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2023年10月20日
【通信制大学院】企画会議の効用(文芸領域 クリティカル・ライティングゼミ)
「では、企画会議を始めます」
まず何はなくとも企画です、どんなネタやテーマだったら面白いものが書けそうか、自由に思いついたものを発表しましょう──という具合にゼミは始まる。
思いつきだから何でもかまいませんよ、あっと言わせる鉄板ネタも必要ありません。自分が面白そうと思っていれば十分です。自分の心が動くネタでなくては人の心なんて動かせないでしょう?
「病院食、なんてどうでしょうか」
学生の一人が提案する。自衛隊勤務の経験もあるお医者さんだ。
「病院食は一食にかけられる予算が全国一律で決まっているんです。それが食材の値上がりで大変な苦労をしていまして──」
そういえば、知り合いが入院したときの話なんですけど……会議は自然とみんなの病院食体験で盛り上がる。さまざまな反応が出るのはいい兆候だ。企画者が考えてもみなかった視点が出てきて、話がどんどん広がっていく。
「さて、その話、どんな読者に読んでもらいますか?」
企画者当人は、思いのほか話が大きくなったことにいささか当惑気味のようす。
「いや、その、食べやすさとか栄養価の話は、看護の学生さんに興味をもってもらえると思ったのですが……」たしかに身内であれば、苦労話も共感されやすいだろう。「でもせっかくですから、患者さんやその家族に読んでもらいたいですかね」
同じ話でも相手によって力点はおのずと変わる。読者を想定することで、話の構成や取材のポイントが決まる。病院食のどの一面を見せるか。予算の限界、献立を決めるしくみ、提供の工夫、病院食がおいしくないというのは本当か──。身内にはあたりまえの情報も、読者の想定を変えるとちがう光が当たって見えてくるものだ。
「これから入院するかもしれないぼくらだって読者ですよ。次回までにまとめてみてください
じつは面白い文章というのは内容(ネタ)のよしあしではない。光の当て方次第で、ありふれたものががぜん面白く見えてしまうことはよくある。どこを切り取れば、どこに焦点をしぼれば、そのテーマの知られざる一面を引き出せるのか。一文、一語、一エピソード。扱おうとするテーマのクリティカル・ポイントをぎゅっと摑むことさえできれば、文章を書くステージはひとつ確実にあがる。その摑み方、見せ方のコツやバリエーションを身につけるのがこのゼミの目標だ。
クリティカル・ライティングゼミでは、毎月、本を1冊紹介する課題が課される。選書のセンスもさることながら、コンパクトに要点やあらすじをまとめ、その本の一番面白いところ、クリティカル・ポイントを取り出し、言語化するトレーニングだ。最初はみな、自分の得意ジャンルから選んでくる。けれどそのジャンルに馴染みのない人に魅力を伝えるのは意外とむずかしいことに気づかされることになる。自分のサークル内だけでは見えなかった一般読者なるものが、ゼミの仲間として立ちはだかる瞬間だ。
いまや誰もが瞬時に世界中に向けて発信することができる。けれどそのメッセージは届けたいところにきちんと届いているだろうか。この大学院は、まだ見ぬ読者との出会い方を、仲間とともに体験し学ぶ場所だと思ってほしい。
田中尚史
【webマガジン瓜生通信】2023年4月新開設通信制大学院「文芸領域」編集制作ゼミ担当の田中尚史先生と野上千夏先生に文芸表現学科の生徒がインタビュー。
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2023年12月12日(火)19:00~20:30
文芸領域 入学説明会
担当:辻井 南青紀先生
↓説明会の参加申し込みは文芸領域ページ内「説明会情報」から!
