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2023年11月28日
【書画コース】ありのままをみる
書画コースでは、書の基礎学習の一つに「臨書」があります。ここでは古典をもとに篆書、隷書、草書、行書、楷書といった様々な書体について、教科書や動画教材、オンライン授業等を通じて学びます。
書体によって到達目標は異なりますが、臨書課題に取り組むうえで共通して大切なことを一つご紹介したいと思います。担当は書画研究室の奥田です。
教科書『書 伝統と現代1』にて、「臨書とは先人の優れた筆跡を見てそれを写し書くこと」とし、臨書の態度として「手本となる古典を紙の傍に置き、その字形(結構)や筆の勢い(筆勢)を観て、これを学ぶこと」とあります。また教科書には「書を臨(み)ること」について、臨の文字性、臨書の意味するところや大切さ等も記されていますので、充実した学びが得られます。用具用材、姿勢、筆法などについても詳しく説明がありますので初学者の方や改めて学びたい方も安心です。
1.ありのままみる
私は業務の性質上、学生の皆さんが提出された臨書課題を一年間に数千点ほど拝見しています。そこで気づいたことがあります。
それは古典を「ありのままみる」ことは、実はとても難しいということです。これは初学者だけではありません。書歴数十年という方にとっても容易くない場合があります。そしてこの「ありのままみる」姿勢は、臨書課題に取り組むうえで大切なことだと私は感じています。
「そんなに難しいって言われたら入学する自信なくなります!」なんて声が聞こえてきそうですね。でも、安心して下さい。ありのままみるためのコツをご紹介します。しかもそれは誰にでもできることです。
まずは、こちらをご覧ください。左側は教科書『書 伝統と現代1』の≪祭姪文稿≫のお手本から「州」という字を抜粋しました。その特徴が引き立つように、右側には活字書体(明朝体)を並べました。左側、なんだか違和感を覚えませんか?私たちが初等教育で学ぶ「州」の造形とは少し異なります。たった一文字でも情報量が多すぎるため、ここでは「川」の部分に絞って観察して、この字形の特徴を探ってみます。右側にはこの「川」の輪郭を捉えた線を教科書から抜粋して並べました。
「川」の部分を観察してみると・・・・全体的にぽってりとした厚みのある線質
・書き始めの位置が不揃い、左右より中央は少し高い位置
・右線は三本線のなかで最も長く、真ん中部分は膨らみがある
・中央線は、左へ膨らむように反る
・左線は、下に向かうほど太くなる
などの特徴を見つけました。一つ目の「ぽってりとした厚みのある線」は、起筆(書き始め)・収筆(書き終わり)部分の形も影響しているでしょうね。
2.じっくりと観察する
ではもう一例。
次は、教科書にある≪蘭亭序(八柱第一本)≫のお手本から「春」という字を抜粋しました。この「春」の字形にはどのような特徴があるでしょうか。じっくりと観察して、私は1~3画目の横画にみられる「角度/幅/長さ」に注目してみました。・角度・・・三本とも筆の入る角度が異なる→A:どんな角度?
・幅・・・2・3画目より1・2画目の間隔が広い→B:どれくらい広い?
・長さ・・・三本とも横画の長さが異なる→C:線の傾き方は?
他にもたくさんありますね。左払いの長さや形に注目された方もいらっしゃるかもしれません。例えば、A B Cのようにさらに詳しく紐解くことで、より正確に造形を捉えられるようになると思います。
3.造形の美に気づくために
それではここでご紹介しましょう。
ありのままをみるコツ、それは“まず先入観を捨てること”です!
「え!それだけ?!」とガッカリさせてしまったならごめんなさい。しかし私たちは、過去に目にした字形を頼りにして無意識的に古典に補正をかけて見る、バランスを取って見ることをしてしまいがちです。その一点一画を、さらには全体像を、実はよく観察しないまま、臨書の学習を進めてしまうことが往々にしてあります。
ただひたすら、自身の経験(字形への先入観)を手放し、目の前の造形に向き合うこと。それはその造形の美しさに気づく、最大のチャンスなのではと私は考えます。その気づきは、字形や筆の動きに遺された先人の眼差しを捉え、自身の見方を作り上げる一歩にもなるのではないでしょうか。
「ありのままみる」ことで、どのような古典でもその姿を捉えやすくなります。それは一つの古典に共通する筆意や筆脈などまで汲み取る手掛かりになるはずです。もちろん、どのような背景があったのか、歴史や文化、素材を深く掘り下げること、書く枚数を重ねて線質を鍛えることも大切ですよ。このお話は、また追々。
書画コースの教科書やオンライン授業は書画を多角的に、そして体系的に学べますので「もう少し詳しく知りたいな」という場合は、過去の体験授業もぜひご覧ください!
