり、歩みを進めていくに従い、それぞれの情景で一期一会の出会いが待っていました。



まずは西芳寺の歴史的背景をご紹介します。

西芳寺は、「731年、行基菩薩が法相宗の寺として開山したのを起源に、鎌倉時代初期には法然上人が浄土宗に改宗満や義政をはじめ西芳寺で坐禅に励んだ者も多く、金閣や銀閣などの庭園の原型になったともいわれています。」

室町時代、応仁・文明の乱などの度重なる戦火、「江戸時代に入ってからも、西芳寺川の氾濫によって幾度とない洪水の被害を受け、さらに明治時代に入ってからは廃仏毀釈によって寺地が狭まるなど非常に厳しい時代が続きましたが、有名無名を問わず、数多の先人たちの尽力があったからこそ今日の姿があります。1928年、阪急電車嵐山線の開通と同時に庭園の一般公開を開始します。庭を覆う120余種の苔の美しさは、現在に至るまで「苔寺」として親しまれていますが、庭一面に苔むすまでには実に100年以上もの時間が経過しており、皮肉にも荒廃の歴史が苔の美しさを創り上げた、ともいえるのです。」
(引用: 一般社団法人西芳会. https://intosaihoji.com/saihoji/history/. 2023年8月28日)

本堂(西来堂)- 仏道修行の一つ「写経」



1969年落成の本堂(西来堂)には阿弥陀如来をお祀りし、合計104面からなる襖絵は、堂本印象により描かれた抽象画です。西来堂の名は中興の祖である夢窓国師によるもので、中国に禅をもたらした達磨が西(インド)から来る、という意味を込めた「祖師西来意」に由来します。我々参拝客は最初にこの本堂にて、延命十句観音経を写経し心を整えます。静かに正座をして雑念を払い、写経をすることだけに集中。気持ちを整えて心で感じるように。茶の湯の点前の感覚ととても似ています。海外の方々にも人気の苔寺にはインバウンド観光向けに英語の案内もあり、七割程が海外からのお客様でした。私たちが筆で経を書くというより、字を形で捉え絵を描くような感覚で静かに写経という日本文化体験にとても熱心に取り組んでらっしゃいました。

境内の庭園

上段の庭(通常非公開)は現存最古の枯山水式庭園。下段の庭は「心」の字を象る黄金池(おうごんち)を中心とした池泉回遊式庭園には生い茂るマンジュウゴケに生き生きとした生命の宿りを感じます。湘南亭(国指定重要文化財)を含む三つの茶室が園沿いに並びます。(上段の庭は通常非公開)茶の湯を嗜む者として寺院での茶室見学はとても嬉しい鑑賞ポイントです!



三つの茶室
「少庵堂(しょうあんどう)」



「侘び茶を大成した千利休の子、千少庵の木像を安置する、1920年に建てられた茶室。大正期に活躍した京都の数寄屋師、上坂浅次郎による普請です。」(引用: 一般社団法人西芳会. https://intosaihoji.com/saihoji/history/. 2023年8月28日)

「湘南亭(しょうなんてい)」



「桃山時代に千少庵により建立された茶室で、西芳寺境内で最も古く、国の重要文化財にも指定されています。豊臣秀吉より切腹を命じられた千利休や、明治維新で幕府から逃れる、岩倉具視の隠れ家ともなりました。北に張り出した月見台が特徴ですが、月見台といいながら北向きに造られているのは、東から南向きに空に浮かぶ月を観るのではなく、黄金池に映った月を愛でるためといわれています。」
(引用: 一般社団法人西芳会. https://intosaihoji.com/saihoji/history/. 2023年8月28日)

「潭北亭(たんほくてい)」

「庭園東側にある立礼式(椅子式)の茶室。夢窓国師の時代より存在していますが、現在のものは1928年に再建されたものです。壁には潭北亭の名前の由来となった禅語録『碧巌録』第18則の公案が書かれた陶板がはめられています。」
(引用: 一般社団法人西芳会. https://intosaihoji.com/saihoji/history/. 2023年8月28日)

西芳寺の五季 ~夏~

梅雨のみずみずしく青々とした美しい苔だけでなく、夏の日照りにじっと耐える苔。厳しい日照りが続くと苔はカラカラに乾き、ひび割れてしまう。実はこの姿は枯れているのではなく、活動を極力抑えながら次の雨を待っているそうです。出来る限り自然のままにしておくことで、異常気象や台風などのより過酷な状況に耐えられるしぶとさを身につけてくれるそう。夏の日照りもまた強く生きるために必要と言えます。夏の季節には生命力に満ち満ちた力強い苔が我々にたくましさが必要である!と教えてくれます。

西芳寺の広大な庭園には春夏秋冬に梅雨を加えた“五季折々”の尊い姿があります。一日として同じ姿はなく、四季折々に様々な姿や表情を見せてくれるそうです。見学は完全予約制。少数参拝制を実施していますので、日ごろの喧騒を忘れ、静寂の中で心ゆくまで癒される時を過ごしてみてください。学習に少し疲れた時や、学びに迷いが生じた時、次のステップへ進む合間にぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?きっと心と身体に潤いをもらえるはずです!



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