▼京都芸術大学大学院(通信教育)webサイト 文芸領域ページ
文芸領域では入学後、以下いずれかのゼミに分かれて研究・制作を進めます。
小説、エッセイ、コラム、取材記事など、広義の文芸創作について、実践的に学びます。
企画、構成、取材、ライティングから編集レイアウトまで、有効な情報発信とメディアのつくり方を実践的に学びます。
まず何はなくとも企画です、どんなネタやテーマだったら面白いものが書けそうか、自由に思いついたものを発表しましょう──という具合にゼミは始まる。
思いつきだから何でもかまいませんよ、あっと言わせる鉄板ネタも必要ありません。自分が面白そうと思っていれば十分です。自分の心が動くネタでなくては人の心なんて動かせないでしょう?
「病院食、なんてどうでしょうか」
学生の一人が提案する。自衛隊勤務の経験もあるお医者さんだ。
「病院食は一食にかけられる予算が全国一律で決まっているんです。それが食材の値上がりで大変な苦労をしていまして──」
そういえば、知り合いが入院したときの話なんですけど……会議は自然とみんなの病院食体験で盛り上がる。さまざまな反応が出るのはいい兆候だ。企画者が考えてもみなかった視点が出てきて、話がどんどん広がっていく。
「さて、その話、どんな読者に読んでもらいますか?」
企画者当人は、思いのほか話が大きくなったことにいささか当惑気味のようす。
「いや、その、食べやすさとか栄養価の話は、看護の学生さんに興味をもってもらえると思ったのですが……」たしかに身内であれば、苦労話も共感されやすいだろう。「でもせっかくですから、患者さんやその家族に読んでもらいたいですかね」
同じ話でも相手によって力点はおのずと変わる。読者を想定することで、話の構成や取材のポイントが決まる。病院食のどの一面を見せるか。予算の限界、献立を決めるしくみ、提供の工夫、病院食がおいしくないというのは本当か──。身内にはあたりまえの情報も、読者の想定を変えるとちがう光が当たって見えてくるものだ。
「これから入院するかもしれないぼくらだって読者ですよ。次回までにまとめてみてください
じつは面白い文章というのは内容(ネタ)のよしあしではない。光の当て方次第で、ありふれたものががぜん面白く見えてしまうことはよくある。どこを切り取れば、どこに焦点をしぼれば、そのテーマの知られざる一面を引き出せるのか。一文、一語、一エピソード。扱おうとするテーマのクリティカル・ポイントをぎゅっと摑むことさえできれば、文章を書くステージはひとつ確実にあがる。その摑み方、見せ方のコツやバリエーションを身につけるのがこのゼミの目標だ。
クリティカル・ライティングゼミでは、毎月、本を1冊紹介する課題が課される。選書のセンスもさることながら、コンパクトに要点やあらすじをまとめ、その本の一番面白いところ、クリティカル・ポイントを取り出し、言語化するトレーニングだ。最初はみな、自分の得意ジャンルから選んでくる。けれどそのジャンルに馴染みのない人に魅力を伝えるのは意外とむずかしいことに気づかされることになる。自分のサークル内だけでは見えなかった一般読者なるものが、ゼミの仲間として立ちはだかる瞬間だ。
いまや誰もが瞬時に世界中に向けて発信することができる。けれどそのメッセージは届けたいところにきちんと届いているだろうか。この大学院は、まだ見ぬ読者との出会い方を、仲間とともに体験し学ぶ場所だと思ってほしい。
田中尚史
【webマガジン瓜生通信】2023年4月新開設通信制大学院「文芸領域」編集制作ゼミ担当の田中尚史先生と野上千夏先生に文芸表現学科の生徒がインタビュー。
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説明会情報
2023年12月12日(火)19:00~20:30
文芸領域 入学説明会
担当:辻井 南青紀先生
↓説明会の参加申し込みは文芸領域ページ内「説明会情報」から!
▼京都芸術大学大学院(通信教育)webサイト 文芸領域ページ
文芸領域では入学後、以下いずれかのゼミに分かれて研究・制作を進めます。
●小説創作ゼミ
小説、エッセイ、コラム、取材記事など、広義の文芸創作について、実践的に学びます。
●クリティカル・ライティングゼミ
企画、構成、取材、ライティングから編集レイアウトまで、有効な情報発信とメディアのつくり方を実践的に学びます。
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