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書体によって到達目標は異なりますが、臨書課題に取り組むうえで共通して大切なことを一つご紹介したいと思います。担当は書画研究室の奥田です。
教科書『書 伝統と現代1』にて、「臨書とは先人の優れた筆跡を見てそれを写し書くこと」とし、臨書の態度として「手本となる古典を紙の傍に置き、その字形(結構)や筆の勢い(筆勢)を観て、これを学ぶこと」とあります。また教科書には「書を臨(み)ること」について、臨の文字性、臨書の意味するところや大切さ等も記されていますので、充実した学びが得られます。用具用材、姿勢、筆法などについても詳しく説明がありますので初学者の方や改めて学びたい方も安心です。
1.ありのままみる
私は業務の性質上、学生の皆さんが提出された臨書課題を一年間に数千点ほど拝見しています。そこで気づいたことがあります。
それは古典を「ありのままみる」ことは、実はとても難しいということです。これは初学者だけではありません。書歴数十年という方にとっても容易くない場合があります。そしてこの「ありのままみる」姿勢は、臨書課題に取り組むうえで大切なことだと私は感じています。
「そんなに難しいって言われたら入学する自信なくなります!」なんて声が聞こえてきそうですね。でも、安心して下さい。ありのままみるためのコツをご紹介します。しかもそれは誰にでもできることです。
まずは、こちらをご覧ください。左側は教科書『書 伝統と現代1』の≪祭姪文稿≫のお手本から「州」という字を抜粋しました。その特徴が引き立つように、右側には活字書体(明朝体)を並べました。左側、なんだか違和感を覚えませんか?私たちが初等教育で学ぶ「州」の造形とは少し異なります。たった一文字でも情報量が多すぎるため、ここでは「川」の部分に絞って観察して、この字形の特徴を探ってみます。右側にはこの「川」の輪郭を捉えた線を教科書から抜粋して並べました。
「川」の部分を観察してみると・・・・全体的にぽってりとした厚みのある線質
・書き始めの位置が不揃い、左右より中央は少し高い位置
・右線は三本線のなかで最も長く、真ん中部分は膨らみがある
・中央線は、左へ膨らむように反る
・左線は、下に向かうほど太くなる
などの特徴を見つけました。一つ目の「ぽってりとした厚みのある線」は、起筆(書き始め)・収筆(書き終わり)部分の形も影響しているでしょうね。
2.じっくりと観察する
ではもう一例。
次は、教科書にある≪蘭亭序(八柱第一本)≫のお手本から「春」という字を抜粋しました。この「春」の字形にはどのような特徴があるでしょうか。じっくりと観察して、私は1~3画目の横画にみられる「角度/幅/長さ」に注目してみました。・角度・・・三本とも筆の入る角度が異なる→A:どんな角度?
・幅・・・2・3画目より1・2画目の間隔が広い→B:どれくらい広い?
・長さ・・・三本とも横画の長さが異なる→C:線の傾き方は?
他にもたくさんありますね。左払いの長さや形に注目された方もいらっしゃるかもしれません。例えば、A B Cのようにさらに詳しく紐解くことで、より正確に造形を捉えられるようになると思います。
3.造形の美に気づくために
それではここでご紹介しましょう。
ありのままをみるコツ、それは“まず先入観を捨てること”です!
「え!それだけ?!」とガッカリさせてしまったならごめんなさい。しかし私たちは、過去に目にした字形を頼りにして無意識的に古典に補正をかけて見る、バランスを取って見ることをしてしまいがちです。その一点一画を、さらには全体像を、実はよく観察しないまま、臨書の学習を進めてしまうことが往々にしてあります。
ただひたすら、自身の経験(字形への先入観)を手放し、目の前の造形に向き合うこと。それはその造形の美しさに気づく、最大のチャンスなのではと私は考えます。その気づきは、字形や筆の動きに遺された先人の眼差しを捉え、自身の見方を作り上げる一歩にもなるのではないでしょうか。
「ありのままみる」ことで、どのような古典でもその姿を捉えやすくなります。それは一つの古典に共通する筆意や筆脈などまで汲み取る手掛かりになるはずです。もちろん、どのような背景があったのか、歴史や文化、素材を深く掘り下げること、書く枚数を重ねて線質を鍛えることも大切ですよ。このお話は、また追々。
書画コースの教科書やオンライン授業は書画を多角的に、そして体系的に学べますので「もう少し詳しく知りたいな」という場合は、過去の体験授業もぜひご覧ください!
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